3:キャラメイカー戦その2
『ROUND1』
真っ白いワンピース。裾に花柄のレースがあしらわれている。
ぽきゅぽきゅぽきゅる。
裸足の歩く音がかわいらしさを引き立てる。
だが、その両手には、物騒な得物。
間違いなく、
各種の、チャットウインドウ上で使用される、
VR設計師としては、動く名刺と言っても良いのだろう。作りがとても凝っている。
その4頭身の、切り裂き魔は、長い栗色の髪をなびかせ、戦闘の間合いへ、足を踏み入れる。そして、両手に構えた、
その投擲スタイルは、NPCコウベと同じモノだった。
丸い板のようなモノを、座布団代わりに
その目の前に浮かぶ奥行きのある映像空間の中を、
「えっと、……@VERSUS_HELP」
**VERSUS_COMMAND_LIST**
@FーーFORWARD
@BーーBACK
@JーーJUMP
@AーーATTACK
@GーーGUARD
@DーーDODGE
@TーーTHROW
@CーーCATCH
@EーーEQUIP
@?ーー???
そばに浮かぶ
その眼前、5センチの空中に停止するマチェット。
どうやら、交互に文字チャットへ入力することで、対戦を行うシステムらしい。
『@C』タンッ♪
映像空間の中の
映像空間の隅にある、やや立体的にカーブしている、グリーンのライフゲージがわずかに赤くなった。
掴めはしたが、怪我をした。ミニゲームだが、素手では当然と言えなくもない。
「ザッ―――
『@C』タンッ♪
マチェット2本目。
最初に飛んできたマチェットを手放し、2本目を受け取る。
宙に浮かぶ映像空間の床に、放り出される1本目。
その2センチほどの長さのマチェットが、映像空間をすり抜けるように落下した。
刃渡り、30センチのジャングルナイフが、
遠巻きに見ていた、顔長猫達は、怯えるように後ずさる。
「ザッ―――その猫ちゃん達のーおかげさんでー……その場所が、
「ザッ―――何だぜ? その
「ザッ―――プレイヤーキャラのぉ、姿形を変えることができるぅ、キャラ設定ルームなんかがぁ、密集してるエリアですよぉー」
猫耳が補足する。
「ザッ―――その猫ちゃん達は、遙か地中どすが、……”設計区画の特性”を色濃く反映してはりますー。……キャラ設計を書き換える……、”
長台詞に、息も絶え絶えな処刑人の言葉を、メカ猫耳が引き継いだ。
「ザッ―――そこが、”設計区画”ならぁ、キャラパーツをー、ヒト揃え出来さえすればぁ、スターバラッドのぉ、キャラクタシステムが自動的にー、
「ザッ―――投げたアイテムは、……きちんと受け取れとる……ようどすね」
「はい、なんか怪我はしますけど……」
「ザッ―――え? 怪我っ!? あらほんとゲージ赤くなってはる! どういうことでっしゃろうー? ……くすくすくす……ねー先生ー?」
「ザッ―――……本体にはゲージすらないのに……ぷーっ……本当、余すところなくおもしろい……じゃなくってぇ……ひとまず対処療法でやってみましょお」
カクつく規定サイズの方の映像空間の中で、猫耳美少女がゴソゴソ。すぐに、高輝度な『@T』の文字が、チャットの再下段に入力される。
ブルーの十字が描かれた、軽そうな箱が飛んできた。
『@C』タンッ♪
「軽い箱でも、HP削られるみたいす」
「ザザッ―――そしたら、それ、”
小首を傾げる
対戦画面を背後から見おろす
ぽへん。柔らかいモノが、床で跳ねるような音を立てて、救急キットが4頭身の、
「ザッ―――あらっ!? 格好良いじゃない! あはは!」
「ザッ―――ホントだぜ! アファファファファファッ!」
「ザッ―――笑いすぎだ、
ザザッそれもそうだぜ。ザッそうね、こっからはちゃんと応援するわ。
なんか結託して、ゴソゴソし出す、魔女っ娘と海賊マッチョ。
だが、その救急キットの輪郭には、点線が描かれていて、キット自体も、ゆっくりと明滅している状態だ。
映像空間の中の、悪夢の処刑人とメカ猫耳が、真剣に談義。
「ザッ―――これは、どういうこと……でっしゃろ先生?」
「ザッ―――たぶんー、戦闘中のぉ
「この、ジャングルナイフも、なんか、点滅してますよ?」
「ザッ―――チャット対戦にはぁ利用できるけどー、負けたら消えちゃうしー、手に持ててもぉ、実際にはぁ使用できないって感じぃー?」
頬を指先で突き、小首を傾げる、メカ猫耳搭載のヒューマノイド。うん、絵になる。細身の巨漢と比べたら、誰でも絵になるが、そう言うことでは無く、所作がとても
「ザッ―――
細身の巨漢がゴソる。
「ザッ―――キャラクターパーツの……図鑑を投げますんで、……どう言うのがお好みなのか……選んでみてください」
いきなり、すっ飛んできたソレは宙に浮かんで停止した。
『@C』
両手で受け取る、
「あ、こりゃ、どうすりゃいいんだ?」
しっかりと掴んだ、分厚い図鑑を、大事そうに抱え出す、
受け取ってしまうと、ゲーム空間の中のキャラが、手に持ってしまうため、彼本体が受け取る事が出来ない。
「ザッ―――そんなら、俺、ちょうど要らねえ武器が―――」
「ザッ―――あたしも、ちょうど使わない
「いま、ゴミって言っただろ!」
立て続けに小さいモノを投げつけてくる、4頭身の
『@C @C』あわてて入力する。
ドサリと落ちる結構かさばるサイズの分厚い図鑑。
そして、
手にした鉄の塊には、小さな
その
「ザッ―――あっ、先生もそれ、結構貯まっちゃってたのよねー。あげるぅー」
「ザッ―――あてぇも、……ダブリが、仰山ありますえ」
『@C @C @C @C』
ドサドサドサドサ!
地面に転がり山を作る、
色味や形状の細かな違いはあれど、同じポケットタイプの単発銃。
表面に光る
「ザッ―――もう1個有ったぁ」
だめ押しにメカ猫耳が、対戦空間の上へ、投げ落とした。さっきまでのと同じ小さな鉄塊だ。4頭身コウベは、頭の上から落ちてきたソレを、自動的に掴む。
メカ猫耳の細い指先が、映像空間の中に見えてる、
「これ、いらない、クズ武器じゃん! 俺だって要らねえよ!」
『@D』
”避ける”を入力する
4頭身の
ヒラリと、
「避けると、消えちゃうのか」
「ザッ―――こっちの
なんか、ゲームじゃない方の映像空間の中で、突き返されてる。よっぽど、要らないっぽい。
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