3:キャラメイカー戦その1
「ザザッ―――
誰も居なくなった、薄暗いジャングル中継へ向かって、
数匹の顔長猫が、真っ白い尻尾を揺らして、ジャングル中継の中へ現れ、瞬間的に消えた。通信距離を演出する為の、
パーティーメンバー間の映像空間機能には、音声チャットは付いてないので、自前で用意した音声チャットか、簡易フリック入力による、文字チャットを開く事になる。
金融のプロたちは、今でも、スターバラッドに常駐し、
「ザッ―――あれ? 急に猫ちゃんたちが、離れていきましたよ? オレ、飽きられた?」
「ザザッ―――なによ、
「ザッ―――そうだぜ。まあ、なんか、可愛らしい感じはするけどな」
「ザッ―――いや、なんか、この
「「ザッ―――芸達者?」」
つい興味を示す、部員2名。
カメラの追従が、コマ落ち処理に追いつく。
景色が数メートルずれたところに切り替わり、
手元の画面の背景に映る、キラキラした、宇宙都市の背景に、驚いたのかもしれない。
何を思ったのか、彼はニヤリ。口の端をなめ、平手を構えた。
「ザッ―――なによ?」
「ザッ―――何だぜ?」
「「ザッ―――プークスクス」」
海賊と魔女っ娘と猫耳と骸骨が、揃って、映像空間に張り付く。
ザッ―――たんたんたんたん。
音声以外も、勝手に拾われて、小さく聞こえてくる。
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
「ザッ―――は?」
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
「ザッ―――おい?」
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
「「ザッ―――プークスクス?」」
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
ズザムッ。顔の長い猫の一番大きな個体が、立ち上がる。
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
ズザッズザッズザッズザッズザッズザッズザッズザッ。
手拍子にあわせて、次々と後ろ足だけで、立ち上がっていく、
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
スタッスタッスタッスタッ。スタッスタッスタッスタッ。
始めに大きな個体が、右足を斜め前へ。
ゆっくり目のリズムに、奇跡的に噛み合う、コマ落ち。
次に左足を斜め前へクロス。ひょろ長い猫は。足もスラリとしてて、とても様になっている。
右足を引っ込め、左足を横に
びくりと大きく肩をふるわせる、猫耳と骸骨の成人女性コンビ。
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
スタッスタッスタッスタッ。スタッスタッスタッスタッ。
一斉に動く。一糸乱れぬ統率力。
「「ザッ―――ぷぐわっ!」」
成人女性コンビ、陥落!
腰から折れ曲がり、きっちりと崩れ落ちた。
「ザッ―――1、2、3、4、5、6、7、8」
スタッスタッスタッスタッ。スタッスタッスタッスタッ。
「ザッ―――おい、止めろ」
にやけ顔で、魔法少女が命令する。
スタッスタッスタッスタッ。スタッスタッスタッスタッ。
「ザッ―――ちょっ、くだらないわよ! ぶっ! 止めなさいよ!」
怒りにやけ顔で、海賊も命令する。
スタッスタッスタッスタッ。スタッスタッスタッスタッ。
「「ザッ―――ぶっぶっぶっぶぶっ、ぶふっぶふっぶふっぶふふっ!」」
『拳聖:にゃんばるくいな』『鍛冶士:トイバルカン』の文字が頭の上で明滅している……呼吸もままならないようだ。
「ザッ―――ハイハイハイハイ、ハイハイハイハァイ♪」
何を思ったか、
ズザッズザッズザッズザッ。ズザッズザッズザッズザッ。
スタッスタッスタッスタッ。スタッスタッスタッスタッ。
軽薄な
ズッバッバッバッ。ズッバッバッバッ。
両手を広げて後ずさる。
ズッバッバッバッ。ズッバッバッバッ。
号令も無いのに一瞬で伝播する手振り。一糸乱れず、両手を突きだす
余計なことに、開きっぱなしの、『
ゲームクライアントの初回起動時に流れる主観ムービー。そのときに流れる、壮大な
デーン♪ デデーン♪ デデデロー♪
スタッスタッスタッスタッ。ズザッズザッズザッズザッ。
デーン♪ デデーン♪ デデデロデロデロデロー♪
ズッバッバッバッ。ズッバッバッバッ。
すでに立つモノは居ない。
海賊も魔女っ娘も頭上の、HUDを明滅させて、折れ曲がっている。
◇◇◇
「ザッ―――おーい? どしたー?」
再び、猫達に群がられながら、
5分後。ようやく起き上がる、猫耳。
「ザザッ―――
と、まるで、ワルコフのように、禁則事項を告げられる。
「ザッ―――あのう、……先にキャラ
肩で息をする
「ザッ―――こんなジャングルのど真ん中で出来んの?」
「ザッ―――その、今表示されてる画面、……チャットに放り込んでくれまへんか?」
再び、飛び退く顔の長い猫達。
「ザッ―――やっぱり! 先生、……見て見て! プークスクスクス!」
「ザッ―――まぁ! 本当にー、そこ、惑星ラスクの”
惑星ラスク上の、どのエリア内のどの空間にいるかを表示している数列。
『U4_X33_Y02_Zー2003』
「ザッ―――このZ軸ってのが、高度を表してるのねぇ。つまり此処の2000メートルくらい下のぉ地面に埋まってるぅ―――はずなのよねぇ? 何でそんなジャングル? くすくすっ」
ぱしん!
「ザッ―――これならたぶんいけますやろ……文字チャット開いて、あてぇに、@VERSUS_PLAYて、……文字送ってくれまへんか?」
首を傾げつつも、素直に、手の甲にフリック入力。
「ザッ―――送りましたー」
映像空間の中の
処刑人の手元にも、奥行きのある映像空間が出現する。
―――♪
――――――♪
―――――――――♪
どこからか、軽快と言うよりは、軽薄なBGM。
リズミカルと言うよりは、どこか投げやりでシニカルな踊りを見せるキャラクター。手抜きな筆致で描かれた、それは、
BGMとともに、出現したやたらとプルプルするロゴ。
パーティーメンバー間の
『チャットで対戦! キャラメイカーズ!』
ロゴに押しつぶされ、光の粒子と化す
そのメインヒロインの、扱いの酷さに、口元を歪める、部員と顧問。
彼女が、”雑魚ヒロイン”として頭角を現し、立ち位置を確立するまでには、まだ、もう少しの時間が必要とされる。
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