第22話 タイムリミット

宝玉と言われて普通何をイメージするだろう…。

そう、龍が持っているあの珠の事だね。

今僕が上っているこのクソ長い坂の終着地点にその龍がいる。


信じられない話だけどこの星の中心には龍がいて…その龍がこの星のエネルギーバランスを司っている。

今見えないちゃんたち隠れ里の守り人が一生懸命取り組んでいるあの作業はこの龍の仕事のサポートと言う事になるね。

だからこそムー系の東洋の龍は神の使いでありアトランティス系の西洋の竜は悪の化身として扱われている訳。

同じ存在でもその捉え方で180°見え方が変わってしまうんだ。


そんなとても偉大な存在に今僕は一人で向かっている。

龍にとってその宝玉はとても大切なシロモノだ。

果たして一介のそこらの人間の僕に龍は宝を渡してくれるだろうか…。

でもここまで来たんだからやるしかない…見えないちゃんが出来もしない事を僕に頼むはずがない…はず…。


しかし長い…ひたすら長い…。

まるでこの坂を登る事自体がひとつの試練になっているみたいだ…。

って言うかこの坂自体が龍の身体そのものだったりして…まさかね…。



そして僕がこの坂を上っている間にシャンバラでは刻一刻と危機が迫っていた。

話を少し前に戻して見てみよう。


制御塔の前で激しい戦闘を繰り広げるディーナとライアン。

二人共通常兵器を使った戦闘はもうしていない。


「はぁぁぁーっ!」


ズズーゥン!


ス…ッ


エネルギー弾がライアンの頬をかすめる。


「昔から避けるのは得意だったんだよねぇ」


そう、この戦い、基本ライアンは避けてしかいない。

相手の力を出し尽くさせた後で必要最低限の力で仕留めるのがライアンの戦法だった。


「知ってるでしょォ…私の力の源ォ…空間の霊力から力を引き出せるゥ…この地はエネルギーの宝庫、私に弾切れはないわよォ…」


相手をするディーナも歴戦の戦士、ライアンの作戦も今のところ効果は薄い様子…。


「いいや、生きていれば腹は減るでしょ…持久戦なら負けないよ」


対するライアンも強気で答える。

この戦いは持久戦になるようにも見えた。


「えェ…?あなたァ…持久戦に持ち込みたいのォ…無駄よォ…それェ…」


ディーナはそう言ってニヤリと笑う。

その笑みには何か深い意味が隠されているような気がした。

こう言う時の悪い予感は当たるもの。

ライアンは彼女にその真意を問い質す…。


「何を狙っている?」


「諜報部にいた割に鈍いねェ…私がここに来るのにィ…この程度の準備だと思ってェ?」


「…まさか!」


ライアンはディーナのこの言葉にピンと来た。

それはまさに最悪の事態をも想定するものだった。


「そ、大型ゲートの開発に成功したのよォ…後1時間もすればここに大部隊がやってくるわよォ…」


シャンバラは普段は誰も入れないように空間を閉じている。

その空間を繋げて地上からの出入りを可能にするのがゲートと呼ばれる施設。


シャンバラの存在を知った各国機関はその高度な技術を取り込もうと新しいゲートの開発を進めていた。

今までのゲートは個人用で耐性を持つ極少数の人員しか転送出来なかった。

それを簡単に大部隊も転送出来るようにと開発が進められていたのが大型ゲート。

各国の研究機関が以前から競うように開発していたのだが…それが完成していたらしい…。

ライアンは世界各国のゲートの試作機などを破壊して回っていたのだが…それの何処かに漏れがあったのだ…。


「まいったね…これはオレのミスだわ…」


ディーナの話を聞いたライアンは自嘲気味に笑った。


地上より進んだシャンバラの技術はどこの国だって喉から手が出るほど欲しがっている。

彼女はその得意の話術と洗脳能力で各国の秘密組織を動かして来たのだ。

シャンバラの技術が悪用されればやがてはこの星の崩壊にも繋がりかねない…。


「いくらあなたでもォ…軍のエリートの大部隊を相手にィ…どれほど持つかしらァ…」


(タイムリミットは後1時間か…トッシー、どうかそれまでに戻って来てくれ!)


「勿論部隊が着く前にィ…私があなたを倒すのもォ…アリだけどねェ…」


そう言ってディーナはまた腕にエネルギーを溜めるのだった。

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