5:決戦! MΘNΘCERΘS 終盤戦その1
”LV0”というか、”撃破数”、いや、”戦闘回数0”と行った方が正確かもしれない、3人パーティー。
1:先鋭的なフォルムの割に、やる気が見られない印象。つまり、外見がサイボーグ的な意味で、ポンコツ。実害としては、射撃装備積載量が売りなのに、
2:スタイル抜群の超美少女だが、乱暴者というかすべての
3:謎の宇宙服。好戦的な割に、切っ先に切れがない。典型的なパワーファイターかつ、お調子者。初期フロアでの最長稼働記録を所持。スターバラッド内部への進入も、お手のもの。端的に言えば、管理者権限を
彼らは、今日、この世界に初めて降り立った。謎の宇宙服も、レギュレーションを守って、正規……比較的ちゃんとしたルートで
対するは、LV52のボスクラスモンスター。
どういうわけか、小型ボス最高峰から、
このレベル差を、物ともせず立ち向かうだけで、もはや快挙と言って良い。
「あっ、赤くなったぁー!」
テーブル席に座る一同が、指さす先を見る。
モノケロスのやたらと長いHPゲージ。
その先端。
ほんの
本日、これが初戦闘という彼ら。ひたすら倍率僅か、+0.2の
”
現在63。『97368 DAMEGE! 63HIT COMBO!』。
『MΘNΘCERΘS__/LV52』
『HP_6302632/6400000』
「やっとぉ、倍率の効果がぁ出てぇ来まぁし―――」
「どうしたの? 姉さん?」
「どうかし……はりましたか?」
「どうしたんだぜ?」
さっきまで、観客一同と一緒になって、嬌声をあげていた猫耳が、顎に、拳を当てて黙り込んだ。
「んーっ? ……なんで、
極太の恵方巻きのようなサイズの、
「そりゃあ、アレだぜ。最初の攻撃が当たって、その衝撃で受けた、”体の硬直”が解ける前に、次の攻撃が当たってるからだぜ」
早くも完食した
「まあ、連続攻撃の基本よね、パクッ」
手羽先を両手で持ち、はぐはぐと
”特選おやつ”の良いところは、開封と同時に、僅かながら、暖まるか冷えるかする事と、手づかみで食べても、手が汚れない事だ。
「それはぁそうなんだけどぉ、
味が気に入ったのか、
「んっ? そういや、高速化とか瞬間移動とかされたら、コンボ切れちまうんじゃねーのか?」
袋から、串カツの一本を取り出しながら、疑問を口にする魔女っ風。
「<必中>スキルの恩恵で、……コンボ自体は切れやしませんけど、……
ずっと、手の上でもて遊んでいた、”特選おやつ”を開けて中を見ている、悪夢の処刑
「あ、言ってる側から、一角の野郎が、なんか、ぐるぐる回りだしたぜ? モギュモギュ!」
袋の底のタレを、大量につけ、満足げに串カツに
ちなみに開封するまでは、分子構造が静止しているので、タレまみれになったりはしない。
「目の前の、
海賊マガリは、手羽先を完食し、骨をパッケージ袋に詰め、平手でテーブルにパシンと
チャリーン♪
『キャッシュバック:30
※2016年6月18日現在―――
つまり、詳細は省くが、制作者サイドからの、”手羽先の骨”の
”手羽先の骨”は、
不意に映像空間を揺らしながら、大きな物がテーブルに叩きつけられた。
「ななんだぜっ!? 一角獣が飛び出て来やがったかっ!?」
飛び跳ね、真後へ尻から落ちる
同じポーズで
「っよう! あの、あんちゃん達に、これ差し入れしてくれっかい?」
テーブルの上に投げ出されたものは、
形状や、パッケージデザインからすると、特選おやつに間違いないが、その
「なんだぜ? このデッカい”特選おやつ”、始めて見た」
テーブルに足をかけ、腹筋だけで着席する、魔女っ娘。
「ほんとデカいわね」
起き上がり、テーブルに置かれた一抱えはあるソレを、指で
「パーティー用のぉ、数人分セットが圧縮されてるぅ、超高級”特選おやつ・パーティー用”じゃないですかぁ!」
あてぇは、聞いたことなら有りますえ、中身の調理済みの分子配列が、食事中ずっと、最適化され続けるから、味が美味しくて長持ちして、触感も本物そっくりで、ものすごく美味しいって話。本当かよっ! 生徒たちは、”特選おやつ・パーティー用”に興味津々だ。
ふいーっと、”片目に眼帯をした着ぐるみのウサギちゃん”が、出てもいない
あらぁ、こんなお高いもの~? 気にしねえでくだせえ、あっしは、あのあんちゃん達の男気に惚れたんで―――そうですかあ、じゃあ、確かにお預かりしますぅー!
