3:サルベージその2
明るい教室の座席で、気が付いた
「ひょっとして、これで見られるのか?」
と、ゴーグル部分の左側の丸いボタンを押し込む。指の下には『拡張:物理検索』と未来的なイメージのフォントで書かれている。ゴーグルに付いた外部カメラのスルーランプが点灯している。
ヨーグルト瓶の付いた装置を見ていると、数秒後、古い映像のように、横縞のノイズを出しながら、制服姿の人影が出現する。ノイズはあくまで演出であり、実際にはなくすことも出来る。それどころか、デバイスを必要としない、完全ホログラフィーも可能なのだが、現在、特区内での使用は制限されている。
「コウベかっ!?」
ヨーグルト瓶の上に、袖や裾が少し破けた制服姿の、
丁度1/8スケールになったコウベは、パクパクと口を開けている。
「えっと、音声入力?」「拡張音声検出」
コウベの頭と、教室の天井のスピーカーと、笹木講師の頭にサークル状の描線が張り付く。
「……なた、だぁれぇ? 変な顔! あと何そのでかさ! ギャハー!」
年頃女子の声が、サイズに見合った、ボリュームを絞った大きさで聞こえてくる。
変な顔というのはVRヘッドセットの事で、”でかさ”というのは、コウベから見た
ちなみにコウベ
音声、室温、風向なども最寄りの座席の
まあ、この辺の理屈は
「俺だ俺」
「
ウケている。笑いすぎて、苦しんでいるが体調に問題は無いのが見て取れる。
「何とか、こっちにこれたな。小鳥は?」
「ばばばっ……い……いないよ」左右を見回して、腹を押さえながら返答する。
「そっか小鳥は、入部届に
「ボサボサ!」腹をよじって、
そう言われた、
「わかった、わかった、ボサボサだなー」
ダイブ中は、詳細なスキャンデータを元に自動調整された初期ボディーが、自身の身体モデルになる。ゲームクライアントが立ち上がれば、もっと自由が利くが、”初期フロア”では、強制的に初期ボディーが適応される。
つまり、実世界での
「それにしても、先生遅くね? えっと、こっちも押せば、見れそうな―――」
「先生ーどうしたんですか? 無事、コウベを保護できましたし、そろそろ……」
―――軽い目眩のようなバランス感の喪失の後、
有線接続状態の、VRヘッドセットならではの、裏技だ。
「あれ? まだ10分っ……えい! 過ぎてっ……おりゃ! 無いよね?」
ぶんっ! ゴツ! ばりばりばりばり! ズドン!
ぶおん! ドガ! ばばりばりばりり! ズドム!
手に、30センチほどの、
ぶつかった巨大BCは一瞬で朱色に染まり、超重力に引かれるように、一瞬でフロアの床に落ちる。丸いモノはそれに抵抗するように、スパークの度合いを激しくしている。
「ワルコフ!!」
「ん? なんだコウベも、付いてきたのか?」
知らぬうちに、
「ワルコフ! ワルコフ!」
コウベは、両腕をつきだし、全速力で走っているが、いかんせん、今のコウベは、単純に笹木講師のフルダイブ主観を、別視点から
「わるこふぅ? なんだそりゃ?」
コウベは笹木講師の闘っている相手を、わるこふぅと呼んで、今にも飛びかからんとしている。
「先生、大丈夫? あれエネミー・モンスター?」
「ちがうわ。フロアには、プレイヤー以外入ってこないモノ。
姿形はいつもの事務服姿で、特に代わり映えはしていないのだが、とても様になっている。
「先生、いつもの
「えっ!? なぁに? ほめても何も出ないわよ」
以外とまんざらでもないのか、しきりに格好良さげなポーズを取りだす。
いつもと違う颯爽とした
桃色の事務服も、むしろ
ただ攻撃手段は、”巨大
スパークする物体の周りには、真っ赤になった巨大
「それで、
「えっとねー。どう説明すればいいかしら?」
普段よりもキリッとした顔で、拳を
「あれは、トポロジック・エンジンの、”
笹木講師は巨大BCを手に持ち、丸い物体を指さす。
「強制的に転送する? コウベにも入部届じゃなくて、それ使えばよかったんじゃないすか?」
「無理無理! コレは通称
「”
※『モニタなどに表示する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます