5:VRE研究部発足その3
「ワルコフが欲しがったから、椎茸のお礼に、あげた」
これはコウベの、と自分の記名入りの入部届を大事そうに見せる。口を開けギラリとした歯を見せ、得意満面である。
「小鳥の分の
じっと、『
「記名した時点で、”
不意を付き、入部届を
「はい、正式に受理しました。詳しいことは追々ヤって行きましょ!」
なんて言いつつ、出しっぱなしだった、デバッグ装備を次々と終了させ、光の粒子に変えていく。
コウベが入部届を返せと抗議するが、小鳥も出してあげないといけないし、どのみち預かります、とにべもない笹木講師。
代わりに、特選おやつあげると言って、デバッグ装備の中から『特選おでん』を
コウベは早速袋を開け、かじり始める。はんぺん
「わっ、何だこれ? 口の中が楽しい!」ギャー! ドコドコドドン!
「それは
上空を見上げながら、
ワルコフは重量感を感じさせる、ゆっくりとした動きで、上空をぐるーっと回り続け、やがて、
ワルコフが、身構えると、右手首から、ナックルガード風の手甲が飛び出す。そして、なにもない空中を突き破る様に殴る。
音もせずに、初期フロア、の空が割れ、教室のAR対応塗装された天井が出現した。
「うわっ!」「きゃっ!」いきなり、現実に引き戻された二人は慌てるが、ヘッドセットは装着されたままだ。笹木講師の帽子もバイザー部分が降り、補完映像が投影されている状態だ。
「ワルコフは!?」
「ARボタンで見えるわ」笹木講師は、かけているメガネのLEDのついている辺りを指先で摘むように押した。メガネを外側から覆っている、バイザーのスルーランプが点灯している。
魔女帽子を目深にかぶった、笹木講師の見ている方向を向く。
音もなく飛んでいくワルコフが、教室天井に、学園の建物を
便宜上、ワルコフを、映し出すスクリーンと化している、教室の天井。その端まで行ったワルコフが、左右を見回して、一度は仕舞ったナックルガードを、再びガシンと飛び出させる。
そして、教室の天井と、窓の向こうの外の境目を、突き破るように殴った。
ガツン! ビキ! ゴシャ、ガララッ!
教室の天井と、その上の3階部分を、一瞬で粉砕する。
初期フロアの空とは違って、破壊された3階がぐずれ落ち、降り注いでくる。
「「!」」
瓦礫がすべて、教室に落ち―――
不意に
「うわっはっ!?」
「
両サイドを刈り上げ、幅の広いモヒカン頭にした、同級生らしき少年。
「LV2:
AR表示が、少年の姓名及び、
「そうよ、
反対側からも覗き込むように巨大な顔が突き出される。
「LV14:
先ほどの少年よりも高いキャラレベルと、笹木講師と同じ名字が表示される。
二人は
「
笹木講師は情けない声で、妹らしき女子生徒へ助けを求め手を伸ばす。
次いで
「姉さん、ヨダレ、出てる」
ムググ、と笹木講師は、ハンカチで、口元を拭われている。
ボケっとしている、笹木講師と違って、
「いだだだ! 刀風! 髪の毛掴んでる!」
あ、スマン、と、手にしていたVRヘッドセットを離す刀風。制服の胸ポケットには、
「なんだよ、
「そうよ、納得のいく説明を、聞きましょうか!?」
まるで映画の吹き替えのような凛とした響きを持つ美声で、顎を突き上げ振り返るジト目の、ロングヘアー。頭にきらめくブルーのカチューチャには、何かのアイコンが3個並んでいる。
「―――説明は私がしまぁす!」
やや髪の乱れた、凄い美人が、まるで子供のような声で、起きあがる。
「その前にぃ、これドウゾ」
事務服のポケットから取り出したのは、文庫本のしおり程度の短冊状。
「えー? またなんか始めたの?」
面倒くさいわねと、それを受け取り、片手で両耳にかける
「え? なんすか? なんすか? 面白そう!」
両手で丁重に受け取る、
笹木講師の手には、最後の一枚が残っており、「俺もすか?」と受け取る
みんなぁ同じコマンドを復唱してぇ、と前置きし、笹木講師は、
「音声入力」「物理検索」「ギルドカード検索」と続ける。
「わっ、誰アナタ!? ちょっと、なんでかみつこうとするの!?」
とは、ロングヘアーで童顔の少女。
「うをわぁ! なんで天井無くなってんすかっ!? 面白れーっ!」
とは、幅広モヒカンでガタイのよい、かなりのイケメン。
「アレ? コウベどこ行った!? あれ? 天井もそのままだし……」
とは、肩より伸びてるだらしない、ボサ髪で、口元がニヤケ気味の中肉中背。
3人、いや4人を、見回し、笹木講師は子供のような声で告げる。
「これから、一分一秒を争う、
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