2:ハラペコ学園その2
「今から、一時間20分後、俺の下宿先の近くで、”自動屋台”が開店します。高級ワインも、滅多にお目にかかれない激レア、バーボンも放出って予測出てますが、どうしますか? あ、お酒ダメだったら、超高級ディナーコースに、上トロ海鮮丼とか、食事も結構……」
イケメンボイスを持続したまま、
「バーボン、海鮮丼……じゅるり。コホン! 先生こう見えても大人だからぁ、お酒は平気です。むしろ
「音声入力」「ボイスメモ」「日記」「お給料日前の贅沢」「ステキ」そう腕時計に語りかけ、夢見るような表情で惚ける
……。
……。
「……そうです。一気に何十メートルも俺ごとジャンプした位だから、粉砕マシンのまっただ中に落ちたとしても、まだ、何とか凌いでると思うんですよ」
「その謎パワー、気になるわねぇ。どういう構造設計なのかしらぁ……」
……。
……。
「―――状況と
笹木講師は、握った拳を
「君は、君をフロア下へ突き落とした
「はいそうです」
「いくら美少女でも、NPCは、人とは違うのよぉ?」
「ソレはもう、わかってます。壮絶に、ぶっ飛んだ性格してたので。でも、ぶっ飛んでるとか、
「良いわねぇー。先生、そう言う、男の子っぽい男子、大好きですよぉ」
笹木講師は、階段も上り下りできるカートから機材を取り出す手を止め、
声はともかく、外見上は、衆目を集める程の、キレイ系美人から、頭をなでられれば、照れないはずもない。
「正直、心配なのと、最悪でも、フルダイブVRで死ぬことはないから、もうチョット首を突っ込んでみたいなって……」
笹木講師は、むき出しの基盤が所々くっついてる、
「君の下宿って近くぅ?」「ひと駅隣の駅前からコミューターで5分くらいです」
フルダイブ機器の末端についている、オーブントースターのような、ダイアルスイッチを”600”にセットする。
「
「はい、ありがとうございます」
笹木講師は魔女帽子をぐいぐいと目深に被る。
「……もう屋台まであんまり時間無いしぃ、
機器の最終チェックを行っている。
「君はたぶん、さっきと同じ空中にダイブインしまぁす」
「俺は、どうしたら!?」
外部の声は聞こえる様で、隣の座席へ座った笹木講師へ慌てて確認している。
「私が上のフロアから、サポートしまーす。とにかく、彼女と小鳥が無事なら、
笹木講師は、二人の座席の間のカートの天板に置かれた、”逆さにした四角いヨーグルトの瓶が並んでいるような装置”を指さす。四つのヨーグルト瓶の中には、
ゴーグル
「そのためには、君からの
笹木講師は
隣の座席に腰掛けていたはずの彼女は、二人掛けのソファーのすぐ隣に座っている。
「なにしろ、フロアには、
笹木講師の声は、凛とした、大人の女性の響きを有し、普段より口調が勇ましい。
「具体的には、それにサインを貰ってきて下さい」
「顧問:笹木環恩殿―――私は『VRエンジン研究部』に入部したく此処に届け出いたします。」
その下には無記名の、氏名記入欄がある。
驗は開いた紙を元通りに折り、制服の内ポケットにしまい、叫ぶ。
「入部届ぇー!?」
その開いた口からトゲトゲした緑色の物が飛び出した。
筋肉の躍動を感じさせる動きで、周囲を跳ね回るごとに、大きくなっていく。
ギシギシと音を鳴らしながら、その表面を鱗のような相似形が増長していく。
ふと、視界の隅で捉えたオレンジ色は、来客用の簡素なスリッパの形をしており、まるで透明人間が、ソレを履いて歩いてくるようだった。
パタパタパタと幾重にも押し寄せ、すぐに白い事務服を着た笹木講師はオレンジ色で埋もれた。
そのころには緑色が跳ね回る音と、オレンジ色が押し寄せる音で埋め尽くされ、
ドドガンドドドドガガガン!
パタタパタタタパタタタタ!
周囲を目に見えないスピードで跳ね回っていた、トゲトゲの鱗持ちは、その全長10メートルほどの巨体を天井に付くくらい反り返らせる。
派手な色のスリッパで埋もれ、見えなくなってるソファーめがけてトゲトゲはその体をぶるぶると振動させながら倒れ込んできた。
世界が静止し、
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