第42話「圧倒的火力」

 変形したマシンクロッサーによる長距離一斉射撃攻撃を仕掛ける事にした。まずは軍勢の出鼻を挫してからの方がやりやすい。奴らはまだ距離は遠いが徐々接近してきている。視界が赤色に点滅する。同時に敵の位置が表示される。やはり先程の襲撃時より数が増えている。どれだけいるんだこの世界には。


 マシンクロッサーから直接情報が流れ込む。この機体の武装データや各パラメーターが事細かく表示されるが、全部は見通せず細かい事は専門外故、理解できない。こいつ等にはかなり物騒な兵器が積まれているようだ。さすがアンチートマン仕様といったところだ。標準スコープが展開されて、ロックオン機能が働き始める。アンチートガンナーを散弾モードに切り替え、マシンクロッサーと合わせて集中砲火を浴びせるとしよう。


《目標全員補足!》

《ターゲットロックオン! 発射!》


 2機の音声と共にガンナーのスイッチを押す。


《Judgement(ジャッジメント)Antirt(アンチート)BREAKAR(ブレイカー)!》


 マシンクロッサーから、轟音と共にミサイルらしき物体や実弾、光弾。レーザー光線が一斉に放射される。発射される際の振動と衝撃がシートを通じて車内に伝わるが大したことは無い。同時にアンチートガンナーからもジャッジメント光線が出る。放物線を描く様に展開された一斉砲撃は、森林の遥か彼方の敵へと命中。大規模な爆発が起きて白い煙が溢れだすが、森林にはダメージは無い。そういう仕様で、少し安心感を覚える。


 牽制攻撃は成功。敵の数をかなり減らせた。ここからはモコとネア達にも協力してもらう。合図を出すと、ネアが地面に手を付ける。彼女の両腕に稲光が走った。


 そしてモコは空中へと飛び立つと思い切り羽を動かしながら口から超音波を吐きだす。そして強い風が吹き始めた。


 ネアが地面から浸透させて繰り出すサイコパワーとモコの空中から出す暴風と超音波。組み合わせ的にはえげつない攻撃と分析している。上と下から攻められる攻撃方法は有効だ。コルラと少年にはある程度接近した時に毒攻撃と蛇睨みを行ってもらう。

 さらに、予めネアの蜘蛛の糸を張り巡らせている。何も知らずに接近してきた奴らを捕らえる事が可能だ。さて、先程行ったマシンクロッサーとガンナーの一斉砲撃をもう一度仕掛ける。ネアとモコとの上下責めでさらに被害を与える事が出来る。


 予想通り、サイコパワーと超音波、暴風により異世界チート転生者達は総崩れを起こす。チート能力のおかげである程度防げているようだがそれでも死んだ者も大勢いる。

 すかさず集中砲火とジャッジメントを直撃させる。戦力を減らされてもこちらへ接近してくるが、仕掛けておいたネアの糸に捕縛され、掛からなかった者達は接近戦に持ち込もうとしたが、コルラの蛇睨みで麻痺状態。その隙に毒液を吐かれ、蠍ボーイの毒針で刺され、鋏で斬られた。


「ふん、口ほどにもないわね~ゲロッパ」


「さて、お覚悟はよろしくて?」


 こうなると後は2人の独壇場。毒と麻痺のパレードだ。そしてマシンクロッサーの上からチート光弾を連射して仕留める。ネアとモコも接近兵達に猛攻を掛ける。

 モコは空中を旋回しながらソニックブームを起こす。強い衝撃が辺りを襲い、砂埃と暴風が付与され、森林を悪環境へと様変わりさせる。吹き荒れる風にネアは糸とサイコパワーを乗せて放つ。広範囲で攻撃が行われ、森林は一時の間だけ地獄絵図と化した。


 だが、ここである事に気が付いた。軍勢の中に、異世界チート転生者ではない集団が混ざっていたのだ。もちろん彼らは私の攻撃では死なない。だが、ネア達の攻撃は通じてしまう。視界に表示されたデータによれば彼らはダークエルフ。何故ダークエルフが協力している? 鬼人の時のように何か埋め込まれて命令されているのだろうか。ならば攻撃の手を止めなければいけない。俺の執行対象に原住民は含まれない。


「全員攻撃を止めろ。ダークエルフは攻撃するな!!」


「ふえっ!?」

「はい!?」

「何ですと!?」


 3人とも直ぐに手が止まりこちらを凝視する。マシンクロッサーも砲撃を停止させた。


《主。如何やら彼らは、空族の残党兵だ。埋め込まれている物も検出できない》

《かつてこの森林で起こった紛争により追いやられたみたい。自分達の意志で協力しているのかも》


「なんだと!? それはいかんな。説得しなければ……」


 しかし、攻撃停止の合図を出したにもかかわらず、モコだけが攻撃をし続けていた。その標的は残りの異世界チート転生者ではなく……ダークエルフ達だ。

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