Rabbit hole 二
「ムーーーーーーンプリズムパワーーーーーメ…」
ガチン!
月野うさぎが変身モーションに入った瞬間、ウチはうさぎの頭をシバいた。
今日もこの戦いをウチは征した。
ウチの持つ目覚まし時計、(すでに変身してる姿の月野うさぎが)鳴る時にセーラームーンの変身のかけ声そして決めゼリフからなぜか必殺技のムーンティアラせずにジリリリと音の暴力でウチを朝からおしおきにかかる。毎回毎朝ウチはセーラームーンの悪者、買ってもらった時にまさか自分が友達でなく悪者となろうとは思いもしなかったわ。
「ごめんな…うさぎ」
シバいたのが少し痛かったやろか。そっと頭をなでる。これがないと起きれへんのも事実や。
うさぎは何を考えてるのかわからへん、今日も笑顔やった。
「…………………」
…まぁいつものことやし。よし、起きよ。
パパッとパジャマを脱いで着替え、お気に入りの半そでワンピースと赤いスカートをはいたら自分の部屋のTVの前にいく。これもいつもの習慣、うさぎに勝った自分へのごほうび。
PS2のスイッチを入れる。TVはつけた瞬間チャンネルの音量の-をおしっぱ、よし、音は部屋から漏れてない。あ、2m離れな。っても壁にクッションを置いて背もたれにしてしまえば余裕。
朝からゲームをする。やってるのはキングダムハーツ。
ウチ、緋桜 如月(ヒオウ キサラギ)。ゲームが好き。めっちゃ好き。ついでに大阪に今住んどる。あと、そんで小学4年生。
名前はなんかちょいみんなとちゃうんはママが中国の人やから。名字も名前もなんかめっちゃかっこええから好き。緋は赤の上の意味らしくてそんで花のあの桜とかええやん。色も赤が好きやから部屋も赤色のカーテンや桃色のカーペット。そんで如月っちゅうんはなんか衣をたくさん重ねた意味なんやて、いろいろ洋服着ておしゃれするんはウチも好きやからこれも気にいっとる。
まぁとにかく今はゲームが一番好きやけど。
ゲームはファミコンから友達ん家で遊んでて、幼稚園の年長組の誕生日にスーファミを買ってもろてからいろんなんやってる。パズル、シューティング、RPG、アクション、レース…どれもハマった。あーただ、シュミレーションとスポーツはつまらんかったな…よくわからんかった。
中でも結局おもろかったのがRPG、そしてアクションやった。
今やってるキングダムハーツは作った人はほんま天才ちゃうかなって思う。だって、アクションで3D空間を動いて敵倒すのにレベルアップのルール入れるとかめっちゃすごい。
64のマリオも長く遊んだけどやっぱアクションRPGってここにきて最強やと思う。敵が強いとレベル上げればええし、気分で集中力上げて全部かわせばノーダメージでも倒せる。いままでのRPGとアクションの悪いとこを両方のええとこでちゃんと潰せとる。ほんま最高や。
ガシッッ!!
キュイーーーンキュイーーーン
「ん…?」
けど、今やってる面はちょっと敵強いな。すぐHPが赤くなる。
少し戻ってレベル上げした方がええやろか…。
ちょっと前の面・世界に戻ってボスのとこの手前の場所を目指す。
RPGと違ってレベル上げも飽きないのがええ。レベル上げで敵倒すにしてもちょっと弱めで多く敵が出てくる場所でやれば無双ゲームになってとんでもない量の敵をあっちゅうまにばっさばっさ倒していけるんはそれはそれでつうかい極まるっちゅう話。RPGで苦だったレベル上げもこれなら楽しい。
使ってない魔法とかも主体に使いながらその使いやすさとか見つつ戦ってるうちにレベルが35から38にも上がった。
そろそろええかなとか思う頃に階下から声がきた。
「きさちゃん、起きてる~?朝ごはーん」
「はーい、今いく~」
セーブポイントにすぐ向かい、セーブしてゲームをやめる。テレビ消すのもちゃんと忘れずに消して部屋を出て階段を下りて台所へ。
台所にはママがいた。居間のテーブルにはパパが座って新聞読んどる。
「おはよう」「おはよう。どれもってけばええ?」
「これお願いね」
ママの手伝いでサラダをテーブルに持ってく。
「パパおはよう」「うん、おはよう」
新聞から顔を上げてこっちを見てあいさつする。うん、目を合わせなな。
ウチがこの前言われたことをちゃんと守ってるのがうれしいのかパパは笑った。
「きさちゃん、目玉焼き、焼いてみる?」
ママが台所から呼ぶ。
「うん!」
目玉焼き作り。最近ウチの中でやらせてもろてる料理の一つ。
2年生の頃から自分の分をひとつ作らせてもろて、最近は家族の分全部作らせてもろてる。早く3つも卵を割ってフライパンに入れないといけなくて難しい。
ママは片手でわってすばやく、しかも火は中火のままやれるからすごい。
しかも卵をわった時にもれて少なからず白身がフライパンの周りにいってキッチンが汚れてまうのにママのはさっとひとふきで済む位やった。
ウチも早くママみたいになりたい。
今日はほんのり弱火で、卵をわるのは両手、白身がキッチンを汚さないように卵を叩き過ぎないことにも注意する。
ポン、…カチャ。ポン、…カチャ。ポン、カチャ。
よし。
なるべく同じ場所で叩いてわった。…フライパンの端にちょっと白身が…。
「どう?」
「「しっ!!!」」
「…………はは」
パパも新聞をやめてのぞきに来たけど今それどころと違う。
あとは焼くけど、これがまた難しい。
ママはここから水を入れてフタをしてむすけどどれだけ焼けばいいかかんぺきにわかってる。フタで中が見えないのにいつも「はい♪」と言ってお皿にのせて完成。
そして、ママの目玉焼きはいつも黄身だけ半熟でできてる。
まるで魔法やった。
たくさん作ればできるようになるらしい。ウチにはまだできない。
ウチのはフタはせず、そのまま中火にして焼いてただ待つ。そして、黄身が固くなる前にお皿にもる。
「今や!」
半熟は絶対!
