3.呆然
応接用の机と長椅子のセットを挟んで一人の少年と三人の少女が向かい合って立っている。彼らは今はきちんと衣服を着込んでいるが、髪はしっとりと濡れている。もっとも少年は衣服の方にも不満があった。彼は女性用の一式を着せられていたからである。アンジャル学園長によれば「女性用しかない」ということだった。その学園長はというと、対峙する少年と少女たちを執務席に座って面白そうに眺めていた。
「アンジャル学園長、なぜこのニュゴットヴィーズ学園に男が入ってきているのですか」
太陽のようなブロンドの少女、アーグネシュがミクローシュを指差しながら批難の色露わに問うた。
「だって、この子今にも行き倒れそうだったんだもの。当学園の博愛の精神に則って助けたまでよ」
「しかし、しかし、私たちはこの男に風呂場で、は、はだ・・・!」
「うーん、それについては不幸な事故ということで・・・」
「納得できますか!」
アーグネシュは今にも爆発しそうである。
「まー、男の子が入ってるならそれで一言言って欲しかったよねー」
アッシュブラウンの少女、ヴィオラが微妙に気が抜けたような声で同調する。これが彼女の不機嫌モードなのかもしれなかった。
「それは確かに私の責任だわ。でもあなたたちがあんなに早く入浴するとは思わなかったのよねえ」
アンジャル学園長は髪の毛の先をもてあそびながら弁明した。
「まあ、話を聞く限りだとそこのミクローシュ君には罪はないみたいね」
完全な銀と言って差し支えない見事なプラチナブロンドの少女、エメシェが淡々と述べる。
「・・・・・・」
しかしアーグネシュはなおも不満そうにミクローシュを睨んでいた。
「そ、その、本当にすみません。僕にできることなら何でもするから・・・」
ミクローシュは恐る恐る謝罪する。暫し沈黙が流れる。やがて、アーグネシュが意を決したように鋭く目を光らせて告げた。
「よし、ならばフェケテ・ミクローシュとやら、私と決闘しろ」
「・・・え?決闘?」
「お前が勝てばこの件は手打ちにする。私が勝ったときは、その時がお前の最期だ!」
「ええええ?」
ミクローシュは早くも後悔し始めていた。
「あら、じゃあそういうことで決まりね」
すかさず学園長がポンと手を打ちながら満面の笑みで言う。だいたい悪いのはこの人なのだが、この際に自分はまんまと逃げおおせるつもりだ。もっともミクローシュにしてみれば助けてもらったのは事実なので、声に出して抗議するのも躊躇われるのだが。
「・・・わかりました。決闘ですね。剣術ですか、棒術ですか、それとも弓術ですか」
彼は観念して問うた。だがアーグネシュは「何を言っているんだ」とばかりに
「この学園で決闘と言ったら
そう言い残すなり彼女はスタスタと学園長室を出て行ってしまったのだった。
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