5:決戦! MΘNΘCERΘS 終盤戦その2
―――チカチカチカ。グォグォグォ。
映像空間の中。
少年の顔は見えないが、眼を閉じてはいない事が解る。
すんでの所で上体を屈め、ボクサーのようなダッキングを披露したからだ。
受講している特別講座の女性講師、笹木
「おまえら、何、―――」
振り返りながら、飛び退く。目の前に浮く、分解されたパーツを反射的にひっつかむ。振り返った視線の中央では、コウベが、パーツを手放した手に、ナックルガードを装填している。
コウベとワルコフの
現れる、雷製の
さながら、陽光を写す水面にも見える。
急激に電荷が高まり、青い
ドォォォォォォォン!
ジジジジッ、パリッ。
放電が無数に流れる、虎縞の入った藍色の毛皮が、宙に浮いている。
ついさっきまで、少年サイボーグの後頭部が有った空間座標。
そこを、
回し気味にピンと伸びた、まさに
鋭角な
後頭部に浮き出ていた、
「ザザッ―――笹木みてえ! 脚癖悪ぃー!」
率直な感想を漏らす、少年サイボーグ。
なんだとう、と激高する海賊が、隣に座る、魔女っ娘の膝を、ゴツゴツと膝蹴りしている。
そう、
―――
ただし、
謎の
ワルコフの最大兵装:電磁槍は、投げたまま回収できていないため使えない。
それに、槍の奥義は、すでに使ってしまったのだ、もはや最大戦力にはほど遠いだろう。展開すると十メートルもの長さになる、謎の電磁槍の内部構造は、
ゴゴン! バリバリ!
チィーーーーー、ピピ♪
閃光一閃。コウベの放った、パンチ式ブービートラップ。
爆炎は拳が乗せたスピードのまま、先へ伸びていく。小型ボス最高峰は、その爆炎に包まれる。
さらにワルコフの雷撃も爆炎の上に、スパークを重ねた。
雷撃系最大容量を誇る、生体
ヒュルルルーッ、パンッ!
現在71。『418666 DAMEGE! 71HIT COMBO!』。
『MΘNΘCERΘS__/LV52』
『HP_5981334/6400000』
ビビロ♪
HPゲージの緑色を、結構な割合で削り始めている。
現在、数値上は7%削ったことになり、わずか、0.2%のコンボ累計が真価を発揮している。
あと
「ザザッ―――ゴアァァァーーーッ!」
ボゥワッ!
それでも、
「……
やや縦に長い”特選おやつ”のパッケージから、突き出た瓶の口。
足を組んで、シャンパンボトルのコルク栓を、スポンと発射した。
「どうしました、皆さん?」
普段と変わらない姿の、
小さい玩具みたいな軽いグラスを、2個差し出す、
「ささ、どうぞ先生、まずは駆けつけ一杯」
「
「そうだぜ、そんなカッコで、
現在、土曜につき、特別講座『VRエンジン
「今日って、
単純に言うと、そう言うことになる。
目の前の広場に群がっている、有象無象のプレイヤー共は、一人残らず、学内、もしくは、学術ネット経由で接続している。学術ネット経由の接続先も、物理的に別のVR特化型の、教育機関や類する施設内部に限られているはずだ。コレは、
「ええ、私は、外部の人間ですから、ちゃあんと
そう言った
その表示面を指で
その映像空間は、今、並んで、座席に座ってる生徒たちの姿、第珊VR教室の
「わ、こんなんなってんだぜ?」
ずいっと、映像に張り付く
カメラを操作し、教室内部を見渡す
長身の男子生徒、小柄な女子生徒、中柄でボサ髪の男子生徒、他にもチラホラと、生徒が座席に着いている。
教卓の横、天井から吊り下がる、戦艦の艦橋に有りそうな、カッコイイ座席。座ってる、やたらとスタイルの良い女性も、かっこよかった。
映像空間に掴みかかる魔女っ娘を、その逞しい力こぶで、どつく海賊。
隣の映像空間に頭から突っ込む魔女っ風。そっちの映像空間の中では、サイボーグ少年が、美少女と、宇宙服の間を、お手玉のように放り投げられていた。
「あっれっ?
「コンボは続いてるみたぁい」
サイボーグ少年は、宇宙服に、抱えられながらも、投擲を続けている。
ヒュルルルルルルルルッ、バッガン! グゥギャオオオウ!
現在78。『1500158 DAMEGE! 78HIT COMBO!』。
『MΘNΘCERΘS__/LV52』
『HP_4899842/6400000』
一撃の重みが、すでに宇宙戦艦による砲撃クラスだ。
単純なダメージ加算分だけで見れば、一発の攻撃力が、既に、
ウオォォォォォォォォォォォォッ!
見た目のインパクトは、
観客は総立ち。どういう状況になっても、あと、数分と経たずに決着は付く。
今盛り上がらないで、どうするのか。ウォーッ!
一角獣の、HPバーの下のMPバーは、穴の開いた水筒だった。
それでも、ツノから生えた雷撃鞭を、自分の周囲に漂わせ、防御を固めている。
一度でも、
一触即発? 違う、この”どっちに転ぶか解らない”状況は何と言えばいいのか。
危機一髪。起死回生。一進一退。実力伯仲。乾坤一擲?
「あ、これ、……あんたはん……どすか? あてぇと同じ……初期ボディーそのまま
奇妙な人物は、真っ赤な樽のごとき円筒型の椅子に座り、カメラに向かって手を振った。
VR空間内部でも、同じ姿で、同じく屋根の裏側へ向かって手を振っている、
「器用ねー」
映像空間の中の小柄な女子生徒の手が、わずかに持ち上がり、パタリと元に戻った。
「申し遅れました、私、
片手で失礼、と
「か、管理者!?」
声が
コレはどうも、……あてぇ、いえ、……私は、名刺切らして……無いのか、と
映像空間内の、座席の一つが、ジジジジッと、なにかプリントアウトしている。
謎の
そして、お互いに、貰ったばかりの名刺に、
『シラタキ《白焚》
「……フリガナ、でかっ!」
『
「変な名前っ!」
「へ、変なのは、……お互い様やん!」
「あら? 失礼しました。ところで、あなた、これ、VR設計師ってなってますけど、きちんと登録はお済みですか?」
ギシッ。
「ちゃんと、……ライセンス持って……ますえ?」
それが何か? という挑戦的な
ギシギシッ。
「それなら、良いんですケド、アナタ、初期ボディーをそのまま、NPC外装にされたんですか……自分の身体にとぉっても、
映像空間の中のコウベと、手の中の名刺を見比べている、
ギシギシギシッ。
「そちらはんも、……初期ボディーそのまま……
「私のは、
ギシギシギシギシギシッ!
「あのぉう、今日は初対面ですしー、仲良くしませんかぁ?
冷や汗を
声はいつもの、
「……そうどすな、……何をムキになって……しもたんやろ……堪忍してや」
「……そうですね、私も、なんか、意地悪でしたね。ごめんなさい」
官民の隔たりは、どこにでも有るものなのだろう。
場に生じた
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