くっついてた3つの目玉焼きをへらで切り、一つずつお皿へ。
「熱いから気をつけて」
………。
わかってる。けど、フライパンが重い。なるべくフライパンに先にお皿を持ってこうとすると、
「フライパンは持つわ」
あ……。
フライパンを持たれてしまった…。
「…………」
へらでお皿にうつす、……のせれた。
「はい」
パパが次のお皿を持ってくる。のせたお皿は遠くにもってった。
……………。
「…………」
次のお皿も近くに持ってきてた…。
残りの二つともきれいにくずさずお皿にのせることができた。
………………………。
みんな席についた。
「「「いただきます」」」
トーストとサラダ、目玉焼き…いつもそうだけどちょっとウチには多い気がする。
だって食べ終わる頃にはお腹いっぱいになる。
「きさちゃん、部屋の豆球消した?」
「あ…ごめんなさい…」
忘れてた。
「あとで消しときなさいね」
「うん…」
朝からしかられてもた…。この失敗はよくする。気をつけてるつもりなんだけど…。
「きさらぎ、朝ごはん、おいしいね」
パパが話しかけてくる。
「…うん」
おいしい。いつもと変わらず、レタスはシャキシャキしてて、トマトはすっぱい。目玉焼きは黄身だけとろっとしてる。
けど、パパを見ると、パパは目玉焼きをトーストを二つに挟んでつぶして食べてる。
「どうかしたかい?」
「…………いい」
パパはいつもそうして食べる。いつものことだ。
「きさちゃん、今日は全部崩さずできたね」
「………うん」「あ……」
遅い。
「この調子ならもうすぐ片手で卵をわって目玉焼き作れるかも」
「ほんと!?」
うれしい。ママにほめられた。
「うん、けどまた卵ひとつからね」
「えー」
「えーじゃないわ。いきなり3個は難しいでしょう?それに、ママの頃より上手よ?ママは中学生の頃にできるようになったんだから」
「へー」
じゃあ…すごいか。ふうん、そっか。
「きさちゃんはがんばってるわ」
あ………。
そう言ってママはうれしそうに頭をなでてくれた。ウチもうれしい。
「うん、目玉焼きおいしいよ。母さんと同じ位!」
そう言ってパパもなでようとしてくる。
「いや。汚い手でしないで」
「私と同じ…………?」
「…………ごめんなさい」
二人でパパをにらむ。うん、負ける気がしない。ママとウチは最強。
とたんにパパが小さくなる。なんか新聞を盾にし始めるし。なんか子リスみたい。チラチラ新聞から出たり引っ込んだりこっちを見る。それがなんかおかしくて、
「ぷっ……ふふふ」
笑ってしまった。
そうするとママもつられて笑う。
パパも苦笑いしてて。
いつの間にかさっきまでのなんか嫌な気分はなくなってた。
そんな感じでごはんを食べきる。
「今日も残さず食べたね、きさらぎ」
「うん」
「ありがとう、きさちゃん」
残さないのは当たり前や。
「「「ごちそうさまでした」」」
食器を流しに置いて、部屋に一度戻って電気を消し、洗面所で顔を洗って、歯を磨いて、髪をとかす。
お化粧もやってみたいんやけど、指にたまにマニキュアぬってみる位、今日はせーへん、もったいないし。髪は背中のちょっと上くらいまである、みんなこの髪を「きれい」って言うてくれるからけっこう大事。寝てて少し変になってしまったとこを何度かくしで整える。すぐにサラッとなる。
「うん♪」
ええ感じ。そろそろいつも学校行く時間やし、こんな感じで。
部屋に戻ってランドセルの中を見る。昨日のうちに時間わり見て中にしまってあるし、うん大丈夫。
「はいこれ」「うん」
玄関に行く前にママから給食ぶくろをもらう。
「うん……うん、すまない」「まったく…」
パパが玄関で携帯で誰かと電話してる。ママがあきれてる。
「どうかと思う」「大事なことだよ」
そう言ってパパはママにいつものようにほっぺに軽くキスした。
「「いってきます」」
「いってらっしゃい」
パパといっしょに家を出る。
7:45。いつも一緒に出るからこの時間。
いつも通り、今日もええ天気。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます