3:サルベージ
3:サルベージその1
「グァッ!?」
「どうしておまえは、
制服の襟ではなく、直接、首を掴まれた状態である。
「ドコ行ってタノ? 探しタじゃなイ」
その不損な声を聞き、ほっと息を付く
「どした? なんかカタコトに聞こえるぞ?」
頭を捕まれたときよりは、自分の意志で首を回せるようで、掴んだ美少女を
「どう? どんな状況!?」
「先生っ! 大変だ!
「どうしたの!? 無事なの!?」
まるで、洋画の吹き替えのような声が緊迫感を盛り上げる!
「
ぱたぱたぱたたと小鳥がドコからか飛んできて、コウベの頭に停まる。
「え? 本当!? 是非見たいわね!」
緊張の度合いをさらに高めた声だが、その内容は一気に間の抜けたモノになった。
「先生ですよね? 声が違うから違和感、有りますよ。けど格好良い」
「えっ!? そーおー? これねー、ハードウェアレベルで、
精悍な女性の声が、おどけた感じに解説してくれる。
「へー。流石に専門家だと、色々出来るんですねって、そんなこと言ってる場合じゃないです」
首を掴まれ、ひょろ高いトコに、ぶら下がっている
「状況は!?」とネコミミアイコン。
「はい、とりあえず残ってる、ひょろっとしたエリンギの足場にギリギリ立ってます」
正確には、コウベが一人、何とか立てる足場に立ってて、
エリンギは無惨にも、穴のあいたチーズのように、くり抜かれ、足場にしている部分以外は、ほとんど崩れ落ちていた。
「コウベ! あのデカイ,人型みたいなのは!?」
「もう、ドっか行っタ。―――
「なんだよ、さっき結構食ってたじゃねえか。もう腹減ったのかよ」
「チカラ
ハラヘルのヘルの部分を、凄みを増して言いたかったようだが、
「そっか。とにかく、無事で良かった!」
「
「そいつは、悪かったな。心配させちまって」
「あとやっぱ、あんまり無事じゃねえな。具合悪そうだ。長い髪も、切られちまったのか? いやでも、
褒められたコウベが、
「先生ー! コイツ、頭から煙出てる!」
「煙? ナニそレ?
本人は全く、意に介しておらず、力なく相貌を
「け、煙!? なんか駄目そうねっ! 入部届にサインを貰ってから、手をつないだまま、ダイブアウトしてっ! そうすればあとは、機械が全部やってくれるからっ!」
「コウベの目的がなんだかワカランが、話なら真面目に聞いてやる。ここから
「
「あー、まだ、ギニャギニャ笑う余裕有るな。もう少し踏ん張れ」
「先生質問。コイツ等
外というのはヨーグルト瓶の中の
「サンプルが有れば、複製も出来るし、NPC用の特選おやつは、分子エディタでも作れるわよ」
動かない首で、
「エリンギ、念のため、少しちぎってい……」
その声を聞いたコウベは、カラダをよじり、空いた右手で、自分の制服の左ポケットをまさぐり―――
「……かなくてもいいな。持ってるならそのまま入れとけ。出すな。すげー邪魔だから」
コウベは小さなポケットには、とても入りそうもないほどの、でかい白いのを出そうとしていた。
次いで、
「この紙どうやって書けばいいんですか? ペンとかないんですけど?」
「アイテム譲渡と一緒、モノを人差し指で選択して、渡したい対象に指先を当てればOKよ」
この声のアシストが有れば、世界の平和も守れそうな顔つきで、
「つまり、こうか?」
「こうべ、人差し指で、自分の頭の上のHUD触れるか?」
プレイヤーにはHUDに触ったときにも触感があり、UI操作に一役買っている。
コウベは、
「できタ」ギヌロ。にらみ顔で、得意げだ。
「そしたら、そのまま、ここへ押しつけろ」
コウベは指先に
コウベの頭の上にいた小鳥も、一緒に選択してしまったのだろう。
「ちょっと待て」と
指先が波打ち、文字と小鳥はプルンと震え、入部届へ吸い込まれる。
入部届の記名欄には、表示フォントそのままの文字と、イラスト化された小鳥が、ならんで
「あー。……なんて、アバウトな。ま、いっか、どうせ
「先生、サイン貰いました」
「じゃ、手をつないだまま、ダイブアウトしてね」
笹木講師は、フロアに立ったまま、指示を出した。
ポコン♪
細い手首に巻かれた、ごつい腕時計に”量子状態の転送に成功”の文字が表示されている
「デバッグ
周囲には、
その中の一つ、
ジジジジジージジ。
「なにかしら?」
レシートを手に取り笹木講師は、検出結果らしきモノを読む。
「なにか居る……?」
と、背後を振り返り、巨大な”
最近はあまりみないが、今よりも数世代前の、OSで使用されていた、処理に時間がかかっている状態を示す
キューブが立体的に球の表面をランダムに旋回し、その軌跡で球状が形作られている。その直径は2メートルほどで、わずかにスパークしている効果と相まって、かなりの存在感がある。
「でかっ! 何この
特区やフルダイブ空間で、通信
笹木講師は、ひるむ。
ダイブアウトすることも忘れ、手直な道具を掴んだ―――
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