5:VRE研究部発足その2
「せめて、”自動屋台予測追跡アプリ”は、ちょうだいね」涙目である。
「いいですよ、でも、このアプリ、”オー
「あら?
「VR界隈に疎いだけで、必要なものは結構自分で作りますよ。つか、2Dゲーム周りでは
「ふうん。さすが
と
「いや、見直さなくても、いいですよ、実際、フルダイブはおろか、疑似VRだって、さっぱりです。だから先生の講座取ったんだし」
と不甲斐ない自分に言うような面もちで、言葉を吐き出す。
「拙者にも……拝見させて……いただきたく候」
「わ、なんすか? 大丈夫すか? 今すぐ購買行って、何か食べましょう!」
心配げな表情で、狼狽する
■拙者ニモ、拝見サセテ、イタダキタク候_
「あ、ワルコフか! 紛らわしいな、また、キャラ変わってるぞ」
ちょーだい。と両手の平を
何だオマエもほしいのか? 別に構わんが……と、表示中のアプリを、指先で摘み、ワルコフの手の平へドロップしてやる
■
「えっそうなの!?
「ワルさんは、恐らく、最初期の実験段階のころからの
「まあ、良しとしますか。自動屋台のアプリも頂いたし、次の機会にチャレンジを……」
ごつい腕時計の盤面を操作した笹木講師の目が、悲壮の色を帯びる。次の出没予定は3週間後だって、と呟きガクリと
「じゃ、いっそのこと、”自動学食”の残り
自分のデータ・ウォッチを操作しようとした、
■自動学食ハ、タッタイマ、3分間ノ、ラストオーダーニ入リマシタ_
いくら、大量の材料が有っても、提供時間というのはあるし、全員が注文済みで、人が並んでいなければ早めに終了することも有る。教室から、設営場所の噴水までは急いでも5分はかかる。自動学食は、ラストオーダー以降の注文はいっさい受け付けず、撤収作業が平行して行われる。あと、ラストオーダーといっても、表示されているメニューを頼むかどうかを決めるだけで、献立が選べる訳ではない。
「うううぅぅぅぅぅぅーっ、オナカ空いたー」ポロリと涙を流す、外見からの推定だと25歳の女性。声を足すと推定18歳。声だけだと推定10歳。
■
「だから、なんで、ころころとキャラが変わるんだよ」
「ワルさんの、人格キャラが多彩なのは、会話型アブダクションマシンだけに……
顎に拳を当て、笹木講師は、また専門的なことをぶつぶつと考えている。
■オフタリハ、自動屋台ヲゴ利用ナサリタイト?
「はい、ソレはもう」
「俺も、出来るなら旨いものを、たらふく食いたい」
■デハ、バトルレンダ起動ノ承認ヲシテ下サイ_
「え? 何ソレ怖いんですけど」
「ちょっと待て!? 何か危険な感じの単語が入ってたぞ」
「いーよー! 許可するよー! ギャハー!」
余りにも大人しく、ずっと椎茸に取り組んでいたせいで、コイツの存在をすっかり忘れていた。
そのショートの髪が、回転する度にするすると伸びて、やがて、
「やっぱり、ワルコフさんのご飯は、栄養が違うっ!」
そう言って腹を叩いて引っ込めながら、飛び降りる。空中で腹太鼓の音がドンと鳴った。
伸びて広がった後ろ髪を、耳の後ろで
「何かってに許可して―――」
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。
ワルコフから発せられる不穏な電子音に
■パーティー名『VRエンジン研究部』。パーティー要員『
ワルコフは「目標、自動屋台、目的、VR兵装の無力化」などと不穏な台詞を並べ立てている。
「わ、ちょっとまって、ちょっとまって!」
「何で
ただただ右往左往するばかりである。
背中のバーニアが青白い光を爆発させる。
ヒュドドドドドドドォォォォォォォォ!
とても小さなスラスターから大きな光球が連続的に放たれ、連続的に消滅する。
幻想的な空の色の中を、ワルコフはゆっくりと旋回しながら高空へ昇っていく。
青白い炎は、今にも失速しそうで、爆発寸前の打ち上げ花火の様にも見える。
上空を見上げていると、何か白いモノがゆっくりと降りてくる。
ヒラヒラリと舞うソレは二つ折りの紙っぺらで、目の前に落ちてきたそれを
『顧問:笹木環恩殿―――私は『VRエンジン研究部』に入部したく此処に届け出いたします。』
その下には氏名記入欄があり、当然のように『Warkov』と書かれていた。
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