起奇鬼危帰 壱
いしきがそこにおちていく
おちていく
落ちていく
暗いくらい底のそこ
果てのないしたへ下へ
『おねがい、——』
遠くでこえがする
『——世界を……』
けれどその声も遠く、より遠く。
手を伸ばせば、届くのかな……?
声の方に、なんとなく、手を、伸ばした。
「……………………………」
起きた。
目が覚めた。
おはよう。
うん、おはよう。
「……………………………………………?」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………なんやったっけ??
「ふぁ~………………?」
眠い、…………………いや、眠くない。
全然疲れとか気だるさはない。
うん、なんかしゃっきりしとるな。
起きよう。
「……………………………………えっと……」
周りを見ればいつもの自分の部屋。
赤とピンクが基調の、いや、なんか赤い。赤多め。
ああ、そうか。
外が夕暮れなんや。雲がそんなない真っ赤な夕暮れ。
自分は、ベッドでいつものように寝てた。掛け布団にかかって。
うん、学校いく?
え、いやいや、もう夕暮れやし、学校、終わっとるんちゃう?
あれ?
なんやったっけ、なんか忘れとらん??
「……?……………………………寝る前何してたっけ……??」
………………………………………………………………NOW LORDING…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………・・・。
「あ」
えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ??????
思い出した。
思い出しました。
「はねられたやん……」
なんでピンシャンしとん、ウチ……。
え、え、何これ??
何でウチ、家に戻ってきて寝とるん?
あ、気絶ってやつして、病院とか色々あって、治ったけどそれでも起きんで家に帰ってきて寝かせられたとかそういうこと?
「どんだけ寝てたんや……」
寝てたってことは、寝てたってことは……。……それにしてはなんかけっこう身体がきれいな気も……。
恰好は、跳ねられる前と同じ薄いピンクの丸袖ワンピ。
あれ?おかしくない?
跳ねられたやんな?
だったらこの服、傷とか、破れたりせえへん?
身体が治っとる位寝とったとしてもさっき思たみたいにきれいっちゅうか、寝起きの汗くささとかもない。むしろ服から洗濯したての洗剤のええにおいがする……。服、同じのまた買うてくれたんか……?
長く寝とったら身体があちこちちょっと痛くなることもあるはずやのに(風邪ひいた時とかほんまひどかった)……やっぱり眠気ないしどこもよう動く。今すぐ全力疾走とかもできる位、鬼ごっこできそう。
「うん……」
一応、念のため、こういう時は準備っちゅうか、予備で体操しとこうか。
「いっちに、さんっし! にーにっ、さんし……」
しばらく体操してみる。痛いとこはない。
治っとる?
「……………………………」
いろんなとこを伸ばしながら、グッパグッパ……。風邪の治った時みたいに変に力が入らんこともない。握りたいだけ握れる。
おおーーーーーーー……。
不思議な感覚や……。
だって、あの時、あの瞬間。確実に≪死ぬ≫思たからな……。
運がよかったんやな……うんうん。……さぶ。
「すーーーーふーーーーーー…………よし、そんで……?」
家に帰ってきた……。
じゃあ……つまり…………………………怒られるんやね……。
うん、そう……絶対怒られる……。
何も言わんと家出して……あんなに夜に出歩くんは危ない言われてたのに、案の定車にはねられて……。
「うわぁ…………」
この部屋、っちゅうかあの扉、…………出たくないなぁ……。下とかにおるんやろうなぁ……。
この時間帯やと……時間……。
時計……時計……。
「おおー!」
セーラームーンも無事やったんやな♪
出てく時に持ってったセーラームーンの目覚まし時計が元の場所に置いてある。
って、6時ちょっと前で秒針止まっとるな……電池のうなったのかな……。そっか、寝てる間に切れたんやね。変える人もウチ以外まずおらんやろうしなぁ……あとで入れ替えたろ。他は壁にかけてる……あれ?
「変やの……」
壁にかけとる時計も止まっとる。同じく6時ちょっと前。あっちも変えたらなな。
日にちもどうなっとる……?
いや、変わらへん、カレンダーも6月のまんまでめくられとらん。ウチ以外めくらんもんな。
しかし、時間わからへんな……。
テレビつけてみよか。
おもむろにつけてみた。
いつもテレビでゲームをしとる画面が出た。チャンネルを変える。
「……あれ???」
ビデオ2のまま、変わらへん。チャンネルを回してもどのチャンネルのボタンを押しても一旦切り替わるような感じになって、ビデオ2のまま。
「時間経って壊れたんか……?」
リビングのテレビで薄いのをパパが買うた時、前のまだ使えるんをそのまま二階のウチの部屋に持ってきたお古やからなぁ……。でも、最後に見た時には壊れてるようなそぶりなんてなかったけど……。
結局時間がわからん……。
なんやこれ、もやもやする……。
うーん、まぁ夕暮れ時やし……そっから考えるとパパはまだ仕事行っとるとして……ママやな。数千分の一の確率で買い物に行ってたり……ないかなぁ……。たまの買い忘れがない限り午前中とか日の出とる内に済ませとること多いし。
もっかい抜け出す……?
いやいや、アホか。もうそういう場合とちゃうわ。
そのアホやって死にかけたんやで?
ちょっと気持ち整理しようとかそんなレベルとっくに越えとる。
そもそも、帰ったら謝ろう思ってたやん。うん、うん。
それにアレや。寝たらちょっと気分も楽になったし。
とにかく、今は謝ろう。うん、謝ろう。謝らな、アカン。
「さっさと謝ろう。うん」
扉に手をかける。すると、
ガシャーーーーーン、
パリーーーン!!!
「なんや?!!」
下の階の方から食器か何かが割れる音がした。
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