リんクる -Cherry Red-

てっしーー

Rabbit hole 一

『おねがい、世界を___て』


ここはどこだろう

ああ…ゆめだ


『おねがい、世界を___て』

さっきからなんだろう…

声がする


どこからともなく

みわたせば、ここは丘

けれどかすかなような

うしろにはいっぽんのおおきな木


だって

ぜんぶききとれない

なに…?

あたたかい場所

あかるい場所

丘は草花がどこまでも広がり、風が吹いてそよいでいる

地平線が見える、風が見える

ときおりそこに風にのってくるように聞こえる


『おねがい、世界を___て』


だめだ、さいごがなにをいってるのか…

ここには自分しかいない

できればなんとかしてあげたいな…

ねぇどうすればいいの…?

ねぇどうしたらいいの…?

救って?壊して?

他に何があるかな…?

知って?捨てて?


『おねがい、世界を___て』


渡って?まとめて?

………わからないよ。

どうしようもない。

一度、声は時計の針がきざむ音のような、そういうものだと思ってしまうと、案外気にならなくなる。

仕方なく、草原にゴロンと横になって空を眺める。

雲が適当にプカプカ浮かび、漂っている。あれ、アイスクリームっぽい。


『世界を…』


でも、

少なくとも、こんなステキなところは、壊したりしたくないなぁ…。

ここの草花がもし枯れて、木は葉が落ちて枝だけ、風は冷たい…とか。

一瞬そんなことを…。

そう思った途端、声に変化があった。


【お願い、世界を✖✖して』


相変わらずわからない。

けどさっきまでより何か大事なところがノイズのようなものになった。

なに…?

そして、自分しかいないのに、更に違う声がした。


【もう……すこ……し…】


なに………?

なに…??

何をしてしまった……???

それとも、これが正解???


「もうすこし」と『世界を…』が繰り返しながら段々はっきりとしてくる。やがて、重なる、って思った。その時、


【お願い、——】


「?!!」

これは何かを決定づけるものだ。

これを守らなければならない。


『——世界を——』


そうしなければきっと、この世界はきっと終わってしまうのだ。

そう思った。


【——はじめて】

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