9:優等生と小鳥とブラックボックス、その4
きゅーっ、ヒュルルルルー!
最後尾に座っていたシルシが慌てて飛び出す!
タタタッ! ぽすん!
ふーっ。息を吐き、
左手に掴んだ
その
「HUD……出ねえ、気絶してる」
右手に掴んだ抹茶色。
羽根が広がったままになっている。
「こっちも、出ねえ」
「
自分の座席の周りをうろついていた小鳥が、教卓の方へ飛んでったのを、ダイブ中の
そして、頭の上を
壁にぶつかった時点で、
ヒーローの顔には、安物のARメガネが張り付いているため、若干コミカルなのは否めない。
ふつう室内でARキャラクタが、部屋の壁に激突しようが、内部的には、すり抜けるか、表示が無くなるだけだ。行動範囲設定がしてあったとしても、壁にぶつかる衝撃は処理されない。ぶつかったという
けれど、AR・VRに
仮想空間内の
その辺の話が、せめぎ合い”
特区内での、お約束。
『
―――とは極論を言えば、”
笹木講師は、ドヤ顔の
笹木講師は、
円形に入った
一瞬のコンクリート、一瞬のくすんだ地の黄緑色、一瞬の防壁区画を表す警告色、それらを塗りつぶす元の壁面の
笹木講師は壁の文字を追って天井を見上げ、心情を
「ワルさんがぁ、昨日ぉ、壊しちゃったぁ、
メガネ両サイドのLED光が天井にうっすらと届いている。
「本当ですよ。昨日、学校の外から見たとき、上の階の生徒が、空中で授業してたの見て、ビックリしましたよ」
「すっごい、凝った空間構造を投射するかと思えば、なんか妙に雑というか……ブツブツ」
実際、VR専門のカリキュラムが多数有るといっても、普段から、AR・VR空間を見ているわけではない。それにワルコフの壊した
そして、いくら自由の利く仮想空間内の出来事と言っても、
■昨日ブリデゴザル。ナイスキャッチデスワー_
「……昨日ぶりで……ござるぅ……ナイスキャッチ……ですわぁ」
急に
しかし、器用にも結構な速度で階段を駆け上がってきた、
「ワルコフおまえ! 昨日、教室の天井、上の階ごと吹っ飛ばしやがって! あと自動屋台にも何してんだよ! 何とかなったから良かったけどっ……あれ? お前、何かでかくね?」
見上げる
「ん? どした?」
■コウベサ、サン、ト、小鳥ハ、ハ、衝突処理リ、リリ、中ノヨウ、ウデス、ススn
■3秒後ゴ、ゴ、
宇宙服のバイザー部分が、断続的に”特徴的な明るい赤”に染まる。
その
「あらぁほんとぉ? よかったぁー!」
首を傾け、シルシの腕を読んでいた笹木講師は、安堵の表情を浮かべた。
ワルコフの推測通りに、パチリと眼を開けるコウベ。
「あれ? シルシじゃん。こんなとこで何してんの?」
「おまえ、壁に激突したんだよ。覚えてねーの?」
『たこ焼き大介作成:
その大げさに乱れた頭髪から、HUDがポップアップした。
「そーだった! この、抹茶色め!」
転がる小鳥の、首のあたりを平手でひっぱたく。
「ピキュッ!?」
円らな瞳を開き、首だけを縦にしてひと鳴き。
スタッ! とボクサーのように機敏に起き上がる。瞳の
『たこ焼き大介作成:
小鳥の頭にもちゃんと表示されている。こちらも問題なさそうだ。
「―――
「へ? 何すか!?」
「危ないよぉー? 逃ぃーげぇーてぇー!」
まるで緊張感のない、”友達を誘いにきた子供”みたいな声。
でも、その顔は今まで見たことのないほどシリアスだった。
少年は、その
「あー、大丈夫ですよ。またワルコフがフザケてるだけで、
その右手首から、ナックルガード風の手甲が飛び出す。ワルコフの拳は圧倒的な存在感を持って、
「アブねっ! これ、映像だって分かってても避け―――」
チッ。
ギョッとした顔で、頬を手の甲で押さえる少年。
頬をかすめた
ガキン。何かしらの溜めたパワーを
今度は、30センチ位、低い軌道で
速度は決して早くないが、的確に急所を狙ってきている。
ココン。グオオングオオングオングオングオグォグォ。
近づいてくる拳から発せられる、何かの
ぱしん。
宇宙服が繰り出し、伸びきった拳を、
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