第13話 VS
オリガとロネと対決するときが近づいている。
船首にいた湊人の目に、ディフィートと呼ばれている島の全体が映っていた。
「いよいよだな」
振り返ると、零が笑みを浮かべてやってきた。
「楽しそうだね」
「そりゃあ、借りを返すチャンスが巡ってきたわけだからな。殴られた分は、最低でも殴り返したいじゃねーか。湊人は、そう思わないのか?」
「そんなことを考えている余裕なんてないよ。戦いに向けて、心を整えるのだけで精一杯」
「で、心の準備の方は、整ったのか?」
湊人は力強くうなずいた。まだ、どうして強くなりたいのかは、わからない。けれど、自分の全力を持って戦うことを心に決めていた。
「そうか。ならよかった。勝とう。そして、ブラッドクライを手にして帰ろう」
「うん」
四人と反乱軍を乗せた船は、ビトリアルの船に紛れて停泊した。
同じ外装の船だったからか、先にディフィートに着き、船の見張りをしていた兵士たちは、完全に油断しきっていた。
四人と反乱軍は、ダータラの指示により、一斉に船から飛び出して、一気に攻撃を仕掛けた。制圧するまでに、それほど時間はかからなかった。
戦いが終わると、四人と反乱軍は、今まで気にしていなかった光景に目を奪われた。
荒れ果てた土地、広範囲に焼かれた森、そして地面に落ちている骸骨。裏切りの祭壇と呼ばれた戦いが、想像絶するものだったのは、誰の目にも明白だった。
ここにいる人たちは、実際にディフィートに来たことがなかったのだろう。これらの光景に愕然とし、一歩も動けずにいた。
止まった時の流れを動かしたのは、遠方から聞こえた爆破音だった。それも並みの爆発ではなかった。島が揺れるほどの大きな爆発だった。
揺れが収まると、ダータラが声を張った。
「状況を調べろ。他は一歩たりとも動くんじゃねーぞ」
その場にいた一人の男が、地面に耳をつけた。
「どうやら、さっきの爆発した方から、足音が二十人ほど」
「動きはあるのか?」
「はい」
「ダータラさん、急ぎましょう」
侑里がいった。
「移動してるってことは、ブラッドクライを手に入れた可能性があります」
「そうだな、侑里のいう通りかもしれん。サクリファイスがどこにあるのかは知らないが、たどり着く前に、やつらを討とう。おい、案内しろ」
ダータラの指示で、居場所を割り出した男が、動き出した。森の中へと走っていく。置いていかれないように、ダータラ率いる反乱軍は走り出した。四人も後に続いた。
先頭を走る男は、何度か立ち止まり、地面から敵の位置を確かめ、進むべき道を修正していく。
すると、先頭を走っていた男が、ぴたりと立ち止まり、ダータラに視線を向けた。
それを受けてダータラが手振りで指示を出していた。四人にはわからず周りの様子を窺っていると、どうやら隠れろ、と指示を出したようだった。
湊人たちは、木の陰、草陰に隠れて身を潜めた。
そこへ、遠くから声が聞こえてきた。ペナートの声だった。
「僕を解放してくれ。痛くて動けない。動きたくないんだ。お前はサクリファイスの在り処を知っているのだろう。だったら、僕を解放してくれ。もう動きたくないんだ」
湊人は、そっと木の陰から覗き見ると、先頭を歩くオリガの姿が見えた。次に見えたのは、手首を縛られているペナートの姿だった。
しかし、湊人はペナートの足元に視線を落したとき、声をあげそうになった。はだけて見えていた右足、爆発に巻き込まれたのか、熱に焼かれたかのように、皮膚がただれていた。
「駄目だ、歩け。余計なことをした罰だ。私に抵抗したんだ。簡単には死なせない。苦しんでから死んでもらう」
「助けてくれ。もう歩けない。歩けないんだ」
そういってペナートが足を止めたとき、ダータラが手で合図をした。その瞬間、反乱軍は一斉に飛び出し、銃撃した。
唐突に現れた反乱軍の姿に、ビトリアルの兵士たちは、気が動転していた。その中であの二人だけは、慌てふためくことなく、平静な顔をしていた。
「一気にカタをつけろ!」
ダータラの張った声が響き渡る。
湊人たちも武器を具現化して、攻撃に加わり、敵をなぎ倒していく。
「ペナートさん!」
湊人の声にペナートが反応し、こちらへ足を引き摺りながら、懸命に走ってきた。
オリガ、ロネのどちらかが、ペナートの解放を阻止してくるかと思ったが、サクリファイスの場所を知っているためか、追ってくることはなかった。
その代りに、敵兵が襲いかかってきた。
湊人も走りだし、ペナートを追っていた敵兵を斬り倒した。
「ペナートさん、無事で何よりです」
「ありがとう。助けに来てくれると信じていたよ」
ペナートは涙ながらにいった。
「木の陰に隠れていてください。大丈夫です。僕が向かってくる敵を倒しますから」
湊人は、ペナートの保護に徹した。次々に向かってくる敵を剣で斬っていく。機関銃を持った敵に対しては、さすがに成す術がなく、他の人が仕留めてくれるまで、待つしかなかった。
ビトリアルの兵士たちは、反乱軍の勢いを止めることができないと感じたのだろう。逃げ出す者が現れた。
「逃がすものか!」
ダータラの怒号に近い叫び声が聞こえた。顔を向けると、ダータラが戦場から離れていくオリガに向かって、回転式銃を構えていた。
オリガはこちらに振り返ることなく、歩み続ける。
ダータラは、引き金を引いた。
しかし、弾丸はオリガの下まで届かなかった。ダータラとオリガの間にロネが割り込み、素手で弾丸を受け止めたのだ。
「くそっ! やっぱり、まずはてめえを、殺さなきゃならないようだな」
ダータラは、ロネに向かって走りながら、弾丸を撃ち込んでいく。
ロネは弾丸を躱しながら、ロネに向かって走り出す。距離が縮まり、目前まで来ると、ロネが拳を振りかぶった。
その打撃をダータラが、銃で受け止めた。
負けじとダータラは、ロネの顔面を目掛けて蹴りを出すも躱され、当たらない。がら空きになった身体の側面にロネの拳が一撃入った。
ダータラは、転がりながら吹き飛ばされるものの、なんかとか起き上がる。
「クソ野郎」
そうダータラが口にしたとき、口から血を吐いた。よろめき、倒れそうになるが、踏みとどまる。
「ダータラさん!」
湊人が叫んだ。ダータラの目前にまでロネが迫って来ていたのだった。
ダータラは、ロネの振りかぶった拳の軌道に被るようにして拳を突き出した。
それは、完璧なカウンターだった。見ていた湊人も、確実に当たると思っていた。
だが、ここでもロネは、超反応をみせた。
ロネは振りかぶった拳を止めて、その場で回転し、カウンターを回避したのだった。回転したままの勢いで、再度、一撃目と同じ箇所に蹴りを放った。
「甘いぞ、ダータラ」
「甘いのはてめえだ。骨の二、三本なんて、くれてやるよ!」
「なんだと」
先にロネの蹴りが、ダータラのあばらに突き刺さる。顔が苦痛に歪み、身体がくの字に曲がっていたが、ダータラは、その場で踏み止まった。
それもまた、湊人からすれば、ありえないことだった。ロネが放った今の蹴りは、一撃目の拳よりも強い衝撃を与えているはずだった。踏み止まった行為に、ダータラの意地を感じた。
そして、ダータラは、突き刺さったロネの足を腕で押さえ、そこへ回転式銃の銃口をロネの太ももに押さえつけて引き金を引いた。
さすがのロネも、これは避けることができなかった。
「ぐっ」
歯を食いしばった表情を見せるも、ロネは次の行動に移っていた。自分の身体をダータラに寄せて、そのまま胸ぐら、胸元を掴み、片足一本で自身の身体とダータラの体重を支えて、宙に浮かせてから地面に叩きつけた。
「ダータラ、お前は一つミスを犯した。私の足を撃つのではなく、一か八か、心臓を狙うべきだった。自分で弾丸が残っていないと教えているものだぞ」
「……馬鹿野郎。そう思わせるところまでが、あたしの作戦さ」
ダータラは、さっとロネの顔面に銃口を構えて引き金を引いた。
乾いた音が鳴り響いた。
勝負は決した。
ダータラの負けが決まった。
