Chapter10
そして、地獄のような五日間が始まった。
五日の間、リアンはほとんど宇宙船に帰ってこなかった。ステラとキアロが彼の姿を見るのは、ステラのために食事を用意してくれる三食の時間と、日付が変わってからキアロの部屋に帰り、泥のように眠る小一時間だけだった。
リアンの顔色は日に日に病人か死人のように青ざめていき、寝ても覚めても難しいプログラムのことを呟いていた。
だから最終日の夕食時、彼が棺桶にも見える大きな木箱を運んできたときには、常に彼を気にかけていたステラは言うまでもなく、体温がないはずのキアロさえ背筋が凍るような感覚を覚えたのである。
「仕事、終わったよ」
焦点の合わない瞳で、リアンはステラに微笑みかける。言葉の出ない彼女に代わり、キアロが極めて冷静に対処した。
「リアン、その箱は?」
「中にロボットが。危ないものじゃないから、一晩だけここに置かせてくれ」
そう言っておぼつかない足取りで夕食の準備に取りかかろうとしたリアンを、ステラが止めた。
「今夜は作らなくていいのよ」
理解が追いつかず固まっている青年の前に、美味しそうな日本食が並べられた。
「アツシの奥さんがね、リアンも無理しているみたいだから、って作ってくれたのよ」
それらを眺めてリアンは、ああ、と声を出す。並んでいる料理には、豚肉やトマトをはじめとした疲労回復に効果のある食材が多く入っていたのだ。
「今度会ったら、お礼を言わなきゃな」
リアンは一つ一つの料理を噛みしめて、時々何かを考え込みながらゆっくりと味わっていた。
夕食を終えると、ステラはキアロが調べた疲労回復法をいくつか実践していった。遠慮するリアンを温泉に連れていったり、ストレスを軽減する呼吸法を試させたり、街の景色を眺めながら一緒にウォーキングをしたり、マッサージをしてあげたり、緊張をほぐすストレッチをさせたり。
そして最後に、キアロが見守る部屋で早い時間に寝かせた。
「明日までに回復するかしら?」
ステラはリアンの寝顔を心配そうに見つめながら言う。
「明日まで、ですか?」
キアロはまだ何も気付いていない様子で、首を傾げていた。それを見ていたステラは、楽しそうに微笑む。
「明日になればわかるわ」
こうして、火曜日の夜は過ぎていった。
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