Chapter12

 翌朝、初めて三人揃って宇宙船を降りた。

 三年ぶりの景色に懐かしさを感じる暇もなく、リアンは内心ひやひやしていた。というのも、手を繋いだ二人が今にも転びそうな勢いで前方を駆けているからだ。

 カラフルな住宅地を通り抜けて街の土産物屋を回っていると、地元の人からよく声をかけられる。しかしキアロは、声をかけられる度にステラの袖を引いて固まっていた。

 それを不思議に思ったリアンが理由を尋ねると、黙り込んでしまったキアロの代わりに笑顔のステラが答える。

「前にも話したと思うけれど。キアロはね、びっくりするくらい人見知りなのよ」

 彼女の話から判断するに、出会い頭に青年が攻撃されたのも、どうやらその極度の人見知りが為せる業だったようだ。

「なんだよー。かわいいところあるじゃん」

 肘で小突いてくるリアンを、キアロが不服そうに睨んでいたときだった。

「発見。高性能アンドロイド」

 一台の白いロボットがキアロの前で止まり、機械音声で話しかけてくる。

「何か用かしら?」

 隣にいたステラが会話に応じると、ロボットは嬉々として話し始めた。

「ワタシのご主人様は、高性能のアンドロイドを求めています。どうか、そのアンドロイドをワタシに売ってください。お金はいくらでも出します」

 すっかり困り果ててしまった少女を見かねて、リアンが割って入った。

「悪いね。あいにく、俺は人様に売るためにこのアンドロイドを作ったわけじゃないんだ。どんなに大金を積まれても、譲る気はないね」

 ステラも青年の力を借りて言葉を返す。

「ごめんね。彼は私の大切な家族だから、あげるわけにはいかないの」

 それでも一歩も譲らないロボットと睨み合っていると、地元民らしき女性がロボットをホウキで追い払ってくれた。

 二人が礼を言うと、女性は朗らかに笑った。

「いいのよ。あのロボットには、私たちも悩まされているんだから」

 詳しく話を聞いてみると、先程のロボットは街の中心部に住む富豪の使者らしい。富豪は街で一番のロボットコレクターで、新しいロボットが欲しくなるといつも使者を送って街中を物色させるという。

「お話、ありがとうございました」

「気をつけてね。なにか困ったことがあったら、街の人に頼っていいのよ」

 女性と別れた後、リアンはキアロに非難の目を向けた。

「お前さ。ステラを困らせたくなかったら、怪しいやつに絡まれたときくらい何か言えよ」

 しかしキアロは一瞬リアンに視線を向けただけで、無言のまま俯いてしまう。

 普段と異なる反応に違和感を抱いた青年だったが、そのときは特に気にも留めずにやり過ごしてしまった。

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