7:シラタキ対自動屋台
7:シラタキ対自動屋台
高さが高く、幅も乗用車が
通路の壁側の床面に、白い2重線で長方形が描かれる。床面の目盛りによると、正確には4メートル×8メートルの平面が切り取られた形だ。
ガチンガチンガチンガッチィン。ズゴゴゴゴッゴ、ガッシイイィイィン!
白い2重線で指定した空間を埋め尽くすように、”モールド”と呼ばれる油圧サスペンションの固まりのような壁面が
迫り出した後で、ガシガシガシガシと上下に波打つような挙動を見せる。
ガチャリ、ピンポォン♪
モールドと同じ色の両開きのドアが開く。
薄暗い非常灯に加えて、天井から緑がかったLED光が投射される。
迫り出したモールド部分が溶けるように壁に吸い込まれていき、アジュール・ブルーの直方体を通路へ取り残した。
「音声入力」「
自分の尻の下から、流れ出すBGMを聞きながら、両腕を天井へ向かって突き出す。ブルブルと体を猫のように伸ばし―――
「んぁーーーーっ! 疲っかれたー!」
その脱力ベクトルに逆らうことなく、後ろへゴロリと寝転がる。
『ゴ命令ヲドウゾ』
”
「とりあえず、さっき踏み抜いた
寝ころんで
壁が途切れて向こう側が見えている所の、少し奥の天井が、赤く明滅している。通路と段差もなく続いているので、天井までの高さは、8メートル。奥行きは見渡せないほど広い。
赤く明滅している周囲に、関節を持った作業ロボットが集結している。
”
「音声入力」「おーい、おいでー」
ピッ!
人差し指で、赤く明滅している天井の辺りを指さす。
”ひょろ長い”と言うには、寸足らずな、間接を持った作業ロボットの1基が格子の中を多少、遠回りしながら、下りてきた。
「管理者権限:行使」「緊急修理:10
ピピプゥン、プピピプゥゥン?
直径1メートルのサッカーボールが5個くっついて、小さく突き出た手足にはタイヤが花咲くように密集している。形容する要素としてはコレで全部で、コレ以上は無い。
「エリア指定:あの辺」
と再び天井を指さす。
ピプィウゥン♪
サッカーボール5連星は、
「
と言って、自分がヒールで踏み抜いた穴の、修理作業を眺める。
ギギギギギギッバゴンッ!
流氷の鳴く音が響いた。
新しい
「……まあ、モーターを酷使し続けたとしても、
新しいパネルを押し上げ、1秒保持。すぐに支えていた手足は離れてしまうが、新しいパネルの繋ぎ目は無く、落ちる様子はない。サッカーボール4個の、さっきよりも短い作業ロボットが、最短経路で、下りてくる。リペア作業が終了したことを伝えに来たらしい。
ピプゥン♪ ピプゥン♪
「はーい。ご苦労、ご苦労」
ピピピッ♪
天井の赤い点滅が消え、半透明の新しいパネル部分の
「そういや、『
”
『
「そうねー。でも、今後は、
コンと、天板を叩きながら小言を言うように命令している。
「最優先コマンド:レギュレーションヲ
ピピピッ♪
「はーい。それで行きましょう。向こうの存在自体が、どんなにレギュレーション違反でも、こっちはあくまで、量子データセンター維持が最大目標だからね」
「了解デス。デハ、対バトルレンダ行動ハ、ドノヨウニ設定シマスカ?」
「え? 変わらないわよ? バトルレンダ検出時には、こっちもバトルレンダ自動承認で迎え撃ちなさい」
「ピィーーーーー♪
表示板を真っ赤に点滅させて抗議する”
「え? 何!? どういう事?」
ガバッと起き上がり、天板の上で
<♪>
<<♪>>
<<<♪>>>
凝視したとたんに、表示板が着信を知らせる。
ヘッドセットに付いている、小さなパネルにも、着信を示す同じ表示が
「音声入力」「通話」
「はい!
「……あら?
「…………」
「えーっ! ダメですよ? 締め切りは守っていただきます。
「…………」
「お約束通りに、
「…………」
「わかりました。はい、折り詰め持って、スグ帰りますから~。はいー。じゃー」
「音声入力」「通話終了」
はぁぁぁぁーーー。深く長い
その眼に、凍てつくような、色が浮かぶ。
「
『該当データは削除されました。』
表示板の文字色は通常のモノに戻っている。
「ちょっと、どういう事かしらーーーーーーーーー!?」
天板の上に立ち上がり、ハイ・プラスチックの地面を踏み抜いた時のように、膝を蹴り上げ―――
ヴォブゥン。ソレまで、見せたことのないノイズが表示板に走る。
通路天井に付いたLED光までもが、切れかかった、古い電球のように、チカチカと明滅し出す。
「外部からのアクセスを確認シマシタ。→→→→→追跡できません。」
カタカタカタカタン。ギュピュピプンガタン。
サーボ切り替えと高速な作動音による音階。寸足らずな、作業ロボット達のように、何らかの意思表示をしているようにも見える。
カタカタカタカタン。ギュピュピプンガタンガッギギギ。
それは、恐らく、”恐怖”とか”萎縮”とか呼ぶモノであろう。
―――振り上げた脚を、そっと降ろす
チカチカッ……パッ! 明滅していたLED光が点灯状態に戻る。
「……なんか、面倒。とりあえず、現時点の量子状態全部”
「ここじゃ何にも出来ないわ。発令所に一旦帰るよ。折り詰めの賞味期限にも間に合わせなくちゃ」
ストンと、
巻き毛の、一見、優しそうに見える
「BGM止まってるわよ」「ランダム選曲:アップテンポ:スタート」
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