第69話 黒い道化師

 心地よい風が穏やかに流れる。


 涼しげな波の音を響かせながら、潮の香りが微かに鼻を掠めていった。



「……ハックションッ!!!!……あれ?私は一体……また意識を失ってたってのか……」



 突如大きなくしゃみを上げると、いつの間にか意識を失っていたみずきはハッと目を覚ませる。


 と、飛び起きるみずきの声に、同じく気を失っていた魔法少女達もまた、次々と目を覚ませていった。



 気がつくと、彼女達の目にはどこまでも青く広がる広大な海が飛び込んできた。


 息吹の魔道結界が崩れ去った後、気がつくと、一同は見知らぬ海岸へと放り出されていたのだった。



 突然のことに混乱しながらも、みずきは状況を確認しようと辺りをキョロキョロと見渡す。


 と、少し離れた先、古びた消波ブロックがゴロゴロと並べられていたすぐ側に、黒いコートを潮風に靡かせる息吹の後ろ姿があった。



「息吹ッ!!」



 その姿を視界に捉えるや否や、みずきは息吹の元へと走り出していった。



「なっ!?みずき!ちょっと待っ……全く、いくら気持ちが舞い上がっているとはいえ、彼奴も少しは冷静になるということを覚えた方がいいんじゃなかろうか……」



 そんな彼女に続き、風菜達もまた、息吹の背中目指して足を進める。


 と、しばらく進んだところで、みずき達は息吹の影に隠れていた”あの男”の存在に気がついた。



「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……この逆境に……絶対敗れるわけにはいかないこの局面で……ま、負けたのか……この僕が……?」


「…………」



 息吹の影でガタガタと震える男……ゴッドフリートは、青ざめた表情で頭を抱えると、何かから必死で逃げ出すように繰り返し自己暗示を口にする。


 その姿を、息吹は目の前で無言のままただ見詰めていた。彼の末路から目を背けてはいけない……彼女の中で、何故かそう強く思ったからだ。



「……ししどめ……いぶ、き……獅子留……息吹ィーーーーーーッ!!!!!」



 瞬間、気を動転させるゴッドフリートは、冷めた目でこちらを見下す息吹に対し、半ばヤケクソに握り締めた拳を振り上げ、突如彼女に襲いかかった。


 息吹の名を叫ぶ荒声が、キリキリと裏返るその声が、今の彼の心情をはっきりと表していた。



 だが、そんな怒りにギラギラと燃えた瞳を光らせながら迫るゴッドフリートを前に、息吹は至って落ち着いた様子でその場から微動だにしなかった。


 殺意に満ちたゴッドフリートの拳が、寸前、目と鼻の先まで放たれる。




 刹那、ゴッドフリートの伸ばす拳よりも早く、彼の顔面には巨大な手甲が突き立てられた。



 そう、息吹の危機に真っ先に駆けつけたのは、他でもないみずきだった。


 勢い任せに飛び出したみずきの全体重を乗せた重い右ストレートに、ゴッドフリートは血を吹き散らしながらその体を後方へと吹っ飛ばしていった。


 背中が地に叩きつけられた瞬間、浜辺の砂がド派手に巻き上がった。



「……私、さっき言ったよなぁ?”絶対にあんたをぶっ飛ばす”って……!」


「あが……あがが……ッ!!!!」


「どうした、まともに喋れないくらい痛いか?……言っとくがなぁ、私達がこれまで味わってきた痛みはそんなもんじゃねぇぞ……こんな程度で息吹にしたことがチャラになるなんて、甘いことは考えるなよ……あんたには聞きたいことが山ほどある。大人しくここで捕まって貰うぜ……!」



 右手が白い煙を上げるほど強烈なみずきの一撃。それを顔面からまともに受けたゴッドフリートは、あまりの激痛に言葉を失い、ただひたすらバタバタと地面にのたうち回った。



 と、しばらくして、肩で息を吐きながら、ゴッドフリートは恐る恐る口を開く。


 喋ろうとするたび、彼の口から大量に溢れ出る血は鉄の味がした。



「ぐぐっ……ゲホッ!ゲホッ!ああぁ……惨めだ……こんな……こんな屈辱は生まれて初めてだァ……僕の完璧な作戦が……完璧な魔法が破られるなんて……そんなこと……そんなこと……あってはならないんだ……ッ!!」



 往生際の悪さを見せるゴッドフリートを目に、今度はみずきに代わり、息吹が静かに彼の前へと歩み出た。




「……いいやゴッドフリート、お前は負けたんだよ……もう、ゲームオーバーだ」




 あまりに惨めな敗北の味。


 ”ゲームオーバー”……その息吹の言葉に、地面を這うゴッドフリートはピクリと眉を動かした。


 もはやあとがなくなったゴッドフリートにとって、”敗北”の二文字が重くのしかかる。




「……ハハッ……ハハハッ……アハッ!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!」




 が、しかし、絶対絶命なこの状況で、突如ゴッドフリートは気が狂ったかように高らかな笑い声を上げ始めた。


 その明らかに異様な彼の様子に、みずき達は表情を固め、警戒を強める。



「ふふっ、ゲームオーバーか……ああ、その通りさ……終わったよ、全て……何もかもが……敗者の僕に帰る場所なんてない……だから……だからこそ……僕は、”コンティニュー”を使わせてもらう……!!」



 そう口にすると、ゴッドフリートは赤い液体の詰められた黒い注射器を取り出し、握り締める拳を天へと掲げた。



 もはや嫌というほど経験してきたこの展開に、みずきは舌を打ち、ぐっと悔しそうに歯をくいしばった。



「……いい加減にしろよ……あんた達一体何なんだ……!!食い潰すだけ食い潰して、いざ負けそうになったら捨て身で自ら命を絶つ……それがあんたら闇の誇りだっていうのなら、そんなプライド糞食らえだッ!!」


「黙れ黙れ黙れッ!!!!……もう、こうするしか道はないんだよ……!!確かにこの”シリンジ”を使えば、僕は僕であることを忘れ、ただ暴れ回ることしか能のない魔道生物と成り下がるだろう……だが、それでも構わない!!それで貴様らを地獄に叩き落とせるというのなら……僕は……僕は……!!」


「チッ……!最初から分かり合えないってことは承知の上だ……だがな!たとえ敵だろうがなんだろうが、そんなホイホイと命を投げ出すような真似を見過ごすわけにはいかねーんだよ!!私はッ!!!!」



 荒げる声と共に、ゴッドフリートは振り上げたシリンジの針を喉元まで近づける。


 その怒りすら湧いてくるような愚行を前に、みずきは彼の行動を止めようと咄嗟にその場で身を乗り出した。



 と、その瞬間、前のめりに構えるみずきを遮るようにして、彼女の目の前に息吹がさっと腕を伸ばした。



「息吹!!?なんで止める!!このままじゃ奴は……ッ!!」


「待ってくれ、みずき……大丈夫……ここはボクに……!」



 息吹のとった突然の行動に驚くと、みずきは思わず声を荒げた。


 が、その息吹のあまりに冷静な声に、彼女は少し頭を冷やし、前のめりになる姿勢を元へと戻す。


 と、興奮するみずきを一度落ち着かせた後、息吹は再びゴッドフリートの前へと立ちはだかった。



「ゴッドフリート……一体、どこまで落ちぶれば気が済むんだ……!」


「な、なんだと……!?獅子留息吹……貴様ァ、真っ先に殺されたいかッ!!?」


「殺されるのは勘弁だな……最も、変貌したドボルザークやバルキュラスでさえ勝てなかったボク達を相手に、お前が同じ手を使って勝てるとは到底思いがたいんだが……?」


「きっ……貴様ッ!!僕を……この僕を!!どこまでコケにすれば気が済むんだ!!!!」


「別に侮辱してるわけじゃない……事実を言ったまでだ。……ゴッドフリート、お前の本性はとても臆病で、とても慎重な男だ。何度も相見えていればすぐにわかることだ……だからこそ、本当はもうとっくに気がついているんだろ?……そんなことをしたところで魔法少女は倒せない……お前が今やろうとしていることの無意味さを……お前自身が一番理解しているはずだ!!」


「ぐぐっ……!!」



 まるで全てを見透かしたような息吹の瞳に、ゴッドフリートは徐々に翻弄されていった。


 彼女の放つ言葉の重みに、シリンジを握り締めた手が激しく震え、全身から冷たい汗が流れ出す。


 視線を逸らすことなく、じっと鋭い目を向けたまま近づく息吹の圧倒的威圧感に、ゴッドフリートは肉体的・精神的にじりじりと追い詰められていった。



「ゴッドフリート、よく考えるんだ……お前が大人しくそちら側の情報を提供するというのなら、ボクらはあんたを保護しよう……が、一つ勘違いのないよう伝えておくと、既に一人、情報を聞き出す対象としてこちらはバルキュラスを拘束している。つまり、ボク達にはお前を”絶対に生かさなければならない”といったような使命はない……故に最悪の場合、ボク達は蝶々なくお前を倒せるということを忘れるな……!!」


「バルキュラス……そうか、やはり生きていたのか……だが……!!」


「ボクら魔法少女はお前達を絶対に許さない……あんたには罪を償う義務がある!さあ選べ……生きるか、死ぬか……自分の運命を、自分自身で切り開いてみせろよ!!」



 迫り来る脅威に、全身から汗が吹き出る。


 と、そのあまりのプレッシャーに硬直するゴッドフリートに、息吹は素早くハンドガンを抜き取り、その銃口を彼の額に突き付けた。


 耳元でカチカチとセイフティレバーの外れる音が響く。不意に見た息吹の瞳には、酷く怯えた自身の姿が反射して映っていた。



 やがて、内側から込み上げてくる恐怖心に煽られて、ゴッドフリートは息を荒げながら恐るべき薬品”シリンジ”を地面へ落とし、その場で膝から崩れ落ちていった。



「……わかっていたさ……所詮僕の力じゃ、君達魔法少女には敵わないってことくらい……だが、もうこうするしかなかったんだよ!!僕達の”運命”は閉ざされた……後にも先にも、待っているのは残酷なものばかり!!ならいっそ……そう思ってここへ来たはずだったのに……なのに、今は体が全く言うことを聞かない……ああ……くそぉ……ちくしょおおおおーーーッ!!!!!」



 吐き捨てるように放つ言葉と共に、自分でも訳のわからないほど涙が溢れ出た。


 目に涙を浮かべながら砂浜に両手を付くそんなゴッドフリートの背中に、敵ながら魔法少女達はどこか胸を痛めていた。



「……ゴッドフリート、覚えていないかもしれないが、かつてお前は”自分のモットーは雲のように自由に、自身のためだけに生きること”だと語っていた……けど、それが今は必死で死に場所を探している……酷い話だ……」



