第3話 助けを呼ぶ声
チチチ…チチチ…
朝が来た。
昨夜はあんまり熟睡出来なかったな。
オレは早速今日のトレジャーニュースを広げる。
これは最新の遺跡情報が記された新聞だ。
情報を制するものが時代を制するってね。
…読んでみたけど遺跡関係で言えば今日は特にめぼしい情報はないな。
発掘隊も今回はお目当てのお宝を発掘出来ないでいるらしい。
目的がただのお宝ならどこででもそれなりの物が見つかるだろうけど何か目的を持って探すと案外そう言うのは見つからなかったりするもんなんだよな。
まるで人生の皮肉だぜ。
別のニュースを読むと今ベルファクトって悪党が世間を騒がせているらしい。
窃盗を繰り返したり、怪しげな商品を売りさばいたり、連続誘拐事件にも関わっている噂まで…。
ほほう…これはちょっと興味深いな。
ただこのベルファクト、中々尻尾を掴まさないらしい…。
もしオレの近辺に現れたら徹底的に調べて尻尾を掴んでやろう。
こう言う悪こそオレの制裁の対象なんだ。
ふと見ると壁にかけた時計が朝の9時を回っていた。
おおっと、もうこんな時間か。そろそろ出かけないとな。
今日は猫の耳から少し離れた"犬の鼻"エリアを探ってみよう。
ここはこれまでに結構発掘されてめぼしいものはないけど、こう言う所に限って取りこぼされた美味しいお宝が眠っていたりする。
まず第一にまだオレはここに潜った事がない。
きっといい掘り出し物がどこかに眠っているはずさ。
こう言うのは勘でしかないけどこう言う勘には結構自信があるんだ。
オレは慎重に遺跡の奥深くへと潜って行く。
更に猫の体の特性を活かして人が入れない隙間へと入って行く。
ほら、こう言う行動が出来るからオレは人間より有利なんだ。
しかしおかしいな…かなり深い所まで来たはずなのに自慢の鼻が反応しない。
もしかしてやっぱりもうこのエリアのお宝は発掘され尽くした?
まさか…このオレの自慢の勘が外れるなんて…。
…助けて
…誰か
何だ?
オレの頭に声が直接声が聞こえてくる…。
そう、これは昨日見つけた鈴の力だ。
今この鈴はオレの首輪に装着されている。
鈴としての力はないみたいで振っても音はしない。
けれどこの鈴は強い心の声を聞く事が出来るんだ。
鈴が拾った声は助けを求める声だった。
しかもこれは子供の声だ。
こんな遺跡の奥深くに子供だと…?
オレは慎重に感覚を研ぎ澄ましてその声の発信元を探っていった。
それは何か事件の匂いがギュンギュンしていた。
抜き足、差し足、忍び足…。
鬼さんおいで、手の鳴る方へ…はちょっと違うか…。
さっきから響く声は段々と大きくなっている。
どうやらこの声の大元は遺跡の本体とは別の場所から聞こえて来ているっぽい。
気が付くとオレは遺跡の外れの古城へとやって来ていた。
この古城はまだ遺跡都市が再発見されて間もない頃、当時のトレジャーハンターがお宝を売って成り上がりその金で一代で建てた城だった。
だから正確には遺跡ではないが遺跡で出土した石などで作られていて遺跡アイテムも十分反応する。
そう言う意味では十分"遺跡"だった。
それに城の当主は一代で滅んでその後約400年も放置されている…建築年代こそ古代ではないがその点でも遺跡には違いない。
この古城にはお宝盗難を恐れた当主によってかなりの数の罠が仕掛けられていてまともな人間は近付かないって話になっていたんだけどな…。
それが逆に悪党にはいい目眩ましになっているのかも知れない。
数多くのトラップをクリア出来るような猛者ならばここはいい隠れ家になる。
そんな厄介なシロモノにオレは今から挑戦する訳だが…ポキリポキリ…腕が鳴るぜ。
助けを呼ぶ声はこの古城から聞こえてくる…間違いない。
数々の遺跡発掘で鳴らしたオレの腕を魅せつけてやる!
古城は今も当時の当主を守るように部外者を寄せ付けないオーラで満ちていた。
ま、そんなんでビビるオレじゃないがね…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます