第2話 薄荷さんという人


 二 薄荷ハッカさんと言う人


イルミネーション、第八芸術。


「ヨーロッパサンド一つと、ロシアンロール一つ。

スイス焼きもお願いします。」


「丸パン9つ。」


「シュリンプ揚げ売り切れね。」


「丸パンを9つ。」「はい、9つ。」


「スイス焼きはー?」


「あ、9つ。」


ここのつ組みである。9つ買うつもりなどは無かったが、9つが響き合う列に挟まれると、皆9つ持ち帰る。電飾の点滅速度が横断歩道を急いで渡らせるのは、美味しい優渥だと、月に八。

九度の来店をする。

日に三度は焦点が合わなく、混雑した鶏舎のヒヨコが虫を捕らえ始めればアウタルキーと8つに減石、気付かずもまわり燈籠を頭から被り、走馬を追い駆けるのだ。

9つの丸パンに鶏の皮、炭焼きチーズが溶けた頃、ソーダトリスに沈み魚。レタスを浮かべ蹌蹌踉踉ソウソウロウロウ、かまきりのおのを振りと、プレーヤーを回す。




薄荷ハッカさん、郵便受けに入らずと、門柱横のスミレに、封筒ありましたが、お宛名は薄荷さん、で間違い無く、差出人が、これは、ピタゴラせん堂、とありますが、トンボにmaison bannierの旗のスタンプ、昔の貴族階級かなんかですかね。

ちと樟脳匂いませんかなと。薄荷さん宛てで、間違い無いですから、取り敢えずお渡ししましたよ。」


処方箋とまでは思わせぬが、大型の白い角封筒に紺色の印字と仰仰しい旗のスタンプ、思い当たる節、は無いが、野鼠ヤソの番人閑居したる我が日毎にアネモネの花を贈ったかと、疑心暗鬼になりつつも、集金で立ち寄った矢大ヤダイ酒店の山気ヤマケ氏から封筒を受け取った。


午後三時半を過ぎた頃には、遊歩道で咲開いたローズゼラニウムも、搭状雲を伏し目に見上げ、我に安住の土を見地するか、否か。


旧街道交差点に建つ矢大酒店は、古くから人の賑わう大酒屋で、空瓶を持ち寄れば、殆どの酒を量り売りするというせっかい酒屋である。


店内でも酒が飲めるコの字カウンター。蛇口金具が二升瓶。

おかみの白粉顔並びに造り酒屋へ悪童盗人、座り込んだら、チョチョイのおひねり、お勘定と一杯ひっかけ二杯目は、百円ライターノベルティ。

グラスにサインを残して帰った客もいるなど、リピーターの多い店である。

戻りついでに、常連は、やれスイス産グリュイエールチーズだ、ロシアのキャビアだと、アルミホイルにベルギーチョコ、ドンペリのボトルキープと、矢大酒店に購入させる始末である。


自由競争、自由狂想曲。

甘い蜜を探すのか?

甘い蜜を創るのか?


愛され大酒屋の山気氏もなかなかの美食家で、今では「モワティエ・モワティエ」と白ワインにお好みのチーズをブレンドし、自家製スイスフォンデュ、ラクレットと、チーズ帳を記入し、客が外国に旅立つのを聞くと、産地のチーズを頼み願っていた。


ハモンドオルガン、自作スピーカーと、MIDIキーボードにPCの電源を入れ、我が音飯独話オトメシドクワとトレモロを弾き、その一日を編む。

山気氏から受け取った封筒の中には、


「ソーダファウンテン・サボブレス映画会。」


『夢想はすべて虚妄なりと、ウグイを釣れば』


キャラメル色の、オイルシートに、映画案内。

その店は、矢大酒店へ向かう途中、通りに面した時計草のからまる二階建物の中にあり、隠れていたのか、9年間近づいた事など無かった。


石造りの古ビル街に、3ケタの数字を合わせるのであれば、それは、番地以外には、当てはまらず、木扉と木箱が印すのだ。


無作為に送りつけ、時に宛名さえも記入されず、有り余る伝達手段は集積所の失われた願望だと、ほぼ世の人々は猜疑心サイギシンを抱くだろう。


呼び込みメロディ-のソナグラフに、感情指数は現るのか。

周波数のウラ側は、言葉の無い世界。冷めた音だと、耳を塞ぐ。


銅臭を漂わせようものならば、険しいクガチで砂風を浴び、テンポマグネットの交差ミストと、形状記憶のヨタヨタ産業テロリズムなのだ。


イギリス産ブルーチーズの青カビに、左顔面をくしゃりと困惑させ、涙ぐみながらも、

「モナリザは一つだけ、ピカソはピカソ」と、青く見えるのは簡単な事。

青く思うのも単純で、青は与えられている。などと、名調子を繰り返し、チーズ通を唸らせた矢大酒店の冒険家、山気氏から届けられた一通は、見えない必要性、構わない形の期待、気体なのかと 、私のブックスタンドに挟み込んだ。


酋長多しと、楽しくも、

その地、多国と美国を知らずして。


半世紀の研究と平和な暮らしは、比例配分されているのだろうか。


疑問を持たない長寿大国ならではか、雲上人が香車を抑え、物品の評価を売る以前に定めていたならば、粉屋の泥棒と流通管理が、ストッパーズ。


欲しがる者、売りたがる者、音を並べる創造者の意識は、雲集に届くのか。


鳴り響く工事現場の騒音を、打ち消しと音を創るも、独自楽曲の騒音は、現場に埋る。


権力からの離脱と、満腹係数。

新国の誕生と、独自ルールで、丸パンを配り、生き残りをかけ創造者を増やすのだ。

パリティ計算雨あられ。安売り卵と大盛り飯で、自分がエサになる日も遠くは無い。


隈隈クマグマしくも、高々と


険しい草原に咲くすみれをけみす


地場冷蔵、地表スケーター


縮かむも、恐れずと


受け入れた虫を楚楚と捕らえれば


大望のつぼみつき


地上を思えば


柄にもなく、香りを贈る


柄・大柄虫取りすみれ


         薄荷匠太郎ハッカショウタロウ



怒らずと、創造は無い。民衆の意識不足と金持ちモスキートが同等で、誰も怒る者などいないのだ。


矢大酒店のカウンターに腰掛け、舎人トネリがキャビアを注文と、ならば、牛ヒレを軽くあぶり、フォアグラにワサビ醤油とダッキング。


私がSlurと滑らかに、その舎人に音を聞かせ、牛舎が動き出そうものならば、貧しくも、エンゲル氏よりは独自満腹係数と遥かに幸福論を唱えられる。


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