第41話「マシンクロッサーバトルモード」
バイラとの関係を話し終えたモコは、チート能力者の侵略についてさらに話を続ける。
彼女が初めてチート能力者を退けて以来、有効な撃退手段を持つ者が自分しかいなかったため、彼女が森林を守るような立場になったという。その後モコは幾度となく奴らとの攻防戦を繰り広げていたという。何度追い返してもしつこく侵攻しているそうだ。
「正直に言うと凄く苛ついてんのよ。何度追い返しても凝りもせずにしつこく挑んでくるし、いい加減無駄だってわかんないのかなアイツら」
モコが険しい表情を浮かべて足の爪先を地面に何度も打ち当てる。相当苛付いている様子が伺える。
「異世界チート能力者は自分達こそがその異世界での絶対的存在になると思っている。対抗できる存在がいるならば、ハーレムと天下を取るために躍起になる」
「あんたは彼等と戦ってるの? あいつ等を完膚なきまでにぶちのめす何か決定打はないの? 私のソニックブームと超音波、暴風攻撃でもいつまで対抗できるか不安だし」
「いずれ君の攻撃も効かなくなる。奴らが吸収系か飛行能力を手に入れた場合はな」
話していると急にネアが服の裾を掴んできた。彼女の顔を見ると険しい表情を浮かべている。これは、もしや危険察知か? 名前は確か……スパイダーセンスだったか?
「アンチさん、敵が来るかもしれないから気を付けて」
「ああ、私もかなり遠くの方で奴らを感じた」
彼女の危険察知能力が先に働いたようだ。確か、自分はかなり優秀な部類だったと話していたな。今までもこの能力は発揮していたんだろう。今更ながら裾を掴んでまで知らせているのは、それほどの脅威が迫っていると言う事か。こちらの異世界チート転生者探査能力が奴らの正確な数を検出していく。
何故か先程の人数より増えている。どうなっている? 確か半分ぐらいに減らした筈。まさか、増援部隊が各地に待機しているのか。各地に点在しているとしたら軍隊レベルに人数と装備が整っていると考えた方が良い。個人個人の戦いが大人数に勝るのも限界がある。
《主よ。私達に乗れ。今回は私と弟で特別な変形をみせてやろう》
アンチェイサーがライトを点滅させながら、弟との特別な変形を見せると主張してきた。モコは彼女が喋り出した事に驚き、バイラもまた泣き出してしまったが、今は無視しよう。
「特別な変形だと? サイダーを付けたまま変形するのか? 別に構わんが」
初めて聞いたが、そのまま彼女らに乗り込む。前は彼女単体でロボットモードへと変形していたが、今の彼女はサイドカー型の弟と連結合体している。そのまま変形したらどうなる。自分に乗るよう、催促してきたということは……。
バトルモード!
次の瞬間、振動が伝わり揺れた。2機が合体したマシンクロッサーが機械音を立てながら変形していく。徐々に視界が高くなる。思わず驚いて彼らの姿を見る。
頑丈そうな2本の脚と、大砲の様に左右に突き出たマフラー。盾を思わせる銃口内蔵式タイヤ等、完全にオートマトン式機動兵器へと姿を変えたマシンクロッサーもとい、アンチェイサー&チェイサイダー姉弟。
ネアが下から眺めて興奮している。それに対してコルラは何となく巨大になった事は理解できたようで訝しげな表情を送っている。
「よくわかんないけど、すんごい興奮するのは何でかしら? 私の中の男がすごく興奮してるマジで!!」
少年、それは君の中の少年心が反応しているのではないだろうか。自分も若干興奮している。変形ロボに乗れるとは夢に思わなかった。
「近いな。どうやって攻撃すればよい?」
《私と弟で攻撃する》
《主は技で決めてよ》
「わかった」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!!」
背後からモコが叫んで制止される。やはり驚いたろうな。どう説明するのが正しいだろうか。
「こ、これはいったい何なの!? いきなり巨大化して形が変わったけど。しかも言葉を発する事が出来るなんて、ただの乗り物じゃないの!?」
かなり動揺している。ただ単に驚いただけではないようだ。薄々勘付いてはいたが、咄嗟の出来事には狼狽えるらしい。少しは可愛げがある。
「あのねモコさん。これはその……乗り物に精霊を宿して巨大化の魔法を掛けたんですよ。アンチさんは錬金術も使えるから物体の構造を組み替える事も雑作ないの! ね? アンチさん」
ネアの機転の利いた設定を採用させてもらおう。全て説明するのは面倒で時間が惜しい。
「驚かせてすまない」
「へえ、あんたって人間にしてはかなりの造詣持ってるんだ? 取り乱してごめんなさい」
嘘も方便。私の能力やアンチェイサー&チェイサイダーに関しては、サイドキックスとして引き連れた場合のみ本来の事を説明して明かしている。彼女は仲間にする気は無いので説明は不要だ。
ふと、バイラがマシンクロッサーを下から眺めているのに気が付いた。これは、またお化けと叫びながら泣き出すか?
《あ、泣かないでくれ幼児よ》
《こ、怖くないからね、大丈夫だからね、ね?》
2機にも幼児が泣きだしたら厄介だという概念がインプットされているようだ。電子音声ではあるが焦りが伺える。バイラはこちらを数秒眺めると……。
「かっこぃぃぃぃぃよぉぉぉぉぉ!! ぴゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
やはり泣いたが褒めてもくれた。
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