第56話「その化け物を見に行こう」
「ワシらの間では、ゴースト達はお社様の使いと認識した。一体何が目的なのかはさっぱりわからんが、いくら崇めてきた存在とはいえ、突如牙を向いたとなれば、こちとら必死で抗うぎょぇ……だから最近は滅多に外には出ない様になり、ワシの様な腕に覚えのある呪術師が見回っていたぎょえ」
このおじさん呪術師だったのか。呪術師って、呪文を用いて現象を操るとかそういう人間の能力者だったと思うけど……どうだったかな?
「ネア、呪術師って言うのは、肌や道具に呪文を施して力を発揮したり、呪文を用いて言霊の力を借り、強力な魔法を使役する存在よ。確か東洋種族が最も使っているジョブね」
私が呪術師の事をよく思い出せない様子を察して、モコちゃんがさり気なく耳打ちで教えてくれた。
「そういえば堀が浅くて特徴無い顔だと思ったのよ。間違い無く東洋種族の顔立ちよ、この人間はさ」
「ああそう言われてみれば……」
呪術師おじさんの顔を改めて眺めてみると、肌は青白く髪も白銀色だが、私達が今まで見てきたどの人間や亜人種族よりも堀が浅く、割と特徴の無い顔立ちだ。極端に言ってしまえば顔が平たい。平たい顔族。
でもこのおじさんの場合、顔のパーツ1つ1つがどうも凝っており、一々リアクションなどの表情が面白おかしい。
「ネアちゃん、モコちゃん。アンチ様も、何処となくこのおじ様に近い顔立ちをしていると思いますけど……」
コルラちゃんが私達にそっと耳打ちする。うん? そう言われてみれば確かに。
「そう言えばアンチさんってそこまで堀が深くなかったですよね?」
「でも端正な顔立ちで悪く言えばさ~、童顔じゃね?」
「でも少し、濃ゆい顔立ちでしたわね……東洋種族かもしれませんわね」
ひそひそ話でアンチさんの顔の事で盛り上がる。
「それにしても、すまなかったぎょえお嬢さん達。いくら見知らぬ存在だったとはいえ攻撃を仕掛けてしまい」
あ、いけない。お話の途中でした。
「いえ、お気になさらず、勝手に入っちゃったこっちも悪いですから。それよりも……」
気になるのは、そのお社様と呼ばれる存在だ。町の周りで感じていたゴーストの気配はやっぱり本物だったんだ。彼等がそのお社様の使い。じゃあ、その社(やしろ)に現れた化け物こそが、お社様? 私にはそう思えてなりません。何かを崇めるって概念は、私達には理解し難いのですが、これも人間との価値観の違いでしょう。
「おじさん? そのお社様ってさ~、結局その社(やしろ)内に現れた化け物がお社様でしょ?」
「ワシらもそう思っとるぎょえ。今までは社(やしろ)内に飾られておるご神体だったが、もしかすればあのご神体に、あの化け物が封印されていたのじゃろうな。それが、何かの拍子に壊れ、今になって蘇ったと見解しておる。何とかしたいんじゃが、社(やしろ)に向かった者は悉く消されてしもうてな。迂闊に近づく事も出来んぎょぇ……」
私達は眼を見合わせる。この近くに異世界チート転生者がいるのは確かである。その社の化け物と呼ばれる存在が妙に関係しているような気がする。行ってみたら何か進展があるかもしれない。
「ねえ、ギョエイおじさん。私達がその社(やしろ)を調べましょうか?」
「ぎょ、ぎょえぇ!?」
「ここで会ったのもきっと何かの縁ですわおじ様」
「ぎょぎょぎょえ!?」
「もしかすればさ~、私達が追っている存在と関係があるかもしれないのさ」
「ぎょぎょっぎょえぎょえ……? 本気かお嬢さん達? 確かに強い存在だと言う事は戦って理解できたが……」
もう、この人はあれだけ戦っておいて私達の力を侮ってみたいです。レディ扱いして心配してくれてるけど、少なくともモンスター系獣人だから貴方より膂力も強いのです! むしろそういった類は人間より私達の方が警戒されません!
「心配ありません、私達めちゃんこ強いですから」
「その通りですわ」
「少なくともさ、おじさんよりは強いよ?」
自信満々に宣言する私達を見て、おっさんもようやく納得してくれたようで、小さく頷いてくれた。
「わかったぎょえ、確かに他所から来たアンタらの方が、案外危害が無いかもしれんな、アンタらが探してる存在かもしれんなら、調査するがいいぎょえ」
そうと決まれば早速調査開始だ。チェイサーちゃんとサイダーくんに知らせて合流しないといけない。ピーコくんも起こして参戦してもらわないと。えっとバイラちゃんは……硬くなるなら使えそうかな? いや幼児だから戦いには加えないけど。
蜘蛛の巣を片づけて、私達は地上へと降りる。呪術師のおじさんから社(やしろ)の場所を教えてもらう。この町の道沿い歩いていくと野原が広がっていて、その野原の先にある開けた場所に赤く塗られた社(やしろ)が建てられているみたい。看板も建てられてるから見つけやすいみたいネ。
「そうだ。行く前に社(やしろ)の化け物の弱点を教えておくぎょえ」
「え? 弱点!? そんなものがあるのですか?」
「あるんじゃな~これが。ワシらも対抗策を考えていた際に、古い文献で見つけたんじゃが……見た時はそれってどうなのよって思ったぎょぇ。で、化け物の弱点は、早口言葉じゃぎょえ」
……は?
「「「ハヤクチコトバ~?」」」
「そう、早口言葉ぎょえ」
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