第12話 博士との攻防

…うぅん…むにゃ…


人質となったライオットはぐっすりと眠っている。

それはまるで自分の部屋で安心して眠るように。



ビシュッ!


れ、レーザービームだ!

さっきからうようよと壁からレーザー砲が飛び出してオレを狙ってくる。

これは昔稼働していたらしい遺跡の防衛システムを真似たものだろうか?

その威力は一撃でも当たれば丸焦げになるレベル!


だが…当たらなければどうって事はない!


したっ!したたっ!


オレは軽快なフットワークでその光の銃弾を華麗に避けていく。

野生の勘を研ぎ澄ませば意識しなくてもそのくらいは避けながら進んでいける。

猫の野生の本能舐めんな!


何故だか不思議と今日のオレの勘は冴えていた。

誘導されていたのかも知れないが的確に上部階への道を進んで行く。

このペースならあの部屋に戻るのもまず時間の問題だった。


…ドガァッ!


破壊音が最上階の部屋まで届く。


「な、何っ!」


その音で眠っていたライオットが目を覚ます。

彼は今自分が置かれた状況をすぐには把握出来ないでいた。


「博士…?ここは…?」


「起きたかね…今から君に素晴らしいショーをお見せしようと思ってね…」


この状況になっても博士は冷静そのものだった。

このまま何もかも博士の計算通りに事が進むのだろうか?

その博士の態度にライオットは思わずオレに心の声で警告を送っていた。


…ネコさん!みんな罠だよ!


…そんなのは織り込み済みだ!待ってろ!今行く!


ウィィィン…


ライオットが捕らえられている最上階の部屋の自動ドアが開く。

さあ、二度目の対面だ…次は姑息な罠に引っかからないようにしないと…。


「ほう…意外に早かったね…計算より20分の短縮だ…お陰で良いデータが取れたよ」


博士は薄ら笑いを浮かべながらオレにそう言い放った。

こいつ、今までの全てはみんなただの実験だったって言うのかよ…。


「何を警戒しているんだい…今度は落とし穴はなしにしてあげるよ…かかってくるがいい」


「そんな安い挑発には乗れねーな」


博士とオレの間に緊張感が走る。

ここは何か意表をつく手に出ない事には乗り切れないだろう。

タイミングを見計らってオレは行動に出た。


シャーッ!


オレはいきなり博士に飛びかかった!

その動きを察知して博士は思わず自分の身をかばう動作をする。


「ムッ!」


…だが、これはブラフだ!

オレは飛び上がった瞬間に鉤爪を天井の照明にからませて一気にライオットがいるベッドまで飛び移った。

その行動に博士も意表を突かれていた。


「ネコさん!」


「よしよし、いい子だ…待ってな、すぐ助ける」


その様子を見て一本取られた博士は右手を広げながら叫ぶ。


「フハハハ!やるじゃないか!それでは第二部…開始だ!」


カチッ!


博士が右手に持っていたスイッチを押した瞬間に博士とライオットの姿が消えた。

くそっ!どこまでもオレを馬鹿にしやがって!


ゴゴゴゴゴゴ!


二人が消えた途端突然部屋に響き渡る轟音…今度は天井が落ちて来る!


「…この期に及んでまたこんな古典的な罠を…」


ズズ…ウン!


静かな夜に古城の最上階の吊り天井が完全に落ちた音が響いた。

その音は古城から遠く離れた市街地にも届くほどだった。


「これで終わったかな?」


古城の屋上にテレポートした博士はそうつぶやいた。


ギュッ…


博士は抱きかかえていたライオットを下ろしてポケットに入っていた指の部分のない皮の手袋をする。

それから天空に広がる暗い星空を見上げる。

いつもはそれなりに美しい星空が見られる郊外のこの場所も今宵は雲が多く星はあまり見られない。


「…だが、少しは待ってみるか」


含みを持たせる言い方をする博士。

その時、月はちょうど雲に隠れていた。


…ネコさん!ネコさん!


ライオットは心でアルファスに呼びかけている。

本当に天井に押し潰されていたらこの物語はここで終わりになってしまう。

こんなバッドエンドはちょっとないだろう。

まだ何も解決していないって言うのに。

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