第2章 サラ(2)



 部屋に戻り、ベッドに座った自分の髪を念入りに乾かそうとするリリスを見上げ、サラは小さく口を開いた。

「あの男の人を殺そうとしたの?」

 核心を突いた問いのつもりだった。リリスはさぞ驚くだろうと思っていたのだが。

「どうかしらね」

 口の端を小さく緩めながら、リリスはそう言う限りであった。

 手玉に取られている気分だ。

 思わず口ごもる。犬のようにごしごしと髪を拭かれながら、サラは形にならない想いを抱えていた。

「はい、もういいわ。じゃあお薬飲みましょうね。お水持っておいで」

「うん」

 リリスが宿の主人からもらってきた水差しは机の上にあった。億劫そうに立ち上がり、向かう。水差しからコップに水をそそぐ。

 透明だ。純度がいい。ずいぶん高かっただろう。

 リリスは荷物からひとつの小瓶を取り出していた。

 密閉された瓶の中には真っ白な錠剤が入っている。リリスは眉間にしわを寄せながらその数を数えていた。「十七粒、か……」と彼女は不満げに言う。

「まだ大丈夫だよ、リリ。ちょっとダルいくらいだから」

 コップを手にそう言うと、リリスはさらに眉を寄せた。

「だめよ、放っておいたら熱病が全身に回るわ。前にも意地を張って薬を飲まず、寝込んだことがあったでしょう。たったの一晩で取り返しがつかなくなるのよ。あっという間に手足が動かなくなって、二度と元には戻らないかもしれないんだからね。ほら、飲みなさい」

「……」

 有無を言わせぬ勢いであった。

 手のひらに薬を乗せられて、サラはごくりと飲み込んだ。

 食道から胃へと水で押し流す。コップを両手に持ちながら、ふう、と息をついた。

 全身へと薬が染み渡ってゆくのを感じる。そこまでの即効性があるわけではないので、気のせいではあるのだが。

 まだ体には熱が宿っていた。平気だと言い張っていたけれど、気が付かない間にずいぶんと体力を消耗していたようだ。

 旅の疲れが一気に噴出したのだろうか。リリスの体にもたれかかる。

 リリスはサラの手からコップを受け取ると机の上に置いて、そのまま金髪の少女の頭を膝にのせ、優しく髪を梳く。

 サラはリリスの柔らかさを頬に感じながら、ぼんやりと宿の壁を見つめていた。

 言葉は自然について出た。

「リリは……どうしてわたしのために、そこまでするの?」

 それがなにを指す言葉であるのかは、自分でもわからなかった。

 男を殺そうとしたことか、あるいは体を気遣ってくれていることか、それともこうして旅を続けてくれていることか。そのすべてかもしれない。

 曖昧な思いを、しかしリリスは受け取ってくれたようだ。

「あなたはあたしの娘だからよ。母親が娘を守る。そこに理由なんている?」

「……でも」

 よくわからない。サラには娘がいないし、自分が母になった姿なんて想像ができないから。

 どうして彼女が自分のために尽くしてくれるのか。その理由を知りたかった。

 納得できない顔をしていたのが、わかったのだろう。

 リリスはサラの頬をさすった。

「あなたは、あたしの大好きだった友達に、すごく似ているのよ」

「……そうなの?」

 初めて聞く話だ。

 サラは思わず起き上がった。

「どんな人?」

「いつもあたしを守ってくれた、素敵な人」

 リリスは微笑んでいた。

 その裏に隠された寂しさには気づかず、さらにサラは尋ねる。

「わたしと似ている。の?」

「そうね。もちろんそれだけが理由じゃないわ。でも、あなたを見ていると思い出すのよ。昔のあたしはとっても弱虫で、いつも守ってもらっていたばっかりだったから。今度はあたしがあなたを守ろうって、心からそう思えるの」

「……」

 どうだろう。もしサラがリリスに似た少女が苦しんでいたら、守ってあげたいと思うだろうか。

 その子はなんの力もなく、弱虫な娘だ。けれどサラは、その子にリリスの面影を見て、なんとかしてあげたいと考えるだろうか。

 思うかもしれない。考えるかもしれない。

 本当のところはわからないけれど、でもきっと幸せになってほしいと願うだろう。

 サラはリリスを見つめながら、小さく首を傾げ、問う。

「……その子は、どうなっちゃったの?」

「もういないわ」

 リリスはなんてこともない風に言った。

 でもその微笑みを見て、悪いことを聞いてしまったな、とサラは思ってしまった。

 しかしリリスはサラの髪を撫でる。

「いいのよ、今はあなたがいるから。あなただけが大切なの」

「……ママ」

 そのとき、コンコンとドアがノックされた。

 リリスはびくりとして顔をあげる。

「サラ、薬を隠して」

「う、うん」

 サラが瓶を慌てて鞄にしまう。それを見届けたのち、リリスはドアを開いた。

 そこにいたのは宿の店主だった。王の住まいがある場所の地図を持ってきてくれたようだ。

「といっても、少しいけばすぐにわかるだろうけれど」

「ううん、ありがとうございます」

 リリスは麗しく一礼をした。その様子をサラはシーツに包まったまま眺めていた。

 たまに、ぞっとするほどにリリスが美しく見えるときがある。

 銀髪を耳にかける動作や、その立ち振る舞い。刀を佩いた姿に見惚れてしまわずにはいられないのだ。

 他の誰と比べても、リリス以上に美しいものなどはない。サラはときどきそう思う。

 この魔物が溢れた世界で生きる人々は皆、自分のためだけに生きている。冒険者も村人もそれらを総べる王も。

 現に今も、宿の店主がしつこくリリスとサラを誘っていた。一緒に食事でもどうだい、と。彼が宿を経営していて、これほどに美しい娘が泊まりに来ることなどなかったのだろう。だからといって、こちらの事情などはお構いなしだ。

 狭い塀の中では、誰もが自分勝手で自己中心的だ。

 だが、リリスは違う。リリスはサラにすべてを捧げてくれている。だから、あんなにも美しく光って見えるのかもしれない。サラはそう思った。

 だからこのときも、他のなにものも目に入らなくなってしまって。

「大人しくしていて」

「え?」

 見上げたそこには、リリスのきらめくような瞳があった。

 頬を撫でられる。

 そして、唇に感触。

 五感が支配されたようだった。匂いも音も景色もすべて、リリスに塗り潰された。

 あまりの突然のことに、ぼうっとしてしまった。

 リリスがゆっくりと離れてゆく。

 すると、その向こうに宿の店主が唖然としている顔が見える。

「ごめんなさいね。こういうだから、ゆっくりさせてくれると助かるわ」

「あ、ああ、邪魔して悪かったな。出かけるんだったら『法』にはくれぐれも気をつけてくれ」

 そう言い残して、店主は去っていった。ガチャリとしまるドア。

 サラはなにも言わず、ただ唇を撫でていた。

 リリスがうつむきながら、自らの髪をくしゃりと握る。

「ごめんね」

「……ううん。大丈夫だよ、いつものことだもん」

 サラはその口づけに慣れていた。

 互いが旅をする間『恋人』という関係を用いるようになってから、幾度となく繰り返したことだ。

 でも別に、ドキドキするようなことではないとサラは思う。

 なんてことはない、ただの肉体の接触に過ぎないのだから。

 むしろ、恥ずかしそうにしているのは、リリスのほうだ。

 サラの唇を布で拭い、彼女は慌ただしく視線をさまよわせていた。

「リリ、どうかしたの?」

「う、ううん」

 リリスは慌ててサラから離れ、はにかみながら両手を振った。

「な、なんでもないわ。ごめんね、本当に。別にそういうんじゃないの。なにがそういうのかはちょっとわからないけど、でも、嫌だったら嫌だって言ってね」

「うん」

 サラはちらりと鞄を見て、熱っぽい顔をするリリスに問う。

「ママも、お薬飲む?」

「大丈夫よ」

 リリスの顔は真っ赤だった。



 薬が効くまで一時間ほど宿で休み、それからふたりは部屋を出た。

 貴重品の類はそう多くない。リリスの刀と、サラの薬ぐらいのものだ。どちらもリリスが持っているので、心配はいらない。

 舗装が剥げた砂利道をゆく。地図通りに歩けば、十分たらずで到着するだろう。

「あまり大きい島ではないわね」

「ねえ、リリ。さっきあの人が『法には気をつけてくれ』って言っていたよね」

「そうね、なんなのかしらね」

 ふたりは深くフードをかぶっていた。人目を忍ぶ意味もあるし、崩れた家屋などの瓦礫から立ち込める粉塵が風に吹かれ、洗ったばかりの髪につくのが嫌だったからだ。

 魔物は島にずいぶんと侵入してきたらしい。城壁から点々と破壊された建物が散らばっている。

 外を歩いているのは、武装した男たちだらけだ。取り逃した魔物がいないかどうかを探しているのだろう。

 ふと、広場で奇妙な光景を見た。

 そこでは丸太に一匹の魔物の死体が貼りつけられていた。それを大人たちが槍で突いている。いや、そこには子供は女たちもいた。皆、一心不乱だ。

「……なんだろう」

「ただの敵討ちや憂さ晴らしって風には見えないわね」

 激しい感情が見えないのだ。義務で淡々と、やるべきことを行なっているかのような雰囲気があった。

「早くいきましょう」

「……あ、うん」

 リリスに手を引かれ、サラは歩き出す。

 槍で突き終えた人から、なにか食料の配給を受け取っているようだ。彼らを監督している男が叫ぶ声がした。

 ここでは魔物を倒した者こそがもっとも偉い。魔物を倒してみせろ。そうすれば莫大な名声と富が手に入るであろう。人間の真価を見せつけてやるのだ!

 男が列に並びに来た女の手首を摑み、抱き寄せた。この女が自分のものであると高らかに宣言する。どうやら彼は魔物を打ち取った騎士のようだ。

 女は激しく嫌がっていたが、周りの皆もそれを助けにいこうとはしない。というよりも、誰も逆らえないのであろう。あの男のが言ったことが本当ならば、この島での位は力によって決まるのだろうから。

 サラはリリスを見上げた。

「助けないわよ」

 リリスは振り返りもせずにそう言う。

 手を引かれたまま、サラはリリスの横に並ぶ。

「この島は、魔物を倒した人が偉いんだって」

「魔法使いでもない人間には、なかなか難しい話ね」

 素質によってのみ魔法使いは目覚める。だがそれは全体の三十分の一にも満たない人数だ。魔法使いに目覚めた者はしかるべき役所や院に申請すれば、荒事と引き換えにそれなりの暮らしを保証される。ほとんどは国や島を守る騎士職に就くことになる。

 冒険者として旅に出るのは、ごくわずかだ。そのごくわずかな人員で冒険者ギルド局の仕事の中核は担われている。

 サラはリリスの手を握りながら、言った。

「だったら、一番偉いのはリリだね」

 リリスは首を振った。

「あたしは少しも偉くなんてないわ。いくら魔物を倒したところでね」

 そっけなく言うリリスを眺め、サラは小首を傾げた。

 そういえば、自分たちは今、なぜこの島の王の元に向かっているのだろう。

 ああそうだ。薬が残り少ないから、その手がかりを求めて王に尋ねにいこうとしているのだ。

 リリスはああ言っていたけれど――誰よりも強い彼女なら、この島ではきっと旅をするよりも楽に過ごせるだろうな、とサラは思っていた。



 王が住むのは王塔だ。

 わかりやすいほどに象徴的な建物が、国の中心にはあった。

 その塔は光沢のある奇妙な石材で作られたものだ。窓の数で見やるに七階建て。ひとつひとつの階層もかなりの広さを誇るようで、千人以上が暮らすことすらできそうだ。

「すごいわねえ」

「首が痛くなっちゃうよ」

 素直に感嘆のため息をつくリリスに対し、サラはそっけない。

 だいたい、こんなところで住人たちを見下ろしながら暮らす王が良い性格をしているはずがない。サラの偏見による決めつけである。

 塔の入口には揃いの衣装を着た衛兵がふたり、立ち並んでいた。ここを守っているということは、恐らくどちらも魔法使いだろう。長い槍を手にしていて、魔手抜刀剣は身に着けていないようだ。あれはあれで、ただ振るうためだけにもかなりの訓練が必要なのだ。

「何者だ!」

「旅の者よ。この国の王様が戦力を募集していると聞いて、やってきたわ」

「む……。航海者か。少し待っていろ、確認を取ってくる」

 サラがリリスの袖を引く。

「航海者ってなに?」

「あたしたちのことを指しているのなら、たぶん冒険者のことじゃないかな。この国の王様は、船乗りだったのかもしれないわね」

「ふうん?」

 わかるようなわからないような感じだ。

 つまりは国全体でごっこ遊びをしているということだろうか。

「子供っぽい。へんなの」

「それ思っていても中では口に出しちゃだめよ、サラ」

 苦笑とともにたしなめられて、サラは口を尖らせる。

 衛兵はすぐに戻ってきた。王が直々に会ってくれるらしい。暇なのだろうかと思ったが、今度は口には出さなかった。


 石造りの床を階段で上り三階へ。

 整然とした外観に比べ、内部は物々しい有様だった。あちらこちらにけが人がいて、男たちの怒鳴り声が響いている。戦場さながらの雰囲気であった。魔物に襲われたから、その後処理に忙しいのだろう。

 衛兵に招かれ、母娘は王の元へと案内された。

 左右に衛兵が三人ずつ。王のいた部屋はものがないため広く見えるが、実際は自分たちが泊まっていた宿の二部屋ほどの大きさだ。

 旧態依然とした王冠を被った王が出てきたら噴き出してしまうかもしれないとサラは思ったが、幸いそうではなかった。

 ひときわ大きな椅子――まさか玉座だろうか――に座った彼は、亜麻色の髪を後ろで束ね、浅黒い肌をした偉丈夫であった。

 壮観で立派だ。威厳もある。人を惹きつける魅力があるのだろう。

 だが、嫌な感じがする。

 彼は戦う男だとサラは直感した。女を支配する男の臭いだ。

「よく来たな、航海者よ」

 猛々しく言い放つその様は圧力的であり、サラにとっては旅の最中でたまに耳にした「だいきらい」な系統の声だった。

 リリスはどうだろう。彼女は如才なくひざまずいて、王を見上げている。

「初めまして、王。あたしたちは隣の国からやって参りました。戦う力を探しているとのこと。ならばお力になれると思いまして」

「ほう、そなたたちは魔物と戦うことを恐れぬ女か。腰に下げたその刀は魔手抜刀剣。女だてらに魔法使いとは、面白い」

 王は銀髪の少女が語る言葉に興味をもったようだ。

 ただでさえ絶世の美少女がふたり。それが魔物と戦うなどと言い出すのだ。見世物にしても気を引かれるのは間違いないだろう。

 佩刀したままのリリスを見て、王は片眉を吊り上げた。

「いいだろう、娘。この国の法を聞いておるか?」

「いえ、恐れながら存じておりません」

「ならば教えてやろう」

 茶番のようだとサラは思った。

 それに付き合うリリスも間抜けに見えるのでやめてほしい。

 両手を広げる王。

「この国では力だ。力がすべてなのだ。魔物をより一匹でも多く撃退し、そして倒すことができた者こそが国の王にふさわしい!」

 王は握り拳を掲げながら立ち上がった。

「人間は生存競争に敗北し、このような扱いを受けているが、それは断じて違う! 正しい姿を取り戻さなければならぬ! 我ら機工兵団がそれを可能とするだろう! ここから一転攻勢が始まろうとしているのだ!」

