第3話空っぽだった僕から出てきたもの
本当という言葉はあまり好きじゃない。
本当という言葉を重ねすぎるとうそつきになるから。
僕はさ、本当は人間の風上にも置けないようなしょうもない人間だった
自分のことだけを考え、自分が不幸なのは他人、時代、社会のせい
自分の非を認めずに人生歩んできていた。本当にくそなんだ。
知る由があったかは定かではない。チャンスは幾度となく目の前に現れ
消えていったのだろう。
だろうということは、そのときの僕はその存在にすら気づけていない未熟者
常に怒りに満ち溢れ、中身のない主義主張を撒き散らしていた。
表現がしたかった。方法はいくらでもあったんだ。
しかし、まったくもって伝えたいことがなかった。
だから僕から放たれる言動、行動はまるで水の入っていない水鉄砲のようなものただのおもちゃであり遊びの延長線上であった。本当に空っぽだった。
月日は流れると人の人生ってのはよくできているもので壁にぶつかる。
人それぞれ違う高さの壁。
揉め事の種も壁と例えられるのももううんざりだよな。
その気持ちよくわかる。
それを世界のものさしで測ろうとするのは少しお門違いかもしれない
壁の大きさを低いだの高いだの言い合うのが
時間の無駄と気づいたのはつい最近のことである。
ある日すごくショックなことが起きたんだ。
その日を境に僕の中の誰かが少しずつ変化していくのを感じた。
それ自体は僕ではないような感覚である。
メモ毎のたびに僕らは何かを失って手に入れる。
それを経験値といってしまえばおしまいなのだが、
逆に失わなくとも手に入らないときはない
最近の僕はといえば、あまり怒らなくなったし、イライラもしなくなった。
冷静な判断ができるのか?いやそうとも言い切れない。
昔むかしあれだけ不平不満を見えない敵にぶつけていた僕が本当にこうなったのかと疑うべき所だがなっているのでそれは認めざるを得ない。
失ったものと引き換えに手に入れたもの。
僕は感情をほぼ全部失ったが、新しい世界の見方を手に入れた。
それがいいのか悪いのかは誰が決めるのだろうか?
少なくとも僕ではないのだが、答えは出さないほうがロマンチックだな。
というか出せないといったほうが便宜上都合がいい。
なんだかロマンチストみたいだ。
人間と距離感とセオリー 猫野郎 @lily_ong
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。人間と距離感とセオリーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます