第5話 開放された子供達

ふぁ~あ…。


何かあった時のために体力を温存しておこう。

人間化はしたけどオレはやっぱり猫なんだ…睡眠不足は禁物だ。

出来れば15時間は眠っていたいぜ…。


むにゃむにゃ…


すぴー


…あれからどれくらい経っただろう。

まだ悪党がここに戻って来る気配がない。

待っていても暇なだけなんで子供達と話をしてみる事にした。


「そこには何人いるんだ?」


「…」


返事がない…ただの屍…じゃない、みんな眠ってしまったか?

地下室は外の光が入らないから時間の感覚が狂ってしまいがちだ…。

正確な時間は分からなくても眠い時は眠った方が無難だな…。


「あの…全部で8人です…」


おお…起きている子供がいた。

しかし8人も。ちょっと大掛かりな話だな。


「みんな誘拐されたのか?」


「違います!騙されたんです!」


騙された?そうか…誘拐じゃないから騒ぎになっていなかったのか。

ま、子供が戻らなかったらいずれ大きな騒ぎにはなるんだろうけど…。

オレは子供達にもう少し具体的な話を聞く事にした。


「それは一体どう言う…?」


オレはその時話に夢中になって背後の影に気付かなかった。

好奇心は猫を殺すって本当だなぁ。


ドガッ!


オレが話に夢中になっているといきなりの蹴りが入って来た!

こっちは話に夢中で無防備だったのに!全く何て無礼な奴だ!


だが安心して欲しい。すんでのところでひらりとかわしたからね。

これでも幾つもの修羅場をくぐってきたんだ…不意打ちくらいでビビったりはしない。


「…何だぁ…?猫か?どうやって入った?」


いきなり攻撃したこいつは…どうにも知性は感じられない。

そこから判断するにこいつは悪党の手下か何かだろう。

それならばオレでも十分対処出来る気がした。

必殺の猫流格闘技をお見せする時が来たな…。


うにゃぁ~!


ネコパンチ!ネコキック!ネコアッパー!


「わわっ!こいつ!こいつめっ!」


オレはドサクサに紛れてこいつからこの扉の鍵らしき鍵を奪ってやった。

良し!ミッションコンプリート!一旦離脱っ!

オレは鍵を奪うと一目散に逃げ出した。

オレは平和主義なんでね。無駄な争いは一切しないのさ。


したたたたたたたーっ!


「待て!待てぇー!」


…。


馬鹿な追いかけっこは30分ほど続いたかな。

オレは上手い事逃げ切ってヤツを諦めさせた。

あの様子じゃあ鍵を奪われたのにも気付いてないだろう…。

巻いたのを確認してすぐに子供達が囚われている扉の前へ…。


カチャリ。


鍵を手に入れたので早速子供達を開放する。

頑丈そうな重いドアは…しかし簡単に開ける事が出来た。


「みんな!大丈夫か!」


ひぃ…ふぅ…みぃ…。

その薄暗い部屋の中に確かに8人の子供達がいた。

年齢も性別もバラバラで共通点は見た目からじゃ分からなかった。


「…ね、ネコ?」


え…あ、うん、まぁ当然の反応だよね(汗)。


「ネコがシャベッタァァァーッ!!」


「ちょ、声が大きい!」


捉えられていたとは言えやっぱり子供だ…俺を姿を見てすぐに騒ぎになる。

実際大人達でさえ受け入れてもらうのに時間がかかったからな…ある意味仕方ないけど。


「シーッ!黙って!助けてくれたんだよ…って、まだ言い切れないけど…」


「?」


どしたのかとオレは思ったがその疑問はすぐ解消された。

子供達の頭に変な帽子のようなものが被せられている。


「何だそれ?」


「何って?…ああ、頭のこれ?」


子供達の話によるとそれは最初に連れて来られた時に被せられたものらしい。

これを被った途端、悪党の言葉に逆らえなくなったと…。

だから悪党の許しでもない限り自力ではこの部屋を出る事も出来ない。


(なるほど、強力な暗示装置とでも呼ぶべきシロモノか…)


オレはその装置?をじっくり見ていた。

もしこれが遺跡の出土品から作られたものならまだ手がある。

オレは隠した爪を出してタイミングを見計らった。


「ちょっとじっとしてろよ…」


「?」


オレは子供達の中の一人に目をつけて飛びかかった。

その子供は少しびっくりして身をすくめたがそれ以上の動きはなかったので好都合だった。


「わっ!」


シャッ!


ぱっかーん!


カラーン!


「オレのこの爪は特殊アイテムで遺跡由来の物質を破壊出来るのさ」


このオレの特技に子供達は大喜び。

すぐに残りの子供達の帽子も破壊してやった。


ぱかぱかぱかぱかぱかぱっかーん!



「すごすごーい!」


「やった!」


「ありがとう!」


束縛から開放された子供達からの溢れんばかりの賞賛の声にオレは鼻が高くなった。

もっと!もっと言っていんだぜ?

子供達の喜びの声はしばらくこの拘束されていた部屋に響き渡った。


「ねぇ、この鈴可愛いね」


「もしかしてこれが心の声を聴くアイテム?」


「触らせて!触らせて!」


子供達に喜ばれていい気になっていたらいつの間にかオレ自身が子供達の玩具になっていた。

…ん?あれ?何だこれ?

ちょ、ちょい待て!オレはお前らの玩具じゃはにゃあああーーん!

だ、駄目だ…喉をくすぐられると…力が…力が抜ける…。

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