1:接触5
テーブルの1メートル上空。垂直を軸に回転する、15センチ程度の画像。
ソレには見覚えがあった。
『”
カラフルな色合いの、イベントチラシ。
クルクルと回り続けるフライヤー。
「……音声入力」「……選択中:最大表示」「……ポイント:視線入力」
NPCコウベが体育座り、その頭の上で、小鳥がニワトリ座りしている後ろ側。
広い壁の中心へ視線を向ける、白い方のコウベ。
いや、NPCコウベも肌は白い方だが、受ける印象は健康的。白い方のコウベの白さは、見慣れてくると、やや
コレは通常の”壁面を利用した拡張表示”。
むしろテーブル上の中空に、フライヤーを表示していた事の方がイレギュラーで、大介が発動中の
「さっきのとか、コイツ等の
テーブルの上のあたりと、向こうの実物大NPCどもを、指さす
「……
「でも、この、
「……コレは、開発
「つまり……!?」
同時に首を傾げる、男子生徒2名。
「簡単に言うたら、……今の状態で、
「へー、そいつぁ、おもしれぇーなー。なぁーワルコフー?」
「
ボボボッ、シュゴゴゴッ!
脚を投げ出して座っていたワルコフは、スラスター点火。
天井の、天窓まで吹き抜けになっている部分へ、飛び上がって降りてこなくなった。
よく見れば、頭の上の小鳥との接触面とか、輪郭の一部とかに、若干のノイズが生じている。それと、向こう側が透けて混色しているために、全体的に薄暗い。
「確かに、ワルコフが使う、完全な
「そういや、先生も、処理落ちしてたワルコフに、
「先生……?」
「あーうちの顧問っつうか、VR講座の特別講師の先生」
「顧問……?」
「VR
NPCコウベとワルコフを適当に指さす
「部活……楽しそう……どすな」
なんか寂しげに、微笑む、大介美少女。
「それで、このフライヤーが、どうしたんですか?」
「そうだったぜ、
通常サイズのハンマーを1本手に取り、
『※スターバラッド統括デザイナー:
「
「いーや、知らねっ」
「かといって、こんな旨そうな名前、そー無えだろうし、……
「兄貴なら、なんか、お堅い基礎研究を地下でやってるって、前に聞いたことあるけど……こんな華やかな催し物に、好き好んで出るとは思えん」
「ん? これ、夕方見た、フライヤーと画像は同じだけど、ぜんぜん違う記事だぜ?」
「なになに? ここからは、VR設計師や開発関連会社向けの記事となります……」
自分の顔の前で、指をちょいちょいと突き上げる
スクロールして現れたのは、記事でインタビューを受けた人物の顔写真。
「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃっ!」
崩れ、折れ曲がる
「なんだこれ!?
「わ、マジで兄貴じゃねえか。なにしてんだあの研究ヴァカは!?」
「ほんに、……そっくりどすね。……とゆーより、……
サスペンス映画の後半、真犯人と対峙した名探偵、又は、名探偵に追い詰められた真犯人のように、
「わー、待って待って! だから、これ兄貴だから、俺じゃないから! それで、兄貴が何したの!?」
『自由な発想で、作り上げたご自慢の、会話型NPCを、弊社運営中のスターバラッドオンラインユニヴァースで、大活躍させてみませんか?』
「―――ってぬかして、大募集しよったくせに、……いざ、規定値クリアしたら、……
重さを感じない、玩具みたいなハイプラスチック製のハンマーを、泣きながらワルコフへ投げる、
ハンマーはワルコフの
◇◇◇
「そやかて、……
興奮したせいか、また”
周囲には、平面がズラリと浮かんでいる。
光る平面には、彼女の試作したNPCが、
中には、画面中を覆い尽くす、薄暗い
「最終通信地点と、……周囲のオープンチャンネルを……アウトライン検出して、……やっとの事で……到着したんえ」
指で開き、拡大した転写画像には、
再び、玩具みたいなハンマーを吹き抜けへ向かって投げつける大介。
「あぶねっ!」
咄嗟に、デカいハンマーで、小さいハンマーをブロック。
落ちてきたハンマーをつかむ
もちろん、
さっき、投げられたハンマーは危うく、遠くの、陶器製の傘立てに激突する所だったからだ。
大介はガクリとうなだれ、
「なによ、……今まで投入した……NPC43体、……すっぺり、潰すか
「ええと、よくわからんが、ウチの兄貴が公募したNPC募集に際して、兄貴謹製のNPCで迎撃するのはオカシイと」
確かに公式NPC、
腕を組み、考える
「
「えー? 何々ー!? おやつ? おやつの話ー!?」
NPCのコウベは、暇になったのか、無理矢理、会話に割り込んできた。
「……えっと、コウベって、たこ焼き大介製品だったよな?」
「……そだよーたぶん。だから、早くおやつくれよ!」
「忘れとった、……あんはん
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます