6・5:ワルコフ対自動屋台
6・5・1:ワルコフ対自動屋台
「先生、とりあえず、最悪の事態は回避って事でいいの?」
俺は、深刻そうな顔して言葉を絞り出す。
「そうねー、ワルさんが滅多な事してぇ、自動機械の
先生は、子供のような声で返事をしながら、小皿を人数分、並べていく。
ヴァリヴァリヴァリ!
先生の背後で、凄まじい
「アタシ知ってる、ソレ、前に姉さんが、かり出された奴でしょ?」
なんか妙に手際が良いなコイツ。
シュシュルルルルルルッ!
”自動屋台”へ向かう先生の目と鼻の先を、白い円筒が一瞬で通り過ぎる。栄養ドリンク剤くらいの大きさで、ブルーのラインが入ってる。
「そぉー、2年前のぉ、”
次に先生は、出てきた”魚の煮付け”の乗った皿をつかむ。
「コレも貰いまぁす」
ゴツい腕時計のパネルを、金目鯛の、バカでかい目玉に向ける。
俺たちは緩衝エリアのほぼ中央、自動屋台と、すぐそばのテーブルを行き来している。
ピッ! チャリーン♪
ふつうの端末決済じゃ、”チャリーン♪”なんて鳴らない。
これは、
”
先生の前を通り過ぎた円筒は、複雑な軌道を描いて旋回する。吹き出す白煙を風に流しながら、テーブル下の
「でも、
と、
ドドドドガガァン!
爆発したっぽいので、そっちを見たが、ワルコフ健在。オットットットと、歌舞伎の”見栄”を切り、爆煙をかわしている。
「ソレがねえ、んーっとね。簡単に説明すると……」
先生は顎に握り拳を当てる。
”自動屋台”から、次々と発射されていく、少しずつデザインの違う
「私たちにはぁ、
先生は、右手に”煮付け”の乗った皿を持ち、左手をニギニギさせ、テーブルへ歩いてくる。
目尻を下げた
ワルコフは四方八方から飛来する、複雑な軌道のすべてを読み切り、かわしてやがる。
赤い魚の乗った皿を、俺たちが座るテーブルの上に置き、「先週ぅ、講座でぇやったところですよぉ。覚えてますかぁー?」と言って、空いた席へ座る。
その時、遠くの方から、ガシャガシャガシャンと、重いモノがぶつかる音がしたので、一斉に振り向く。ワルコフが細長い棒を地面に突き立て、周囲に雷撃を放ってた。トポロジックエンジンの”待ち状態”の
何だ、ワルコフか、と俺以外全員がテーブルへ向き直り、会食準備が再開される。俺も自動屋台の
さっきの重い音は、白いミサイルが地面に次々と突き刺さりひしゃげた音だ。見た感じよりも重量設定が大っきーのかもしれねー、なんて考えるのをやめ、先週の講座内容を頭の中で
「目を閉じて、自分の腕を伸ばしたときに、頭の中にある伸ばした腕の感覚、の事で良いんですよね?」
俺は、オレンジジュース3杯、お冷や1杯をテーブルに置いていく。
「んー、大体、合ってるわね。そう。その頭の中にある、素の状態の体の形や大きさや、
先生は自分の前に置かれた、お冷やを不思議そうに軽く持ち上げて見ている。
「左端のドリンクバーの所に、お酒も有ったから、そっちがいいかなと思ったんで、とりあえ……」
先生は、
外で飲むのは止めてー! 姉さんの事、おぶって帰るのもう
先生に負けじとダッシュする
こう言うところは、ふつうに姉妹っぽい。
ヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリヴァリ!
またバリバリやってんのかと再びワルコフを見た。
さっきまでの、ワルコフの身長程度の金属棒じゃなかった。
それは、モールドの向こうに生えてる
爆煙と土煙が晴れ、テクテク走る”自動屋台”が丸見えになる。
ちなみに、緩衝エリアに土は無え。
「あ……」俺の口から声が漏れた。
またもや全員がワルコフを見る。10メートルほど離れた所に”自動屋台”が逃げるように走っている。
「アレが、彼ら、自動機械さんの、いわば
先生はテーブルに座り、黄金色の液体をなみなみと注いだコップを大事そうに置く
「それ、一杯だけだからね」
トントントーーーン!
とワルコフは棒を持ち、その場で、ジャンプした。
頂点で、スラスターに点火。
ドドドドド。
全く同じ仕草で見上げる笹木姉妹、オレンジジュースを一気飲みしながら見上げる
ワルコフは30メートルほど上空から、槍投げの要領で巨大な五寸釘のような……巨大なら
古い映像みてえな、横縞のノイズを出す、”自動屋台”が、巨大五寸釘に、撃ち抜かれた。
満足したのか決着が付いたのか、ワルコフは、空中で背泳ぎをしてその場から距離を取ってる。
「「「「終わった!?」」」」
口をそろえた瞬間。
五寸じゃねえ巨大な釘の
シュドドドドドッドドドドド!
噴射はワルコフの推進力と同じ色だ。けど、その勢いは凄まじく、噴射と言うよりも天空へ向かっての砲撃と呼んでもいいぐらいだ。
巨大五寸釘は沈降を開始し、”自動屋台”は無惨にも小さな爆発に包まれてく。
ぼかんどんばんどっかん!
五寸釘が地面に埋まり、”自動屋台”は地面に縫いつけられたまま、緩衝エリアの幅と同じくらいの大爆発を起こした。ソレは、破壊以外の機能を持つとは到底想像できねえ代物で、頭の中を真っ白にするには十分だった。
呆気にとられたままの俺たちに、先生が言葉をかける。
「仮想空間にー、
「そして、仮想空間からの攻撃に対し
子供みたいな声だけど、まがりなりにも、大人すげえなと、俺は、素直に感心し、先生を見直した。
その顔には……その顔には、トレードマークのメガネが無かった。
俺はARメガネをいったん外してかけ直す。
爆煙は消えたのち、再びノイズ混じりに復活した。
俺はARメガネを外して、制服の胸ポケットに畳んで仕舞う。
「やーいい天気ねえー」と
「本当だな。一時はどうなることかと思ったぜ」いや、
「そういや、コウベはどこ行った!?」
俺は、顧問や、部員に習って、当たり障りのない話題を振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます