第9話:ヒーロー達の初めての戦い
ぶっちゃけた話、生徒の大半が怪獣の出現に対して怖がってなかった。
そんな様子、微塵も見せていなかった。
「よーっし、みんなーっ! あいつを今からぶっ潰すんだっ!」
「「「うおおっー!」」」
むしろ、意気揚々としていた。
怪獣というと、普段ならば恐怖して逃げるべき存在であるが、ヒーローに変身したことで自信を持ち始めたのだろう。
俺たちの力を見せつけるときだ、格好の標的が現れたぞ――そういった心境であった。
「うちのクラスは20人近くはいるぞっ! 10人は正面突破、もう10人は後ろから回り込み――挟み撃ちだっ! 残りは、後方からの援護を頼むっ!」
「「「うおおっー!」」」
ちなみにノリノリで指示を出しているのは、あゆだった。
変身後だと、見た目が変化してしまうので、誰が誰だかはっきりしないが、アイツの声はでかいし目立つからすぐにわかった。
右手に巨大なバズーカを取り付けた、ブリキのロボットみたいな外見をしている。
微妙にチープな作りをしているのが、彼女独自のマニア的な渋さを表現しているのかもしれない。
「よーっし、正面突破だー!」
いやお前は、バズーカ持ってんだから、援護にまわった方がいいんじゃないかと思ったが、あゆは、正面突破組の先頭に立っていた。
しかし、クラスの皆の気持ちも理解できた。
ベヒモスと呼ばれたカバみたいな怪獣は、動きが鈍く、歩くたびに地ならしをしていたが、あまり脅威を感じることはなかった。
もしかしたら、本物のカバと同じで穏やかな性格なのかもしれない。
俺ですら、そう思ってしまった。
過去に、自宅を破壊されて、怪獣に殺されかけた俺ですら、だ。
しかし、こうした無意識のトラウマが、俺の『ヒーローの力を試したい』という自己顕示欲に打ち勝ち、俺を援護組にとどまりさせたのはこの場合、僥倖であった。
「行くぞーッ! 突撃ッー!」
「「「うおおおおおおおっー!」」」
Dクラスの生徒の殆どの生徒は、恐れを知らぬ戦士のように、突撃していった。
特に正面突破の人数は見るからに、10人を超えている。
作戦なんてどこいく風である。
開始直後から、ルール無用の神風特攻であった。
彼らは、思い思いの力を用いて、怪獣ベヒモスへと攻撃を仕掛けた。
「いっけースカイアッパーッ!」「電磁……えと、電磁ボルトシュート!」「無限連脚ッッ!」「ジャイアントファイナルクラッシャー!」「疾風怒濤の舞ッ!」「氷河・クリア・ランス《絶対零度》!」「パワーアームズハリケェェェン!」
それぞれが、自分が考えた超カッコイイ必殺技的な何かを叫びながら、激しい攻撃を繰り返した。
しかし、怪獣ベヒモスは平然としていた。
生徒たちの攻撃をすべて受けきったうえで、尻尾を一振りした。
ぐるり、と軽く一周するように。
――その途端、突撃した生徒全員が吹き飛ばされて、壁に激突して動かなくなった。
「…………え?」
皆、ピクリともしないで静止している。
全員まとめて気絶していた。
「今、攻撃を受けた人は失格になりま~す」
紅先生が「ピーッ」と笛を鳴らしてきた。
「ま、まじかよ……」
俺は、愕然とした気持ちで呟く。
残り生徒数は――あと、7人であった。
【怪獣ベヒモスLv.6】 VS 【Dクラス生徒7人】
その後、数分間の内に、4人の生徒が脱落した。
怪獣ベヒモスが、巨大な岩を出現させて、飛ばしてきたのである。
ベヒモスは動きが遅いのだから離れて戦おう、それなら安全のはずだ――そう決めた直後の出来事であった。
大きく大きく口を開けて、巨大な岩を吐き出してきたのである。
俺たちは、まるでイ○ディージョーンズの映画のように、巨大な岩に追い回されて、4人逃げ遅れて岩の下敷きになった。
残ったの生徒は、逃げていた俺と、まったく動こうとしなかった葉山と、最初から気絶していて出遅れたハヤブサ君だけであった。
わずか3人である。
ちなみに、あゆは先陣を切って、一番最初に壁に飛ばされて気絶していた。
戦国時代や三国志のキャラを操って無双するゲームの雑魚キャラのように、吹き飛ばされて、壁まで叩きつけられていた。
今はラーメンのナルトみたいな、グルグルとした、眼玉を浮かべて昏睡している。
「フフフ……戦闘開始から、まだ10分も経過していなのに全滅寸前か……先生が狙ってやってるとしか思えないね」
葉山は、こんな状況でも相変わらずであった。変身後の彼は、ひょろ長く、黒と灰色を掛けあわせた外見をしている。
俺らは巨大岩の影に隠れて、ベヒモスを観察していた。
すぐに、気づかれるだろうが、多少の時間稼ぎにはなるだろう。
「それで、どうするんだい?」
ハヤブサ君が聞いてきた。彼の外見は、名前に違わず、ワシや鷹をイメージしたようなフォルムをしていた。
確かに、このままでは勝ち目が薄い。作戦を考えなくては。
「一応、確認しておきたいんだが、皆はどんな力を持ってるんだ」
まずは戦力の分析だ。敵は強大であり、まともにぶつかったのでは勝ち目はない。がむしゃらに特攻したとしても、あゆ達の二の舞になるのがオチだ。
自分たちに、何ができて、何ができないのか、これを知る必要がある。作戦を考える上での前提条件だ。
しかし、彼らはあっさり言ってのけた。
「知らない」
「……知らないよ」
「そうか、俺もよく知らないんだ」
どうしようもなかった。
というか、変身して何の説明も受けていないんだ。
わからなくて当然だ。
分析するまでもなく、いきなりバトルになってしまったのだ。仕方がない。
「フフフ……説明なんてしないから、戦いの中で見つけなさい、ってことかもね。ゆとりヒーローはお断りってことで……」
「そんな無茶ぶりな」
チュートリアルの戦いくらいは勝てるようにして欲しいよ。
「あ、マズイ、気づかれたよ」
ベヒモスの顔がこちらを向いている。口を大きく開ている。
「……フフ、逃げるよ」
「了解っ!」
「わかった!」
ったく、考える暇さえ与えてくれないのか。
ボンッ――――!
俺たちが隠れていた場所が、岩石の発射で埋まっていた。
思わず冷や汗が流れる。
あと一歩遅れていたら、下敷きになっていただろう。
ボンッ――――!
ボンッ――――!
ボンッ――――!
その後も、俺たちは攻撃を避けて避けて、避けまくった。
ベヒモスの動きは遅いが、岩石自体は高速で転がってくる。
一回、一回、文字通り『必死』に回避する必要があった。
避けるたびに岩が周囲に溜まり始め、まるで体育館内が岩石地帯のようになりつつある。
「攻撃しないと怪獣は倒せませんよ~、これが街中でしたら、街中岩だらけで住民は大変なことになってますよ、戦わなければ生き残れませんよ~」
紅先生は、メガホンを持ってそう言ってきた。――くそう、言いたいことはわかるが気楽なことを。こっちは岩の数が増えてきて、逃げる余裕がなくなってきたっていうのに……。
「――ん? 岩で逃げ場がない……?」
俺は岩を影にしながら、今の自分の言葉を脳内で反芻させる。
考える。
――動きの遅いベヒモス、岩の密林、そして俺たちの持つ力。
現状を振り返り、最善を選択し、一つの作戦を思いつく。
「……おい、葉山、ハヤブサ君、ちょっといいか」
ベヒモスの包囲網を掻い潜りながら、俺は二人に接近する。
やれやれ、相談一つするのも大変だ。
やっとのことでたどり着き、今自分が考案した『作戦』を二人に告げた。
「――なるほど、確かにね。考えは悪くないかもしれない」
「うん、面白いと思うよ。やってみる価値はある」
二人とも同意してくれた。
「よし、じゃあ合図は俺が出すから、三人で力を合わせよう」
「「了解っ!」」
怪獣ベヒモスめ、よくもクラスの皆を倒してくれたな。
――ここからは反撃の時間だ。
【怪獣ベヒモスLv.6】 VS 【Dクラス生徒3人】
俺たちは3手に別れることになった。
俺が怪獣の前方、葉山が怪獣の右側、ハヤブサ君が怪獣の左側だ。
それぞれ、ベヒモスが吐き出した岩石を背にして隠れている。
(大切なのは、タイミングとコンビネーション……)
(そして、運だ……)
俺は怪獣が気づくか気づかないかの位置で、怪獣を見張る。
心臓がバクバク鳴っているのが分かる。汗が頬をつたう。
緊張してるな、やっぱ。
当然だ、これは戦いなのだ。一発でも攻撃を喰らえばゲームオーバーだ。
息を呑み、機をうかがう。
(――――――今だッ!)
俺は怪獣の眼前に颯爽と姿を現す。
「かかってこい、ベヒモスッ! 俺を岩でペシャンコにしてみせろ!」
「BRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRッッ――――!」
ベヒモスは雄叫びを上げた。
激しい咆哮が体育館内に響く。
その口が大きく開かれて、岩石が発射される!
(よしっ――――隙だらけだっ!)
「今だっ! 葉山っ!」
俺は声をあげる。
葉山が怪獣の右側から登場する。
「――――フフッ、僕が攻撃担当とは、これはこれは、意外や意外……」
葉山は加速して、怪獣を横合いから殴りつける。
突然の攻撃にベヒモスは戸惑う。
怪獣から岩石が発射する隙を狙ったのだ。
(怪獣ベヒモスは、岩石を発射した直後に硬化する――! これまで必死に逃げてきた経験からこれはわかってる……!)
葉山は連続で攻撃を加える。
殴る、蹴る、殴る、
殴る、殴る、蹴る、
殴る、殴る、殴る、――激しいラッシュであった。
しかし、怪獣の身体には傷ひとつ付かない。ダメージを殆ど受けていないようだ。
ベヒモスが後退しながら、こちらに対して『笑っている』のが理解できた。
俺の目の前には岩石が接近してくる。
既に何人もが下敷きになっている。常人であれば避けることができない。
危機的状況であった、客観的に見れば。
――だが、俺にはピンチには思えないな。
(……思いだせ、さっきのジャンプした感覚だ)
俺はイメージする。先ほど高く高く、飛翔した時のイメージだ。
大切なのは、感覚だ。俺が、俺だけが持つ、イメージだ、変身像だ。
「――――ブースト、オン」
ピョンっと俺は飛び上がる。同時に背中から『火が付いた』ような感覚を得る。
ただの横回避や、ジャンプだったら、避けることができなかっただろう。岩石は速い、まるで砲弾みたいな速度だ。
「――だが、俺の“飛翔”は、ただのジャンプじゃない」
俺は避ける。高らかに、四年前に俺を救った一直線の光のように。
俺は空中を舞っていた。背中から熱いエンジンがかかっているのを感じる。
「フフフ……飛行アビリティの主人公ってキャラ被りが怖いね」
「飛行アビリティ違う」
葉山はベヒモスに攻撃を連打していた。ダメージを受けてる印象はないが、それでも攻撃を避けようとよろめいている。
「BRRRRR……」
「フフフ……しっぽを振り回されちゃ、突撃部隊の二の舞だからね……気をつけるよ」
そう言って、一度後ろに下がる。
「そして、こいつを砕いて飛ばすと――」
葉山は思いっきり、岩石を殴りつける。岩石が破砕して、怪獣めがけて吹き飛んでいく。
岩の礫が、怪獣に直撃していく。
「BRRRRRRRRRRRRRッッ!」
「あらら……僕が殴るよりも効いてるよ……ちょっと悔しい」
怪獣が声を上げて、後ろに下がる。後ろへ、後ろへ、と向かって、そして動きが止まる。
「BRR……?」
動きが止まる。
ピタリと。
動くことができない。
怪獣は不思議そうに後方を見る。
――自分の吐き出した巨大な岩石がそこにはあった。
怪獣は左右を見る。
――自分の吐き出した巨大な岩石がそこにはあった。
「BRRR……? BRRR……?」
怪獣は周りを見渡す。自分の吐き出した岩石で、自分の身体が埋まっていた。
「――――引っかかったね」
得意げな声が響く。
怪獣ベヒモスは声の方向を見る。
すると、岩石を持ち上げている、ハヤブサ君の姿があった。
頭部についた隼の羽がキラリと光っていた。
「これが、最後の岩石だ、ベヒモス――君を、岩の中に閉じ込めた」
彼はそう言って、最後の出口となる箇所へ、岩石を落とす。
――ベヒモスの身体が岩石で封じ込められた。
俺の考えた作戦は単純なものであった。
「――これだけ岩があるんだから、アイツを『閉じ込めて』しまおうぜ」
それだけだった。
今更ながら、作戦なんて格好良い言い方できたもんじゃない。ただの行き当たりばったりである。
そもそも、作戦を考える時間なんて存在しなかったんだ。仕方ないだろう。
俺たちはそれでも全力で取り組んだ。
まずは俺が登場して、囮をやる。
怪獣ベヒモスからの攻撃は、さっき覚えたジャンプで避ける。
その隙に、葉山が攻撃をする。
とにかく殴りまくって怪獣を動かす、できなきゃ可能なかぎり時間を稼ぐ。
そして、ハヤブサ君が岩を動かして、怪獣を閉じ込める。
岩を周囲に置いて、岩を岩で固めて、巨体を動けなくしてしまう。
――完璧に、徹底的に、閉じ込めてしまう。
これだけであった。
上手く行ったのは、幸運によるものだろう。
「なんとかギリギリだったな……」
そう言って、俺は二人とともに怪獣を見る。
「フフ……僕たちにしては上出来だよ。心からそう思う」
「うん、新島くんの作戦の勝利だね」
怪獣は動きを封じられて苦しそうであった。暴れたがっているが、巨体が岩に阻まれてどうしようもない。怪獣は四方を岩に囲まれている。もう、コイツもオシマイだろう。後は遠距離から地道に攻撃していけばいい。
「――それじゃあ、どうやって止めを刺そうか」
ハヤブサ君が話しかけてくる。
確かにアイツの動きを封じるのに必死で、どう倒すかまでは考えきれてなかった。
「そうだなぁ、遠くから攻撃できる必殺技があればいいんだが」
下手に近づいて攻撃すると、反撃されそうで怖い。
あゆ達はそれで倒されたんだ。岩だけじゃなく頑強な肉体もアイツの武器だ。
「フフフ……なんだったら、岩を持ち上げて投げつけようか」
「いいな、それ。どうせなら、俺が空中から持ち上げて攻撃しようか?」
「ああ、面白い考えだね。上を封じ込めれば、もう完ぺ――――――」
ボンッ――――!
突如、大きな発射音がした。
まるで、大砲が放たれるような。
同時に、グシャリと、そんな音がした。
どうしたんだろうと横を振り向くと、ハヤブサくんが岩石に潰されていた。
「――――――え?」
え? 何だ。
岩石の下からはハヤブサくんの手が見える。
ピクピクと動いてる。
奇妙な昆虫みたいだ。生き物の動きじゃない、原初的な気持ち悪さ。
「――え?」
俺は同じ言葉を二度繰り返した。
その時、前方から咆哮が響き渡る。
「BRRRRRRRRRRRRRRRRRRRッッッッッ――――!!」
――ゾクゾクゾクッ、と全身に鳥肌が立つ。
ひゅん、という風を切る音。横を見ると岩。岩石。巨大な。重量感のある。さっきまでなかったもの、俺の真横を唐突に通過してきたもの。
「えぇ……」
何だこれ。
何だこれ。
あり得ないだろ。
身体中が悪寒に包まれる。極寒の地に放り出されたみたいだ。寒い気持ち悪い、怖い、おかしい、何だこれ。恐怖が這い寄ってきて俺の精神を掻き乱して俺を追い詰めて俺を震わせてくる。
うわっ、うわ、うわわ。
嘘だろ、おい。
「マズイッ、新島君逃げよう! は、早くだっ! 早く!」
葉山が叫び声をあげる。焦っている。いつもの笑い声はない。
俺は反応できない、乾いた笑い声をする。すると頭をぶん殴られる。
「早くっ!」
葉山だ。葉山が俺のために殴ってくれた。
俺はハッとした気持ちで、駆け出す。
――迫り来る恐怖の根源、抗えない圧倒的な脅威。
轟音が響く。
――いと恐ろしきもの、この世の条理をねじ曲げるもの。
俺の真横を巨大な岩が落ちてくる。
――それが怪獣の本質だ。
「新島君、急げっ! 上だっ! 上を塞ぐんだっ! あの怪獣は、『上に向かって』岩石を飛ばしてきたんだ!」
俺は理解した。
あの怪獣は周囲が動けなくなった。その代わりに、空中へ向かって、まるで中世の投石機のように岩石を飛ばしてきたのだ。
「BRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRッッ!」
これまでの直線的な攻撃ではない。
岩石が空中から落下してくる、岩石の雨が降り注いできた。
ドシン、ドシン、ドシンドシンドシンドシンッ――!
体育館一帯に轟音が鳴り響く。
「逃げろっ! ――いや、違う! 接近するんだ、新島君! 離れてたら標的にされるっ! 敵のところまで行くんだっ! 『自分の真上には』岩石を飛ばせないはずだ!」
「了解!」
俺は葉山の後についていく。怪獣へと接近する。
岩が落ちてくる。眼前に落ちてきた時は死ぬかと思った。恐怖の中を突き進む。
そして、どうにか怪獣のすぐ近くまで到達する。
「フフッ……何だか皮肉だね、怪獣のすぐ近くが一番の安全地帯だなんて」
「ああ……そうだな」
俺たちはようやく一息ついた。
安堵の息を漏らす。
これで安心、ひとまず何とか、
――なったと、そう思うじゃん。
「BRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRッッ!」
怪獣が激しい地響きを鳴らす、鳴らす、鳴らす。
地面が途方もなく揺れだす。
「おいおいおいおい、今度はなんだよ一体!?」
「BRRRRッッッ!」
――――ドッシンッ!
そう巨大な音が起こり、後方を見て、俺は驚愕した。
「――岩が、浮いている……」
大きな縦揺れ地震が発生すると、物体は宙に浮くことがある。俺は中学校時代の避難訓練の時にそうした現象を目にしたことがある。その時はプラスチックのお皿が軽く浮いた程度だった。しかし、現実に起きている光景は、一瞬ではあるが、巨大な岩が空中に浮いている光景であった。
「まじ、かよ……」「フフ……ハハ……」
そして、その一瞬さえあれば、動きの遅い怪獣ベヒモスでも十分であった。
俺たちは怪獣ベヒモスと間近で対面した。
はっきりと、目が合う。
「BRRRR……♪」
「は、はぁい」
尻尾が迫り来る。自分がとんでもない力で吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。
意識が遠のくのを感じた。
ピーッ!
朧気な意識の中で、俺は紅先生の笛の音が鳴るのが聞こえる。
(そうか、これは授業だったっけか……)
怪獣ベヒモス、まるで冗談みたいな強さだ。
俺たちはやれるだけやった、最善を尽くした、でも負けた。
――――悔しい。
僅かな意地だけを残しながら、意識を闇に沈めていった。
【怪獣ベヒモスLv.6】 VS 【Dクラス生徒0人】
《勝者:怪獣ベヒモス》
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