ざわつく十五日目の朝

学が朝起きてTwitterを見ると「三戸里市」がTwitterで話題になっている言葉のランキングであるトレンドの一位になっていた。学は嫌な予感を感じてすぐにTwitterを三戸里市で検索する。


ひろこ

なんだかパトカーが走り回って超うるさい。ぜんぜん眠れないよ


ユウナ

外が騒がしくて起きたら、変な人達がうちの前の道に雪を撒き散らしているんだけど。二階の窓から見ているから目をつけられることはないと思うけど、怖いよー


はるなママ

外で誰かが何かしているみたい。気になるけど、うかつに見に行って騒ぎに巻き込まれたら怖いし。ホントここ最近の三戸里市サイテー。早く、引っ越したい(涙)


koji

俺んちの親父が外を見に行ったら、いきなり変な奴等が襲いかかって来たらしい。幸い親父はすぐ家の中に入って鍵をかけたから大丈夫だったけど、本当にどうなっているんだよ、この市は!!


hiroshi

三戸里市でまた祭りをやってるらしい。あの変な市長といい三戸里市の奴等って、ホント頭おかしいぜ


カズヤ

外で変な奴等が暴れ回っているらしい。本当に三戸里市は呪われているぜ。冗談じゃなくて真面目にお祓いしないとヤバいんじゃねえの


mituru

冗談じゃなくてマジで三戸里市、無法地帯。犯罪者天国。いつ何が起こるかわからないサイコーの場所だぜえ、ヒャッハー!!


Hatuse

三戸里市ー、今までダサくて目立たないって言ってごめんよー。あやまるからもう普通の市に戻ってくれよー。毎日、毎日、三戸里市のことが新聞に載っていて辛いんだよー


SAYAKA

フォロワーのみんなが心配してくれて本当に嬉しいです。ありがとうございます。私の周りでは事件はないんだけど、パトカーがどこでも頻繁に走りまわっているし、知っている場所で次々に事件が起こるから落ち着きません。早く犯人が捕まって元の平和な生活に戻りたいです


susumu

今日も三戸里市、記録更新。前も言ったけど、今回の素晴らしい事件に敬意を表してもう一度言っとくよ。三戸里市、始まったな


kensuke

三戸里市がまたしてもやってくれた。今回は連続雪作り事件。良いよな。俺も三戸里市に住んで住民が毎日ヒャッハーしているところを見たいぜ


三戸里市広報

昨夜三戸里市の路上で、人工造雪機を使って雪を作っている集団が複数現れたそうです。なお、彼らに注意しようとした人が襲われる事件が多数起きているので、彼らを見かけても絶対に近づかず、すぐさま警察に通報してください。


itaru

たった今ニュースでやってたけど、外で雪を作って積もらせた奴が捕まったってよ。超だせえ。


kitada

SATOSHI

犯人確保!!


yoshito

なんだよお前ら俺に内緒でこんな楽しいことするなよ。おかげで寝ちまっていただろうが!!


このようにTwitterをたどると、以前の事件と同じく心配の声と面白がる声が入り交じっている。学は居ても経ってもいられなくなり、大学に行く予定を変更して朝霞台探偵事務所に向かう。


「おや、どうしたんだい。予定よりだいぶ早く来たようだけど」


事務室のドアを開けた学は、事務用机の前の椅子に座りテレビのニュースを見ていた時哉に話しかけられた。


「あんな大事件が起こったのに、講義なんて聞いている気分になれませんよ」


「学君。面接のときに言ったよね。大学生が一番にやるべきことは勉強だと」


「そ、それは」


「君はお金の心配なく大学に通える今のありがたい環境を無駄にしてはいけない。それに」ここで時哉はしゅんとしている学に笑いかける。


「事件はここじゃなくて、大学で起きているようだからね」


「えっ、それって、どういう」


学が問いかけると、時哉は黙って黒いリモコンを手に取りDVDデッキを操作する。ただちに画面は切り替わり、別のニュース番組が写し出される。


「先程入った情報です。三戸里市で人工造雪機で雪を撒き、それを邪魔する人間に暴行を加えていた集団の内、二人が東京都多摩市の路上で殺人容疑で緊急逮捕されました」


「その二人の内、三トントラックを運転していたのは、大手運送会社の契約社員、村川一之介、七十五歳、トラックに同乗していたのは斉果大学の二年生橋本圭吾、二十歳です。二人は三戸里市の路上に雪を撒いていたことは認めましたが、殺人容疑については今のところ否認しているようです」


その短いニュースを聞き、完全に理解したとき、地面が揺れたような気がして学は思わずひざまずく。斉果大学には斉果県全域及び近県から学生が来ている。当然三戸里市から来ている学生が多くいることもわかっていた。しかしまさか犯人が斉果大学に通っている学生であるとは思いもしなかった。


「俺、行ってきます」


学は時哉に挨拶すると、斉果大学へと急ぐ。



























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