 怒鳴る声によって自らを鼓舞しているかのように、王は檄を飛ばす。

「魔物を倒した者には金、名誉、要職、住処に奴隷、なんだって授けよう! ここ、『討伐の島』のルールは『魔物に対抗する力をもった者』がより高い位を得るのだ! お前たち航海者にとっては楽園のような場所だろう!」

 ぼんやりと立つサラは、再びリリスを見た。

 母の顔に変化はない。

 彼女が望むならば、この国で王になるのもたやすいことなのではないだろうか、と思う。

 一対一で魔物に立ち向かうことができる人間がこの世界にどれほどいることか。サラが旅をしている限り、よほどの達人でも正面から魔物を殺すことなどは不可能だ。

 だが『機工兵団』という聞きなれない言葉に関しては、わずかに引っかかった。

 リリスが慇懃に口を開く。

「いいえ、王。戦線に参加し、手柄を立てた暁には、望みがございます」

「ほう、いったいなんだ、申してみよ」

 リリスは顔を上げ、その鋭い視線で王を突き刺した。

「『伝染病の薬』を頂戴したく思います」

「……なんだと」

 王の顔色が変わった。はた目にもわかりやすいほどに。

 伝染病の薬と言えば、指すものはただひとつ。かつてこの世界の大半を覆い、人を屍に、動物を魔物に変えた病――滅病ペカトゥムの治療薬である。

 この薬は初期症状であればほぼ快復する。よほど手遅れでない限り、その効果は抜群である。

 間違いなく人類の破滅を救った薬だ。その練成方法は秘匿されており――そして、秘匿されたままその方法は失われた。

 ――すなわち、この薬は現存する限りしか残っていないのだ。

 確かに伝染病の脅威は去った。去ったが、しかしいつまた魔物がばらまくとも限らない。旅人が再び伝染病を持ち込むかもしれない。その日は明日かもしれないし、今かもしれない。

 それを欲する旅人を、王は苦々しい目で見つめる。価値を知る者にとっては同じ重さの宝石よりも希少な薬だ。

 今でも薬を大事に抱えているものは少なからずいる。

 渋るということは、王もそのひとりであったのだろう。

「それは……ここにあるとは限らん。他のものにせよ」

 にべもなく言う王に、リリスはなにか核心を抱いたようだ。

 リリスは恭しく頭を下げる。

「なるほど、わかりました。ならば褒美はそのときにでも」

 最後まで微笑ひとつ浮かべずに、リリスは立ち上がった。

 サラもそのあとに続く。

 短い邂逅が終わり、ふたりが部屋を立ち去ろうとしたその時――。

「この島を襲った魔物の中に一匹、とてつもなく巨大なものが混じっておる」

 王がつぶやいた。

「それを我らは『ベリアル』と呼んでいる。ずっと昔からこの辺りに君臨する魔物の王だ。やつを打ち倒すことが我らの悲願。その頭目を倒すことができたならば、考えよう」

 リリスが半身となって振り返る。

 王はわずかに口元を緩めていた。邪悪な笑みだ。

 サラは人の悪意に聡い。

 甘言に騙されるなとリリスに散々叱られながら、学んでいったのだ。

 王はできるはずがないと確信していながら、希望を餌に冒険者を死地へと追いやろうとしている。それもこんなに若い冒険者をだ。これが悪意ではなくてなんだというのだ。

 腹の中に黒くどろっとしたものが淀んでゆく。そんなサラの手を、リリスが引いた。我に返ったのは手の温かさよりも、リリスの顔を見たからだ。

 リリスは氷のように冷たく笑っていた。

「ならば仰せのままに」


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次回:3月21日 AM11:00 更新

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