 響き渡るゴッドフリートの悲痛な声に、そして息吹の返す言葉に、ざわざわと風が靡く。



 そんな二人のやり取りを、一歩後ろでみずき達は固唾を呑んで見守っていた。


 波の音だけが聞こえる長い静寂が続く。




 と、その時、突如騒つく波の揺れに、辺りには不穏な空気が流れた。




「……はぁ〜、なんだよシラケるなぁ……これじゃ全く面白くないじゃないか……そうあんたも思うだろぉ?ゴッドフリート……!」




 背後から聞こえてくるねっとりとした話し声に、ゴッドフリートは咄嗟に後ろを振り返る。



「なっ……ナイト……アンダー……!?」


「やあ、きちゃった☆」



 ゴッドフリートが振り返った先、そこには、黒いパーカーを靡かせながらこちらに歩み寄って来る青年、ナイトアンダーの姿があった。



 と、軽快な言葉で近づくナイトアンダーに、風菜はハッとその顔を思い出す。



「お主は、あの時車庫にいた……!!?」


「おっと、これはこれは風菜ちゃん!ご無沙汰してるよ!いや〜、覚えてくれていたとは嬉しいなぁ!」



 その青年を見るや否や、突如噛みつくようにして前へと出る風菜に、みずきは困惑した様子を浮かべながら彼女の肩を掴んだ。



「風菜……あの男を知ってるのか?」


「……ああ、見ての通り、彼奴もまた闇の使者の一人じゃ。以前一度だけ話したことがあるが、何とも胸糞の悪い奴じゃったわい……!!」


「”ナイトアンダー”って呼ばれてたけど、あの人、なんだか凄く不気味……」


「……沙耶の言う通り、確かにワタクシもあの男からは只ならぬ邪悪さを感じますわ……!!」



 新たなる強敵の出現に動揺を見せる魔法少女達。


 そんな彼女達の表情を見詰めると、ナイトアンダーはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。



「お褒めに預かり光栄だなぁ!俺の名はナイトアンダー……”監視者”として、これまで君達のことはずーっと見させて貰っていたが……いやぁ、実に面白いかったよ!」


「”監視者”……?それに、ずっと私達を見ていって……」


「……まあ、この辺がちょうどいい頃合いだぁな……今回、俺の目的は他ならぬ君達にあるんだ。焦らずともちゃんと教えてやるから安心しなって、サムライガール!」



 そうはぐらかすと、ナイトアンダーは沙耶の投げかけた問いを涼しい顔でさらりとかわしていった。


 だが、そんな軽い言葉使いとは裏腹に、彼の全身から滲み出る邪悪な気配に、沙耶は思わず息を飲んだ。



 いや、沙耶だけではない。


 この場にいる全員が、目の前に立つ男の只ならぬオーラに、その強さに勘付いていた。



「……ただ、君達とお話ししたいのは山々なんだが……まずはその前に、この舞台に相応しくない”邪魔者”を先に排除してしまうとしよう」



 と、先程までとは一転、冷たい表情を浮かべるナイトアンダーの視線の先には、地面にへばりつくゴッドフリートの姿があった。


 ゆっくりと近づく彼の存在に、ゴッドフリートは息を荒げた。



「あーあ……せっかく人が親切でくれてやった”シリンジ”を無駄にしやがって……俺はさ、実は魔法少女達の使う”アルティメットV”って技が大好きだったりするわけですよ……それは何故か!答えは簡単!あれ見るたびに、それで殺されちまったニコラグーンの間抜け面を思い出して笑えてくるからだよ!!……だから、今回も見れるんじゃないかって期待してたのにさぁ……本当につまんない奴だよな、お前」



 無様に地に手を付くゴッドフリートを散々貶し倒していたその時、あろうことか、ナイトアンダーは姿勢を低くするゴッドフリートの頭を踏みつけ、ぐりぐりその頭部に靴を擦り付けたのであった。



 直後、ナイトアンダーのそのあまりの侮辱に、ゴッドフリートは頭を吹っ切らせ、彼の足を力強く振り払った。



「その汚い足を離せ……ッ!!もうたくさんだ……僕達はモルモットでもなければ、お前の娯楽を満たすオモチャでもない……!!ナイトアンダー……貴様のようなクズ野郎は存在していてはいけない……誰かが……僕が……神の名を持つこの俺がァ……!!殺さなきゃいけないんだアアアアアアアアアーーーーーッ!!!!!!!」