その声は、普段の子ども声じゃなくて、舌っ足らずでカワイらしい、キャラに設定された音声ライブラリで発せられている。
ガッガッ!
突然、映像空間の中の一角獣が、四つ足を延ばし、踏ん張りだした。
「おおっといけねえヤ! 戦局が動きましたでヤんすね。じゃっアッシも、観戦に戻りマすんで」
あんちゃんらによろしくーと戻っていく丸い尻尾がカワイイ、任侠ウサちゃん。
猫耳
「……
袋の底を巻き上げて、インゴット状の”
一角獣は、踏ん張ったまま、何かに気づいたらしく、ついと鼻先を持ち上げた。
そして、視覚化された”自身の命”。湾曲した緑色の
視線を
イライラを体現し、放電する
ピタリ。やがて動き止め、首を傾げる獣。
首を軸とした、視線の反対側。その、空中に残る軌跡の末尾がちょっと
一直線に空間を切り裂いていた、大気中に溢れ出ている、青い傍流が一点に荷電していく。
モノケロスの視線の先には、やたらと長いHPゲージ。
その先端。
ほんの
「ザザッ―――グゥルルルッ」
獣の内面が、牙の隙間から溢れ出す。
「ザッ―――ゴアァァァッ!」
自分が傷つけられて居ることを、目の当たりにした、獣が、
スターバラッドの世界では、たとえそれが、
バッシャァァァン!
地面に焦げた曲線を描いて、落ちた大スパーク。この場合の
モノケロスとの距離は、約30メートル。この開けた地面の約
ピッシャン! ピッシャアァァァン!
ドッガァァァァァンッ!
雷鳴に混じって、爆発音。
鞭の先から、黒い球のような放電を投げ始める。
攻撃レンジによって、技の形態が変化する必殺技なのだろう。
その黒い人魂のような雷球は今まさに、
「ザッ―――
少年は投げる。が、小さい棒は真上へすっ飛んでしまった。
「ザザッ―――いけねっ! すっぽ抜けた!?」
「いいえー、<必中>スキル、発動してるなら、必ず当たるはずですよ」
ザンッ。脚だか腕だかを駆使して、休憩所の屋根からぶら下がる、
うおらぁー! いけー! やったれぇー! がむばってぇー!
周囲の喧噪にかき消され、映像空間の中までは、謎の人物の声は届かない。タイトスカートがめくれるのも構わずに、平べったい形の明るい色の自動機械に胡座をかく
「おまえは!」「あなた!」「あらぁ!」「どちらさん……どすか?」
謎の声に振り向く全員。
映像空間の中では、戦いが熾烈に変化していく。
ポポポポポポポポ。
「わっ! 危ねえ!」
慌てる少年サイボーグの背後、左後方のマーカー付近から、小さい放電が発生する。
「君たち! 左後方から来ますよ!」
タンジェリンオレンジのカーディガンの小さいポケットから、縦に長めの”特選おやつ”を取り出す。
謎の人物の声、この距離なら映像空間向こうの、少年にもちゃんと届いたようだ。
「え? 背後? だれ!?」
超小型銃を雷撃鞭の出所に向けて
コウベのいる方へ、空になった銃を投げ―――
銃を左手で受け取り、右手には装填された、火薬搭載型のブービートラップみたいな。
なぜか、宇宙服も、構えた左手に電流を
ナックルガードから発せられる、何かの作動音。
赤いランプと、見慣れてきた小さな放電。
チカチカチカ。ココン。グオオングオオングオグォ。
少年の顔面をとらえようと、突き出され―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます