第6話 玩具にされるオレ
子供達のなでなで攻撃にメロメロになるオレ…(汗)。
やっぱりオレも知性は人間でも身体はネコなんだにゃあ…。
ゴロゴロゴロゴロ…
うう…思わず猫の習性で喉を鳴らしてしまった…な、何たる屈辱っ!
くそっ!この子供達の中に猫あしらいのとびきりうまい奴がいやがる…!
何とけしからん!これじゃ抵抗出来にゃいじゃにゃいかぁ…。
ふにゃあああー!
「ヘレンって家でネコ飼ってるから扱い上手いよね!」
「えへへ…ネコを手懐けるのなんて簡単よ!ウチのマークスの方がよっぽどやんちゃだわ!」
(お…おのれマークス…)
くっ!いつもはクールに決めているのに!
オレは子供達にされるがままになってすっかり骨抜きにされてしまった。
こ、こんなはずじゃなかったのにゃふーん。
と、取り敢えずオレは状況を整理する為、この子供達から情報を聞き出す事にした。
「それはそうとまず自己紹介させてくれにゃふぅん…オレの名前はアルファス…ゴロゴロゴロ…」
「アルファスって言うんだ!かっこいいね!私はヘレン!」
や、ヘレンはさっきの会話で聞いたニャフフフ…くすぐったぁい…。
「僕はライオット!」
「私はキャシー!」
「僕は…」
OKOK! 順番に喋ってくれよベイビー…。
その後の彼らの会話を総合すると…
8人の子供達は年齢の高い順からヘレン、キャシー、トニー、ライオット、レイジ、ダロン、シャーロット、ルイ。
その内のヘレン、キャシー、シャーロット、ルイが女子で残りが男子だ。
みんなこの場所で初めて出会ったようだがもうすでに仲良しなのだそうだ。
うんうん、仲がいいのはいい事だよ。
しかしこの自己紹介の後はみんなのナデナデ攻撃にあってそれ以上の情報は聞き出せなかった。
ここでこんなに時間を食っていたら悪党どもがまた戻って来る…長居は出来ないぞ…。
オレはナデナデの気持ちよさに後ろ髪を引かれながら触ってくる子供達の手を払いのける。
バシッ!
「…ハァハァ…遊ぶのもいけどまずは脱出しよう!」
ったく…いつまでオレを玩具にするつもりだってーの。
「えー」
「もうちょっと!」
「もう一声!」
…こいつら…。
とにかく誰かが動かないと話にならないのでまずはオレが一番に走り出していく。
その後を追って8人がぞろぞろと後を追ってくる。
頼むぞ…誰一人として迷わないでくれよ…。オレは話しながら振り返り人数を確認していた。
この地下室はまだ罠もないし道は単純だし誰かが迷う事もないだろう。
問題はやっぱり1階だな…。あのトラップの数々、どうなっているだろう?
オレが侵入したルートが生きていたなら全部のトラップは潰したからいいけど、所々もう通れなくなっているかも知れない。
1階に出たら慎重にならないとな…。
1階に戻ってオレが感じたのはそのあまりの静けさだった。
悪党の手下は追っ払ったがその時に鍵をなくしたのは間違いなく上に報告が上がっているはず。
考えてみれば地下1階もあのまま何もなかったのが逆に不自然だ。
オレが今後の事を考えていると…。
「やったー!」
「誰が一番に脱出出来るか競争ー!」
「ウェーイ!」
「やっと家に帰れるー!」
はぁ…子供達が我先にと駆け出して行った。
「ちょ、待てよ!」
興奮状態の子供達にオレの声が届く訳もなかった…。
オレは仕方なく子供達の後を追い掛ける形になった。
幸いトラップは殆ど潰されたままで子供達がその罠に恐怖を覚える事はなかった。
風猫走りでオレはすぐに子供達の先頭に追いついて誘導するように走って行く…。
「いいか!ちゃんとついて来るんだ!」
「はーい!」
子供達は声を揃えて元気に返事をした。
これが遊びなら脇道にそれる子供も出てくるんだろうけど今はみんな目的が一緒。
誰かが見失わない限りははぐれる事もないだろう。
オレはこの時この集団の年齢と性別がバラバラだと言う事をすっかり忘れていた。
つまりついて来るスピードはバラバラなんだ…。
それに気付いたのは何とかこの古城を脱出した後だった。
「やったー!」
子供達救出作戦が成功して一段落ついた時だった。
「あれ?」
脱出した子供の中の一人、ヘレンが声を上げる。
「ん?」
振り向いたオレもその違和感にすぐに気付いた。
人数が…足りない。
脱出に夢中になってしまって脱落者が出た事に気付けなかった。
何てこった…オレとした事が…。
取り敢えず点呼を取るとまずは脱出出来たのが年長組の5人。
残り3人はまだ古城の中だと言う事が分かった。
古城の1階はかなり入り組んでいる…もしどこかで道を見失ったら迷っている可能性は非常に高い。
5人は早速泣きそうになっていた。
「みんなは先に家に帰っていてくれ!残りの3人もオレが何とかするから!」
オレはそう言ってまた古城の中に入っていった。
その時、悪い予感がオレの胸の内で踊っていた。
「クックック、やはり戻って来たか…」
その様子を何処かで見ていた男が不気味な笑みを浮かべる。
そう、やはりこれは仕組まれた罠だった。
子供達を誘拐した張本人がオレを試していたんだ。
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