あの状況から、ロネは、弾丸を躱した。説明のつかない現実が目で起き、ダータラは愕然としていた。
「危なかった。飴を食べなかった私だったら、あんたの勝ちだった」
「ち、ちくしょう」
「死ね」
ロネは拳を振り下ろそうとしたが、とっさにその場から離れた。コンマ数秒遅れて、零が槍を突き出した。
「ちっ、これも避けるのか。完全に死角からだったのによ」
零はダータラに顔を向けた。
「勝手に俺の獲物に手を出してるんじゃねーよ。俺が仕留めるから、休んでな」
ダータラは鼻で笑うも、小さくうなずいた。何人かが、ダータラの下に駆け寄っていく。
零は、その場から離れるように、歩きながらいった。
「あのとき、殴られた分を返しにきた」
「驚いた。誰も割って来ないと思っていたのに。まさか、力の差を思い知ってもなお、向かってくるとはね。あのときとは、状況が違う。今回は、死んでもらう」
「そいつはどうかな?」
零は気迫で相手を威圧して、槍を頭の上に構えた。
湊人は驚いた。零は序盤からランクを引き上げ、Sランクの状態にしていた。ロネがSランクであることは、前回の戦いでわかっている。たしかに、対抗するためには、Sランクである必要だった。だが、零は長い時間はSランクを保っていられないという欠点がある。
どうするのだろうか。
湊人の心配をよそに、戦いが始まった。
零は、一瞬にしてロネとの間合いを詰めて、連続で槍を突いていく。以前と同様、ロネは零の速さについていき、攻撃を躱していた。
零は攻撃の手を止めることなく、槍を操っていく。矛先は、木や地面を貫いて行くが、肝心のロネには一撃も当たらない。
ロネが反撃に出る。一撃が重いことは、これまでのことで充分にわかっていた。一撃でもくらえば、そこで動きが止まり、一気に畳みかけられる可能性があった。
しかし、零は以前とは違い、ロネの攻撃にくらいついていく。一度、戦った経験が活きていた。
攻防がめまぐるしく変わる。
だが、このまま膠着状態が続けば、零は体力を消耗するだけで、不利になるのは明白だった。加勢をして、二人で攻撃すれば、なんらかの隙が生まれるのではないか。
そう思い、湊人は加勢しようと一歩前に踏み出すが、レミに肩をつかまれた。
「レミ、離してくれ。僕は零を助けにいく。このままだと、零は負ける」
「大丈夫ですよ」
「どういうこと?」
「零さんは、一人で戦う気はありません」
「それなら、みんなでロネを攻撃した方が」
「湊人さん、ダータラさんの言葉をよく思い出してください。全員で攻撃しても意味はありません。自分の得意なことで貢献することで大きな力になる。そう教えてくれました」
「だけど、自分の得意なことで貢献なんていわれても」
「侑里さんは、貢献しようと必死ですよ」
レミが指さした先では、侑里が唇に手を当て、必死に零とロネの戦いを観察していた。勝機を見出すための手立てを考えていた。
湊人も自分が貢献できることを探すが、個性ではこの場では役に立たない。となると、やはり武器に、剣でしか貢献することしかできなかった。
「やっぱり、僕は剣しかない。レミちゃんは、どう貢献するつもりなの?」
「私は、侑里さんに、記憶していたロネの戦い方を細かく伝えました。あのとき、私は戦わなかったので」
「なるほど。個性で貢献をしたわけか」
「とりあえず、一緒に侑里さんのところに行きましょう。何かしらの行動を起こすとき、すぐ対応できるように」
「そうだね」
傍まで行くと、侑里はこちらに顔を向けた。自信と不安が混在していた。
「その様子だと、なにかわかったみたいだね」
「うん。これまでのことを考えると、信じられないことだけど、ロネは数秒先の未来を予見してる」
「そんなことってあり得るの?」
「私も気づいたときに、受け入れられなくて、思考回路がショートしそうになった。けれど実際に目の前で起きている。ロネの能力を見抜くためには、戦い方を通してみるよりも、どんな攻撃が当たったのか、どんな攻撃を躱されたのかを見ていくことが重要だったの。最初、零が戦ったときのことを覚えてる?」
