第17話 帰還

 オリガは、裏切りの祭壇と呼ばれた戦場を、夜になるまで眺めていた。

 とても清々しい気持ちだった。心に溜まっていた、濁り、粘り気のようなものは、洗い流されていた。オリガは当時、仲間の死に絶望して座り込んだ場所に座った。

 星がとてもきれいだった。あの時も、きっと空だけは変わらず美しかったのだと思った。

 オリガは、そばに落ちていた古びた拳銃を見つけ、潰れた指を強引に動かし、拾い上げた。

 中身を確認すると、一発だけ弾が入っていた。

 オリガは、撃鉄を引き、こめかみに当てた。

 ふいに、自分がしてきたことを思い出した。もし、彼らがいなかったら自分はここで死んでいった仲間を侮辱した結果を選んでいただろう。

 彼らがいたからこそ、私は私に戻ることができた。

 オリガは目をそっと閉じた。

 声が聞こえてくる。

 それは悲鳴、銃声、雄叫びなどではなかった。

 戦場で共に戦った仲間の笑い声だった。


「ありがとう。みんな、ただいま」


 一発の銃声が、ディフィートに鳴り響いた。

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