【第五章 ヨーア(浮龍)】
闘いのための準結晶器
「地の利は私たちにあるわ」
その言葉が出たのは俺の口、ミアの声だった。
仲間たちの視線が俺に、ミアに集中する。
「作戦を練って罠を仕掛けるの」
みんなはお互いに顔を見合わせる。俺にも表情が読めるようになった幾つかの
「素人の浅知恵でどうにかなるような武器を
そう言ったリアサターセさんの言葉は、みんなの想いを代表しているのだろう。
「でも負けると分かっていても闘うのでしょう? なら最善を尽くした方がいいと思うの」
ミアのその言葉は正論かも知れない。だけどやはり、みんな浮かない表情だ。
「例えば、……
ヴェロンズィさんが提案する。
「駄目よ。建物を崩壊させない威力なら直撃させないと
スフォーセネさんが従軍経験から答える。
「破壊できるよ」
そう言ったのはミアだった。
「
「それでは対等だろう? 互角の条件なら
リアサターセさんが苦々しく言う。
「あたしじゃ勝てる気がしないわ」
「違うの。罠で攻撃するんじゃなくて罠で有利にするの。味方が狙われ
ミアの言い分は正攻法で誰もが考えることだ。もし答えがあるのなら。だけど当然ながら、それは簡単なことではない。
「例えば廃墟になる前に使われていた通路のカメラはまだ生きているでしょう? カメラの
そしてミアは
俺は驚いていた。今、俺の意識には
ミアの
①ソポイトさんは
②カメラと通信網を積極的に活用する。通信網は網の目のように張り巡らしていて、どことどこが通信しているか特定が困難、基地も特定されない。ケーブルは加工を受けると警報を伝えるため、どこで傍受されているか把握できる。通信情報は暗号化されているけど、カメラなどの送信端末や受信端末には暗号鍵が設定されているので、端末を一つ占拠すれば暗号解読が可能、全ての通信が筒抜けになってしまう。その対策として、全てのカメラごとに個別の暗号鍵を設定する。
ミアは
気が付けば誰もが黙って聞いていた。
話はかなり長く続いた。幾人かが質問した以外はミアが一人で話し続けた。罠の設置の話の次は、
「
セサ人のギードさんが言った。
会議は終わり、次回はアリカミエさん、ムーアさん、ギャムザツさんの三人体制になった。
「プミアィエニ」
会議室を出ていこうとしたミア/俺をリアサターセさんが呼び止めた。その射抜くような視線にミア/俺は一瞬、立ちすくむ。
「いや、何でもない」
そう言って彼は視線を
部屋を出る間際、リアサターセさんの
「……もう誰も失いたくない」
「ミア、凄い凄い!」
会議室から早足で去っていくミアをリプは追い掛けながら褒め称える。ミアはそれを無視して自室へ急ぐ。
「
「ごめん」
ミアは一言だけ断ってリプを引き離し、足早に通路を掛けて自室に飛び込んだ。
もう限界だ。
「うっ、うっ」
前回の件でミアは学んだ。ミアが泣くとみんなに心配させると。だからミアはみんなの前で気丈に振舞い、感情を押し殺して説明を続けた。
でも、もう限界だ。
部屋で一人になってミアは泣いた。ミア/俺の
彼はもういない。
死んでしまった。いや、殺された。
≪どうして、どうして人は殺し合うの?≫
俺は
ミアの
誰もいない中、ミア/俺は独りで泣き続けた。
ひとしきり泣いてようやく落ち着くと、まだ
今ミアがやるべきことは彼等の死を嘆くことじゃない。
戦いに勝つことだ。
ミアは新しい
ミアは秘密の
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