「衝撃的だったからね。憶えてるよ。AランクからSランクに上げた際に、攻撃が当たったんだよね」
「そう。そして、私たちが当たると確信していた虚をついた攻撃を躱した。それは今回のダータラさんの戦いでも同じことがいえる。虚をついた攻撃は、必ずといっていいほど躱している」
「だけど、ダータラさんに足をつかまれたことは? 僕がロネで、未来が予見できるのなら、その選択はしなかった」
「ロネは自分の力に自信がある。なんていっても、一撃が重い。充分に敵を倒せるだけの力を持っている。その上で、予見した未来で、ダータラさんのあばらに蹴りが入るシーンが見えたとしたら、それを選択するんじゃない? なにせ、最初の拳で殴り飛ばしているうえに、倒せると思っているなら、なおさらのこと」
「だけど、ダータラさんが意地で耐えたことで、銃弾を受けてしまった、と」
「そういうこと」
「ちょ、ちょっと待って。理屈はわかったけど、そんな相手をどうやって倒すの? 侑里自身がいったように、虚をついた攻撃は躱されるんだよ?」
「そう。だからこそ、あえて虚を突く。ロネが予見できる数秒間後の未来よりも、一歩先で迎え撃つ。つまり、私たちもダータラさんのように、ロネの一撃を受け流す。私たち全員でやれば、できないことはない。恐ろしく難しいけど、一発勝負だから覚悟はしてね」
侑里の作戦は、シンプルだったが、背筋が凍るほど恐ろしいものだった。
「レミちゃん、零に作戦を伝えて。その間は、私と湊人が、なんとか持ちこたえてみせるから」
「わかりました」
「それじゃあ、行くわよ」
侑里は具現化した矢をロネに向けて放った。それが合図となり、湊人とレミは走り出した。
ロネは、放たれた矢に気づき、零と距離を取った。侑里は、休むことなく矢を放ち続ける。その間にレミは零のところにたどり着いた。
そして、湊人は剣を手にして、ロネに振りかぶるも、軽々と躱されてしまう。それでも、懸命に剣を振り続けた。
これまで零の相手をしていたロネにとっては、自分の剣捌きなど遅く感じるだろう。
だが、今は攻めるしかなかった。
「いまさら、なのつもりだ?」
「零と同じさ。殴られた分を返すだけだ」
「その心意気だけは、買おう。だが、キミたちがしているのは、自殺行為だ」
反撃に出ようとロネは攻撃体勢に入るが、侑里の放つ矢が止めどなく襲いかかった。
しつこく狙ってくる矢の雨に、ロネは湊人への攻撃を断念し、厳しい目つきで侑里の位置を確認すると、矢を躱しながら侑里の下へ前進していった。
湊人はそれを防ぐことなく、ロネの背を追う。
侑里の未来への予見というべきか、描いていた通りに作戦が始まった。
侑里は矢を放つのをやめて、ロネに向かって走り出した。
ロネの左側からは、レミが、右側からは回り込んだ零が、ロネに向かって走っていく。
これで、ロネを中心に前後左右を挟んだ形になった。
湊人は、侑里の作戦を思い返す。
「まず、湊人がロネに攻撃を仕掛ける。そこへ、私が次々に矢を放っていく。これまでのロネの戦い方は、常に接近戦。遠距離相手は面倒だと感じて、必ず私の方へやってくる。その展開になったら、四人でロネを前後左右で挟む」
「挟んでどうするの?」
「私、レミちゃん、湊人、零の順で攻撃を仕掛けるの。それぞれの攻撃によって、ロネの動きをさらに狭めていく。ただそれだけ。そうすることによって、虚を突くことができる」
侑里は自信あり気にいった。
「それと、ロネに攻撃する際、別に躱されても構わない。ただ、私たちが絶対に守らなきゃいけないことは、ロネをその場から逃がさないこと。挟むことができるのは、おそらく一度きり。ロネのことだから、こちらの意図に気づくだろうし。だから、そのときの一撃を、どうするのかは、個人でよく考えて。以上よ」
今にして思えば、誰がロネの止めを刺すのだろうか。虚を突くといってたのだから、最後に攻撃する自分ではないことはわかる。ここは順当に、零だろうか。いや、レミか?
