2:惑星ラスクその2
「うふふふふふふぅ」
「あははあははあははは」
宙に浮かんだ、一枚の映像空間を前に、
ここはスターバラッド・オンライン・ユニバース内、”
現在、この星以外に、稼働中の
4人が居るのは、学園
やや、未来的なオブジェや、立体的な表示板が点在しているが、普通の公園だ。ただし、公園の周りを取り囲む、森を抜けた向こうに見えるものが、普通では無かった。
強度が心配になるほどの、自由な形状の超高層建造物や、空の5分の1を埋め尽くすほどの巨大惑星を、バックに浮かぶ、宇宙ステーション。
何せ、姿形だけなら、周りを歩いている連中の方が何倍も面白いのだ。
優雅に会釈し歩いていく、極普通のフォーマルな装いの、紳士の
植え込みから飛び出してきた、奇っ怪なフォルムの、サイボーグと悪魔と刃物の
VRE研の面々の、すぐ
彼らの奇抜さから見れば、むしろ、
画像の上部に、『@ShovelSteak』と、送信元VRIDが銘打たれている。
「ザッ―――アンタ結局、どこに居んのよ!?」
その風体は、有り体に言えば、海賊か。身長は目測で、190センチ。レリーフのあしらわれた大きめの三角帽と、ブーツのヒールが足されるため、とてつもない巨漢に見える。筋骨隆々でハチキレんばかりの逆算角形。スペイスギルドのロゴの入った簡易宇宙服に身を包んでいる。確か、ロゴ入りのコスチューム着用で状態異常による減衰値が緩和されるとか何とか。作動音を立てる、推進ノズルと機械作動パーツの付いたゴツいブーツ。
モーターの付いた細身の大剣を背中に背負って、妙に幅の広い短剣を腰に何本も下げている。剣術をメインとした、接近戦タイプに見えるが、袈裟懸けに巻かれた、弾帯は何に使うのか解らない。
「ザッ―――
その風体は、有り体に言えば、魔女ッ娘か。身長は目測で、130センチ強と言った所か。とがり帽と手に持つ長大な
魔女姿でも、
手にしているのは、真空管が先端に埋め込まれただけの簡素な
「ザザッ―――とりあえず、ここがどこかは、さっぱりわかんねえよ」
雑音を立てる、VR教室の座席に付いている音声チャット。VR空間に依存しない、
惑星ラスク地表には、数十有る大陸ごとに、出現ポイントが設定されている。そのすべてが、スターバラッド世界の、公的機関によって管理された都市内になる。一般的には公園とか、スペイスギルド本局の中の、キャラクタ設計ルームに、出るはず。
決して、薄暗いジャングルに、出現したりはしない。
ちなみに第
「ザッ―――ちょーっと待って、放してー。今、メニュー操作してるからねー」
VR空間内や、特区内では、通信による遅延は起こりえない。実際の処理に手間取っているか、大きさや距離を表すための演出である。
飛び飛びの映像と彼の科白によると、
その
カラーリングは、猫たちの美的感覚に任せた物にしては、及第点と言えた。寒色系のベースに、アクセントとなる暖色系。左胸だけがパッチワークのようになっているが、ソコは細かく区切られた、スペイスギルドのロゴの有る部分なので、仕方が無かったと言えよう。
「ザザッ―――なんか、
「ザッ―――あー。これさー、ここ来たときは、真っ白だったんだけどサー。この
「ザッ―――
「ザッ―――そうだぜ。顔長ぇー猫だぜ」
薄暗いジャングルのような空間で、細長い猫にたかられてる、
やや、向こうが透けて見える空間映像の向こう側から、猫耳型ヒューマノイドと、骸骨のような顔面が凝視していた。
「うをぉー!?」「っひゃぁ!?」
飛び退く、”
とっさに出た声。それは音声チャットでは無く、VR空間内の肉声として発音された。それぞれ気色悪いほどに、”巨漢声”と”幼女声”だった。
VR空間内で会話する場合、肉声の音声チャットを使用する時の方が、意識的に行わなければならない。無意識に出てしまう声は、キャラメイク時に設定したゲーム内音声で、VR空間へ向けて行われる。
「ザザザッ―――
この声は、もはや聞き慣れた、子供のような。つまり、VR専門家にして、特別講座VRE概論講師、笹木
全長150センチ程度、カーボン製の追加装甲の付いた、イブニングドレスに身を包んだ、やや、メカメカしい印象の猫耳娘。耳としっぽが鋼鉄製だが、見えている肩の関節などに繋ぎ目はない。目尻に小さく
「ザッ―――その、”U4”っていう記号の意味、……ようやっと、……わかりましたえ」
この
モトクロス用のフェイスガードの張り付いた顔面。その暗いゴーグルの奥から、閃光を放つ
ギガガグギギガガッ……ッァ!
処刑人は、血濡れのマチェットで、何もない空中を指し示す。
ボンヨヨヨオォン♪
空中の粒子が集まるように、突如現れた雲が凝固していく。楽しげな
「あらぁ、”U4”ねー!」「ほんとだぜ”U4”だぜ!」
オネエ言葉の『大剣士見習い:まあがりん』と、勇ましいダゼっ娘の『ひよこ魔法修道士:ダイズプリン』。
「ザザッ―――
ノイズ混じりの、子供声。
区画番号の放つ輝きを受け、強制的に頭上にキャラクタ名がポップアップしている。猫耳型ヒューマノイドの頭上には、『拳聖:にゃんばるくいな』。
「|ザザッ―――
ノイズ混じりの、
「「この、直下おそらく、2000メートルに居ますぅー」……おりますえ」
―――その場の全員が、やや緊迫した面もちの中、彼は口を開く。
「ザッ―――えー? 何の話ー? ……あ、……こら、だめだって、袖を引っ張ったらぁー」
彼は、顔の長い猫に、引っ張られて、画面からフェードアウトした。
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