6・5・8:ワルコフ対自動屋台8
俺は、
まだ、先生達は、コチラに背を向けている。危なかった。騒ぐなよな-。
先生は、後ろ手に、何度も緩衝エリアの真ん中あたりを指さしている。
「そういやさっき、先生、何か見てたな?」
俺は簡易AR眼鏡を掛けながら、緩衝エリア中央側を、
俺はたじろぎ、尻餅を付いた。「ぶっぐひっ!」変な声が漏れる。
「おい、
「いった。なんて事すんのよ!」
鬼の形相で、つねり返してる
「俺は兎も角って何だよ、俺も
俺もヒソヒソ声で抗議する。
「なによ、アンタ達、随分じゃないの! アタシ
自分の
「わかった。マジになるな。
急に、哀れむような視線を、本気で俺に向けてくる2人。
悔しい。悔しいので、脅かしてやる。
「いいからコレ掛けて、あの辺、真ん中辺り、視てみろ、大声出すなよ」
と、簡易AR眼鏡をクイッと持ち上げてみせる。
「ぶわぁムグッ……!?」
「きゃぁムグッ……!?」
2人の口を俺がバッと塞いだ。そのポーズだけ視れば、さながら、突っ込んできた巨大牛の
俺も、
目の前に、急に天気が良くなったみたいに、ピーカンの青空が広がって……いや、あれは青空じゃない。ふつう、青空には、『Dinner×Vender』なんて楽しげな
”
その下で、対比的に、とても小さく見える
”
更に、よく見りゃ、スラスターを
口を押さえた両手を、そっと離し、ちゃんと振り向く。ワルコフに向かって怒鳴ろうと息を吸い込んだトコを―――
「ワぶっ!」
後ろ頭を
データ・ウォッチの表示盤を弾き、パーティーチャットコンソールへ会話を打ち込む。
具体的には手の甲でフリック入力。コレはワルコフの使った、
シルシ :ワルコフ 何やってんだ!
コウベ :あれっ!? シルシだっ!! 生きてる!? キャッホーイ!
ワルコフ:オヤァ? ゴ無事デシタカ!? ソレハ
シルシ :そんなのどうでも良いから! 何やってんだよ!?
ワルコフ:モチロン、部員ノミナサマノ、
シルシ :今すぐ止めろ!
ワルコフ:ソウ言ワレマシテモ、現在、バトルレンダ、再スタートシタバカリデ、モッタイナイデスワ
シルシ :多分、ブレたキャラ作りなんて、やってる場合じゃねえぞ!
ワルコフもコウベも、瞬時に、全文送信してくるから、俺だけチャットに慣れてない人みたいになってる。
俺の眼前に表示中の、パーティーチャットログを、
この状況、恐らく、どう、都合良く解釈しても、
ワルコフは、気ままに、金属棒を、バックパックから取り外して2刀流とかやって、ふざけてる。こうしてる間にも、
「では、そろそろ、お
対外向けの、よそ行きだとしても、
カツカツン!
背後でヒールが振り向く気配! もう、運に天を任せるしか無ぇー!
スススス。俺は一文入力して振り返った!
シルシ :シスアド来てる
500円ショップで売ってる、板っぺらみたいな、ちょっとコミカルすぎる、簡易タイプのARグラスをお揃いで掛け、中腰のまま膝をそろえて振り返る、若者三人組。この
青春を謳歌し、じゃれつく若者達を、一瞬怪訝そうに眺めた後、すぐに興味をもつ、VR専門家と、自動機械群システム管理者。
「なあにソレ? 今、
俺と
俺たちは
微動だにできず、不甲斐ない。けど有る意味、それが功を奏した。
「なぁにぃ君たちぃ? おバカみたいよぉ? ぷははぁー!」
ああ、もう先生め。さっき、自分で、”ワルコフのワルさ”を見て慌ててた癖に。
自分で、こっちに丸投げしといて、フォロー無しか。つか、本気で、ほんの一瞬前の事、忘れてそうだなおい!
ふと、何かに気づいたように、空を眺めヘッドセットに手を当てる、
「「「ああっ!」」」
いや、レンズっつか、ガラス部分が出てないし、単にヘッドセットのモードを切り替えただけかも―――
一瞬の沈黙。
「な、なあに!? コレは一体何なの!?」
叫ぶ
レンズとか、ガラスとか飛び出てないけど視えてるっぽい。最先端の技術を惜しげも無く使ってるんだろう。先生の
「このでっかいの、どう言うことなのー!?」
叫ぶ
終わった。コレは怒られたあげく、問いつめられるままに、コウベ登場の
俺は、
「君たち、イイね! 造形はまだまだだけど、このウネリと、逆に枯れてない感じ!」
「は? ほめられてる?」と
「何かそう聞こえるな」と
3人揃って、振り返ってた上半身を、元に戻す。
眼前には、なんか、養分を吸われたように、つぶれて小さくなってる”
小さいって言っても、小振りの体育館くらいはありそうだけど。
表面が
そして、その鉢に生けられているのは、巨大な巨大な椎茸だ。
大きくなりすぎたせいか、所々ほつれるように、枝分かれしてて、作りの雑な、松の木のように見えないこともない。
何かほんと、盆栽みてぇ。あの曲がり具合なんて、ちょうど俺たちの今のポーズそっくりだ……し―――。あ。3人揃って、再び、振り返る。
「そして何より、この、身を挺した、
偶然、いやんいやんのポーズのまま固まって、くっつき有っただけの俺たちを、指さす女史。イイね♪ イイね♪ イイね♪ ぽん、ぽん、ぽんと、満面の笑みで、肩をたたかれた。
「先生! 実におもしろ……いえ、有望な生徒さん達ですね」
「常日頃からのぉ、私のぉ教育のぉ
あれか! 良く、公園でやってる、AR技術を使った大道芸とか、創作ダンスみたいなモノだと思ったのか。つか、ワルコフめ、とっさに”
どっと冷や汗が流れる。
君たちにも名刺をあげよう、と言って懐から、アジュール・ブルーの地色に、白い文字の書かれたカードを取り出す。さっき、先生が貰ってたのと同じヤツだ。
あれ? これ、くっついてたのか2枚ある。
「あの、これ2枚―――」
返そうと思ったが、女史はさっさと、”
「シルシー!
いつの間にか、スグ側に来てた、”
俺は慌ててカートの
野良NPCくらい、特に問題ないだろうけど、なんか、”永久パターン”の事もあって、一応用心しとこうと思ったのだ。後ろ手に隠し、
「何だよー! ドケチか―――」ブツッ。
何か言ってたけど、ちゃんと切れた。
「もし又、
なんか、聴き方によっては
「あら、”
よし、女史はコウベに気づいてない。
「え? 助かるぅ。じゃぁ、有り難く頂きまぁす」
”
俺たちも慌てて、手伝う。
「飯櫃2号、お手伝いして。保守課の分と合わせて8個、頂いていきます」
先生と分け方を決めてあったんだろう。”
俺たちが、”
「では、本日はコレで失礼いたします。先生、今度、飲みに行きましょう」
ガシッウゥンピピピッ♪、6肢が自分で水平を取り、
なんか、ラクダみたいねと
「はい是非~♪ では、こんなに沢山、ご馳走様です~」
先生が両手に抱える、最高級折り詰めは4個。上機嫌である。
俺たちも、先生に習って、手に抱えた最高級折り詰めをチョット持ち上げ、「「「ご馳走様です~」」」と挨拶した。
”
先生も給料日前に、身銭を切らんで済んだし、そこそこ良かった気もしてくる。
と言う事で、取りあえずの問題は、どうやって食べきるかって事を除けば、
「いくよ!
バタン、ピンポォン♪
ガチンガチンガチンガッチィン。ズゴゴゴゴッゴ、ガッシイイィイィン!
モールドが、溶けるように沈み込んで、元の平坦になるのを待ってから、俺は叫んだ。
「ワァルゥコォフゥ! どこだぁー!」
シィィィィィィィィィィィィィィィィィン!
さっきまでの騒々しさと比べると静かすぎて耳が痛ぇ!
くそっ! ワルコフの野郎め! 逃げやがった!
「管理者怖い怖いって言って、どっか行った」
んコウベ? どうやって
「ひとまずはぁ、無事難局を乗り切りましたぁ、後はアレをどうにかすればぁ、今度こそぉ、
最高級折り詰めの山を抱えた俺たちの前には、巨大な巨大な椎茸が曲がるように
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