ともかくだ。今は侑里の作戦がうまくいくように、自分がやることをやるしかない。
そして、ついにロネに対する攻撃が始まった。
ロネの前方から向かっていた侑里が、足を止めることなく弓を縦ではなく、横に倒して矢を放った。ロネは受け止めることはせずに躱した。
反撃に出ようとした矢先、左側から来たレミに気づき、足を止めた。レミの下段蹴りに対して、迎え撃つつもりでいるようだった。
しかし、レミはあえて空振りさせて、回し蹴りに切り替えた。もちろん、ロネは見切っていたが、左側から来ていた零の対応を迫られていた。
ロネは迎え撃つことをやめて、レミの攻撃を躱したと同時に、零が突き出してきた矛先を左腕で受け流した。
そして、湊人の出番がやってきた。ロネの行く手を塞ぐために、右上から剣を振り下ろした。
すでに、ロネには湊人の攻撃を躱すだけの空間がなかった。
必然的に、ロネは、湊人の剣を右手で受けなければならなかった。
指の股で受け止めたそのとき、銃声が鳴り響いた。
撃ったのは、倒れていたはずのダータラだった。
弾丸はまっすぐロネの心臓めがけて向かっていく。逃げ場がなく、手が空いていないロネは、身体を守ろうと零の陰に隠れた。
外した。
湊人は、そう思った。
だが、その弾丸は、ただの弾丸ではなかった。
途中で、放射線状に広がったのだ。
弾丸は網へと姿を変えて、ロネと湊人たち四人を捕えた。
「お前たち、自分を囮にして……」
ロネは驚きの声をあげていた。
たしかに、これは虚をついていた。
それも、作戦を考えた侑里以外全員が、虚を突かれていた。
ロネが動けないように拘束してから、湊人たち四人は、網から脱した。
ダータラが脇に手を添えてやってくると、ロネの頭に銃口を押し付けた。
「どうだ? 気分は」
「殺せ。敗者には死がお似合いだからね」
「そうさせてもらおうか」
「ちょっと待ってください」
湊人は、ダータラを引きとめた。
「なんだ?」
「少しだけ、ロネと話をさせて欲しいんです」
「こいつと何を話そうっていうんだ?」
「二つほど訊きたいことがあって」
そういって、湊人はロネと同じ視線となるように、地面に膝を着いてから訊ねた。
「一つ目は、あのとき、僕たちを殺さなかったのは、理由を訊きたい。実力差は、明確だったのに」
「目的はペナートだけだった。それだけのことだよ。私は、オリガの指示に従っただけ」
「二つ目は、なぜ、オリガは、オブリヴィオンを消滅させようとしているのか。その理由を教えて欲しい。最上階でオリガに会った際に聞いたけど、オブリヴィオンの人間を見ていると、虫唾が走るから始末する、としか答えてくれなかった。僕にはその意味がわからない」
「わからない、か」
ロネは、一度目を閉じて深呼吸してから、目を開いた。
「キミは、裏切りの祭壇を知っているかい?」
「ここが舞台となっている戦いだったね」
「知っていることを話してみて」
湊人は、ペナートに教えてもらったことを、そのまま話した。
「オブリヴィオンがディフィートに屈することに腹を立てた政治家たちは、先手を打ち、軍隊を向かわせて、ここで戦った。そして、一名だけが生き残った」
「そう。裏切りの祭壇は、大まかにしか語られていない。ほんとは、そんなもんじゃないんだ。そして、その戦いには後日談がある」
ロネは一呼吸置いていった。
「私は敗者だ。私がオリガについて、知っていることをすべて話そう」
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