第4話 古城に捕らえられた子供達

まず、城の入口に人影はいない…ここはスルーでいいだろう。

しかし城の内部データが何もないのは痛いな…。

本来なら建物への侵入って言うのはしっかり下調べしてからってのが常識だ。

けれど今は非常事態…捕らえられている子供の命がいつまで無事か…多分時は一刻を争うはず…。

オレが辿り着くまでどうかみんな無事でいてくれよ…。


城に仕掛けられているトラップって言うのは大抵パターンがある。

天井照明などの落下、天井自体が落ちてくる落とし天井、落とし穴、壁から武器が出てくるからくり壁…。

この古城はそんなオーソドックスなトラップ標準搭載だった。

そこを猫お得意の機動力と俊敏さで楽々とクリアして行く。

このくらいはオレにかかれば朝飯前だった。


助けを求めているのはこの城の地下1階か…。

オレはついに目的の場所まであと一歩のところまで近付いていた。

ここまでは順調過ぎるほど順調だった。


しかしその地下1階の部屋に入る扉は鍵で固く閉ざされていた。

このくらいオレの手にかかればチョチョイのチョイ…。

…あれ?おかしいな?あれ?あれあれ?

今まで悪党の家の財産をちょろまかしてきたこのオレの自慢の解錠テクニックを持ってしてもその扉は開かなかった。

こいつは相当只者じゃないぞ…。


そのせいで残念な事にオレの人質救出作戦もここで一旦終了って事になってしまった。

この扉の鍵を持っている者がいるとするなら子供達を捕らえた首謀者以外にいない。

オレは影に潜んでその悪党が扉を開くのを待つ事にした。

扉が開いたら普通の猫の振りをしてするっと入り込もう。

なぁに、そのくらいの修羅場なら今まで何度もくぐって来た。


そうしてまだ姿の見えない悪党との根比べが始まった。


コト…。


小さな物音が聞こえた。

猫の耳って言うのは人間の何倍も感度がいい。

その音は間違いなく扉の向こうから聞こえてきたものだった。

間違いない!悪党は今この扉の向こう側にいる!


オレは意識を研ぎ澄ませて次の行動に移る体制を整えた。

悪党の一瞬の隙がチャンスになる。オレは息を潜めそのチャンスを伺った。


ガチャ…。


扉が開いた!今だッ!風猫走りッ!


したたたたたたたーっ!

するりっ!


ふぅ…悪党が扉を開けた瞬間を狙って一気に駆け抜けてやったぜ!

悪党の顔を確認しても良かったけど今はそんな事はどうでも良かった。

オレはそのまま地下一階の部屋の廊下を抜けて声の元へ向かう。


地下一階には何故かトラップはひとつもなかった。

その代わり実験室のようなものがかなりの数作られていた…。

この地下室は最近作られたもの?それとも改築された?

400年以上前に作られたにしては部屋の中の機器が最新の物である事にオレは違和感を覚えていた。

やはりここは何か胡散臭い。

とにかくオレは子供達が捕らえられているであろう場所を目指した。



あああーっ!


オレのバカ!アホ!

こんな分かりきった事に気付かないとか!

子供達が捕らえられたその部屋には…御丁寧に地下へと続く扉と同様に強固な鍵がかけられていた。

考えたら当たり前の事なのにそこにぶつかるまで気付かないとか…。

そして当然のようにこの扉の鍵は…自分のテクニックで開けられるシロモノじゃなかった。


とほほ…またさっきみたいに待つ作戦しかないか。

この扉の向こうに子供達がいる…それは100%間違いないのにな…。


ただ、城のトラップが発動した事であの悪党がこの部屋の子供たちをすぐに確認しに来るかも!

そうなればそんなに待たずにこの問題は解決するかも知れない…オレはそうなる事を願っていた。


しかしこれは一体どう言う事なんだ…。

古城の地下一階がまるで最新の研究所のようだ。

この古城はそれなりに有名だけどこんな改修をされたなんて話は聞いた事がない。

そもそも幽霊古城として最近じゃ近付く者も殆どいなかったはず…。


うーん、この闇はちょっと深いぜ…。

後で知り合いの警部にそれとなく情報をリークしてやらんとな…。


さて、悪党がここに戻ってくるまでに中の子供達に協力を頼もう。

今のままじゃこのドアを開けずに中の様子を確認しただけで終わってしまう確率が高い。

悪党が思わずこのドアを開けて中を確認するように仕向けないと…。


「子供達!聞こえるか!」


オレは中の子供達に聞こえるように大声で話しかけた。


「!?」


子供達もすぐオレの声に気付いたみたいだ。


「君達を助けに来たんだが少し協力して欲しい!」


「…」


直ぐに返事は返って来ない…そりゃ当然か。まずは信用されないとな。


「オレはトレジャーハンターのアルファス、心の声を聞けるアイテムで君達の声を聞いてここまで来た!」


「…もしそうだとして…」


お、声が返って来た。


「…僕らは何をしたらいいですか?」


「簡単だ…悪党がここに戻ってきた時に一芝居打ってくれ…部屋に誰かが入って来たって!」


「それだけでいいんですか!」


「ああ!それだけでいい!」


交渉成立!後は悪党がオレの読み道理の行動をする事を祈るしかない。

そうしてオレはしばらく退屈な時間を過ごさなければならなくなった。

まぁ待ちくたびれて眠ってしまってもこの猫耳は微かな音も聞き漏らさないから問題ないんだけどね。

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