第20話 最後の頼み事
うーん
うーん…うーん…。
空をうどんが泳いで行く…。
あはは~うどんうどん~♪
僕はうどんを手に入れてガンガンかっこむ…。
1杯食べてはまた1杯、わんこそばのようにうどんの流れが止まらない…。
「う~ん…もう食べられないよう…」
おおう…リアルでこんな寝言言っちゃったぜ…。
…寝てるから意識はないけど。
ん?
僕はゆっくり薄目を開けた。
倒れた場所はシャンバラの大地…のはずだよな。
シャンバラの大地ってこんなに柔らかかったっけ?
「ん?目が覚めた?」
その声はなんと見えないちゃんだった。
え?何これ一体どう言う事?
「でも面白~い♪本当にあんな寝言言う人っているんだ」
え?寝言?何の事?
こ、ここはどこ?
意識が段々はっきりしてくる…。
シャンバラの大地で倒れこんだはずの僕はどこかの部屋のベッドで寝ていた。
そしてその僕の側には見えないちゃんがいた。
ぐう~
(あうっ!)
心が落ち着いたところで僕のお腹が鳴った。鳴ってしまった。
うう~恥ずかしぃー。
そう言えばお腹が空いて倒れたんだった。思い出したよ…。
「ふふふ、かなりの力を使ったのね~、アレお腹空くもんね」
見えないちゃんはそう言って前もって用意していたらしい温かいスープを僕に差し出した。
まるでそれはこうなる事が最初から分かっていたみたいに…。
僕はその匂いに完全覚醒して起き上がった。
ガバッ!
「これっ!食べていいの?」
「た~んとおあがり♪」
色々聞きたい事もあったけどまずは腹ごしらえだった。
出されたスープを手に取って僕は怒涛の勢いで食べ始めた。
うまい(;;)うまい(;;)
空腹ってやっぱり最高の調味料だねっ!
さっきの夢みたいに僕はどんどんスープをおかわりして空っぽの胃袋を満たしていった。
「美味しかった~」
「どう?落ち着いた?」
そう言った見えないちゃんは頑張った子供を褒めるお母さんの顔をしていた。
その慈愛に満ちた顔に思わず僕はドキッとしてしまった。
…いや、違うから!僕ロリコンじゃないからっ!
でも彼女、本当の年齢的にはロリじゃないんだよな…(汗)。
「でもどうして?」
「呼び戻したんだよ」
呼び戻す?!見えないちゃんってそんな事も出来たんだ!
それってゲームでモンスターを召喚するような感じなんだろうか?
うーん、見えないちゃんにはまだまだ謎が多いな…。
「でもここもあの建物の中なの?こんな部屋もあったんだ」
「そりゃ大きな施設なら医務室とか休憩室はあって当然でしょ」
この建物…そう言えばまだ祭壇っぽい制御室のあの場所しか知らなかった。
そうか…こんな部屋もあったんだ。
未知の先史文明の建物と言う割にこの部屋はまるで現代の部屋とそんなにデザインは変わらない気がした。
どうにか他の部屋も見る事は出来ないかな?
心に余裕の出来た僕はそんな事も考えられるくらいになっていた。
「あ、そうだ!みんな無事だった?」
「見て分かんない?」
見えないちゃんはそう言って自分達の健在ぶりをアピールした。
無事でなかったらこうして落ち着いて僕の世話なんて出来ていない…か。
しかしどうやってあのピンチを回避したんだろう…。
「えっ?あ、でも誰が対応したの?ディーナだって…」
「んっ!」
この質門に見えないちゃんは顎を動かして窓の外を見るように僕を促した。
その指示に従って僕がこの部屋の窓の外を見ると…ディーナとライアンが戦っていた。
「あ…」
僕はライアンを疑ってしまった事を反省していた。
何だ…やっぱりライアンは僕達の味方じゃないか。
ディーナ…やっぱり僕を混乱させる為に…。
一応この場が助かった疑問はこれで解消した。
安心したところで僕はここに来てから思っていた疑問をつい口に出してしまっていた。
「でもおかしいよね…ここがシャンバラだとして…住人が誰も見当たらないだなんて…」
「住人いるよ、ここに…」
「?」
見えないちゃんはその質門に謎掛けのような言葉で返して来た。
住人って僕らさっきここに来たばかりじゃないか…。
この見えないちゃんの返事の真意に僕はすぐには気付けないでいた。
「だから、隠れ里ってシャンバラなんだよ」
「…マジで?」
な、なんですとー!
いきなりの見えないちゃんのこのカミングアウトに僕はすぐには理解が追い付かないでいた。
でもそう考えると色々納得出来る部分もあった。
「えっ、でも…村の流通品とか日本のものだったよ…」
「隠れ里は日本の古代から続く組織公認だから色々力を貸してもらっているの」
うーん…そうだったのか…。
こう言う話題はあんまり知り過ぎるとヤバイ分野だな…ここはこれ以上突っ込まないでおこう。
後、もうひとつの疑問は…。
「後、隠れ里って夕日が落ちてたんだけど…確かシャンバラの太陽って人工太陽だったよね」
「あれはホログラム…村は地上と次元の壁を通じて繋がっているからその感覚を忘れないようにする為のものよ」
あの村を隔てる次元の壁は…そう言う事だったんだ…。
隠れ里の景色はシャンバラの景色だったんだ。
隠れ里は最初から日本じゃなかった。
つまり隠れ里の人たちはシャンバラ人?だったんだ…。
これで見えないちゃんの能力の秘密も何となく納得出来る気がした。
「シャンバラの人だったからあんな能力が使えるんだ」
「そして君にもその血が流れてるって事…」
見えないちゃんの話によればシャンバラを出て地上に現れた一族がいてその一族の末裔の一人が僕だと言う事らしい。
僕は…僕の一族はそんな由緒正しい家柄だったのか…。
「って言うか時代が下って血は広がっているんで大まかにいえば日本人全体がその血を引いているんだけど」
何だそりゃ…喜んで損した(汗)。
「じゃあディーナとかは?後ライアンも…」
「彼女も大元を辿れば同じ系譜に辿り着くけど…流れが違うの…言うなればムーとアトランティス」
ムーとアトランティス!シャンバラが実在した以上これらの古代文明もきっと本当の事なんだろうな。
数々の都市伝説の点と点が線で繋がる…知的好奇心が満たされて行く…。
僕は見えないちゃんの話をただ興奮して聞くばかりになっていた。
「隠れ里はムー系…彼女の所属するイルミナティはアトランティス系…世界の運営方法で意見は別れたの」
なるほど…何となく話が見えて来たぞ。
世界を守ろうとするムー系隠れ里と世界を我が物にしようとするアトランティス系イルミナティとの対立か。
それ系の話はネットや本とかでいくつか目にしたけど…笑い事じゃなくなって来た…当事者になっちゃったからなぁ。
「ライアンもね、アトランティス→イルミナティの系譜の一員だったけど私達の考えに同意してくれたんだ」
あ、ライアンの件も話が繋がった。そう言う事か。
しかしよくよく話を整理してみると僕は今ものすごい世界観の中の放り込まれちゃってるな…。
(うわぁ…とんでもないぞこれ…)
「まだ何か質問ある?」
普段僕の話をあんまり聞いてくれない見えないちゃんが今回いつになく僕の話に付き合ってくれている。
こんなチャンスは滅多にないぞ!これはもうどんどん質問するしか!
「あの作業って具体的には何をしているの?」
「イルミナティの妨害で歪んでしまったこの星のエネルギーバランスの流れを修正しているの」
ああ、確かあの石版の力でこの星のエネルギーバランスを調整してるんだった。
うん、忘れてないよ!しっかり覚えているよ!
でもバランスを調整していないとどうなるって言うんだろう?
「それって…」
「前に言ったでしょ…奴らは自分達の支配する世界を望んでいるって…それを阻止しないと」
「しないと?」
イルミナティはつまり地球環境そのものを制御しようとしているんだ。
でもそれってそんなに悪い事なのかな?
雨が足りない所に雨を降らせたり台風を反らせたり地震を抑えこんだり…。
自然環境を支配出来れば人類はもっと発展出来るんじゃ…。
「この星のバランスを崩す行為は結局星の寿命を縮める事になってしまう…そうなってしまうと…未来を失ってしまう」
この見えないちゃんの言葉で僕はハッとした。
そうか、イルミナティの考えは人間視点…地球環境を語るなら主体はあくまでこの星でないとならない。
どんな自然現象もこの星がそうする必要があるから起こっているんだ。
風邪薬は熱を抑えるけどその効用のせいで病状の回復は伸びてしまう。
人が熱を出すのはその必然があるからでつまりそれは地球環境も一緒なんだ。
「今ならまだ間に合う…言い換えれば今何とかしないともう後がない…」
(だからあんなに真剣だったんだ…)
見えないちゃんが急いでいるのはそういう理由があったからなのか…。
その割に随分休んだりもしたけど…あれは僕を気遣ってくれていたのかな…。
伸びたスケジュールのせいでまた急がなければいけなかったんだな…。
ここまで話していてふと見えないちゃんがこの部屋にいる事に考えが及んだ。
彼女が今ここで落ち着いて僕と話しているって事はもう作業は終わったのかな?
「そう言えばもうあの作業は終わったの?」
「それが実はやばい事になってて…だからちょっと頼まれて欲しいんだけど…」
「う…」
この突然の話の展開に僕は何だか悪い予感がしていた…。
この予感は当たる…そう確信していた。
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