 目を真っ赤にギラつかせるゴッドフリートは、怒りに身を任せ、まるで獣の如く目の前のナイトアンダーに飛び掛かっていった。



 瞬間、ナイトアンダーは呆れたようにため息を吐くと、ゆっくりとその口を開いた。




「はぁ……まあ、所詮は模造品、この程度だろうよ……ぶっちゃけさ、お前もういらないから……だから……さっさと死んじゃえ!」




 ”死んじゃえ”……そうナイトアンダーが口にした刹那、突如、勢い任せに飛び込んだはずのゴッドフリートの体が宙でぴたりと動きを止めた。


 その強烈なまでの違和感に、ゴッドフリートは大量の汗を浮かべながら恐る恐る後ろを振り返った。



 次の瞬間、そこには腐った人間の手が、自身の体を押さえつける光景が広がっていた。



「…………っっ!!!!」



 まるで毒ガスのような煙を噴き上がらせながら、邪悪な空間の中からウジャウジャと湧き出る大量の手に、ゴッドフリートは声にならない悲鳴を上げた。


 その場から脱出しようと必死にもがくも、大量に伸ばされた手はゴッドフリートの四肢に、顔に、全身にしがみつき、ズルズルと彼を真っ暗な”暗黒の世界”へと引き摺り込んでいった。




「うっ……うわアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーッ!!!!やだ……いやだァ……死にたくないッ!!これでは……僕は……一体何のために……!!ナイトアンダー……貴様ァ、こんなこと……絶対に許さん……!!殺してやる……殺してやるウッ!!……ああっ……やめろォ……やめてくれええええーーーーーッ!!!!死ぬのはいやだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」




 風の音も、波の音も、全てを飲み込む断末魔が響く。


 小高い金切り声を上げるゴッドフリートを前に、魔法少女達は口を開け、その光景をただ唖然と見続けていた。



 やがて、悲痛の叫びを上げながら、ゴッドフリートは真っ暗な闇の中へと消えていった。



 突然に訪れた不気味なまでの静けさに、みずき達はその圧倒的虚無感に胸が駆り立てられるのを感じた。



「……なんで……仲間じゃなかったのかよ……!!」


「……へぇ、君には俺と奴がそういう風に見えていたのかい?」


「……っ!テメェ!!」



 あまりに非道なナイトアンダーのやり方に怒りを覚えたみずきは、鋭い目つきを浮かべながら彼の前へと出た。


 すると、みずきに続き、他の少女達もまた同じように険しい表情を浮かべると、敵意を剥き出しに、彼女の横に立ち並んでいった。



「そういつもいつも一人で突っ込もうとするでないわ、みずきよ!……お主が此奴を許せないと思うのなら、そらはアッシらもまた同じ気持ちじゃ……!!」


「ああ……風菜の言う通り、ボクも同じだ。ゴッドフリートがやられた時……正直、敵ながらどうにも胸糞が悪くなってしまってね……!!」


「あの男……ナイトアンダーからは底知れない力を感じる……けど、今は……やるしかないよ……!!」


「元より新たな強敵の出現など覚悟の上ですわ……それに、こんな”化け物”をいつまでも野放しにしておくわけにはいきませんもの!さあ、行きますわよ!みずき!!」


「みんな……ああ、そうだな!!やってやるさ……必ず!!」



 一致団結する少女達の姿に、ナイトアンダーはクスクスと肩を揺らすと、彼女達にニヤリと不敵な笑みを浮かべて見せた。



「フッ……アハハ!なるほどなるほど、俺もまた随分と嫌われたものだなぁ……まあいいさ、元よりこちらもそのつもりで来たわけだし……ようやく”女王”から君達魔法少女との接触が許されたんだ……楽しまなくちゃ勿体ないよねぇ!」



 不気味に瞳を輝かせながらそう口にすると、ナイトアンダーは被っていたフードをゆっくりと脱いだ。


 フードの下に隠れていた金色に輝く髪が、バサリと風に靡く。




「さあ、早く俺と遊ぼうぜェ……!!」




 彼の放つ邪悪な気配に、空は赤黒い奇妙な色に包まれていった。






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