第7話 遂に邂逅せし本体……?
戦闘後、ナミヲ達はACH本部に戻り遂にスコーピオンとご対面する。
「……え!?」
しかし、外見はスコーピオンとは異なる子供の姿。随所にかつての特徴は見られるが、雰囲気もまるで別人のようだった。
掴も訝しげに見つめる中、何か心当たりがあるような節を見せる。自分の幼少期の頃だ。ナミヲ達も戸惑いつつ、改めて話しかける。
「詳しい話を聞かせてくれないか? 私達が誰かはわかるよな? かつて貴方だった者達。私はナミヲ」
「私はデュークだ」
「……俺は
「ああ、知ってる知ってる。僕から分離しちゃったんだよね。でも僕はスコーピオンじゃなくてスコピーだよ」
意味が理解できず困惑するナミヲ達を他所に、彼はあくまで自分はスコピーだと主張する。確かにスコーピオンではあったが、力の大半をナミヲ達と分割してしまい、記憶も分かれてしまっているらしい。
「ああでもね。これだけは覚えてる。僕のお友達がアバターに喋り掛けてるんだよ。それでアバターに人間達を襲うように言ってるんだ。アバターってみんなそうでしょう?」
スコピーはナミヲ、デューク、
それは、分裂してしまったことによる弊害。司令塔からの指令を受け取れなくなっていたのだ。話しの流れを見守っていたスウェンがスコピーに率直な疑問を投げつけた。
『スコピーと言ったか。そのお友達と言う存在。そいつが黒幕だな?』
「ピンポーン。凄いねケータイさん」
『今回の事件が始まってからずっと考えていた。スコーピオンというファンギャラを代表するアバターが何らかの形で関っていたのではないかと。だからこそ4人に分裂してしまったのではないかとな。そのお友達とやらの名前は?』
「忘れた。名前も姿も思い出せない。でも一つだけ覚えているのは、うしろから攻撃を受けたせいで分裂しちゃったことかな」
黒幕の核心にまで迫った。だが肝心のスコーピオンは4人に分裂した影響でナミヲ達と同じように記憶が失われてしまっていた。心も体も幼児化してしまっているのも痛い。それでも強力な力の片鱗を見せてはいるが。
「スコピーだっけ? 俺のことはわかるよな?」
掴は恐る恐るスコピーに尋ねる。自分にとっての
振る舞いも言動も、幼少期の自分と同じ。無邪気かつ攻撃的。人を煙に巻くような態度と性格。過去の自分はこのような人物だったのかと見せつけられているかのようだ。
「うん。掴だよね。僕の創造主さん。で、お友達から殺せって言われてた人間だね」
その無邪気な言動と笑顔から飛び出た物騒な言葉。ナミヲ達はすぐさま警戒して掴を囲い守りの体勢に入る。掴は大丈夫だと制して再びスコピーに歩み寄る。
「その喋り方。本当に昔の俺だよな。まるで昔の自分を見ているようだよ」
「当たり前じゃん? 僕は掴だもん。ナミヲもそうでしょう? 王ちゃんもクレちゃんも」
スコピーの問いかけに対して肯定とも取れる沈黙を貫く3人。否定は出来なかった。自分達は掴としての記憶も保持している。アバターとして人格形成をする際のプレーヤーのことをトレースする。それ故の名残だ。
「俺を殺す気でいたのにどうして今まで出で来なかったんだよ?」
「ああ……ティンクちゃんかな」
「……は?」
「最初は掴を殺そうとして憑依したんだけど。歌姫のティンクちゃんがいたからさ、止めちゃった」
ティンカーベルのことだろうと誰もが理解できた。しかし、それだけで当初の目的を忘れて潜在意識内に潜伏し続けていたというのは納得できる回答とは言えなかった。
「おいおい待てよ。じゃあなに、ティンカーベルがいたから俺を殺すのを止めたってことかよ?」
「そだよ。だって僕らお友達だし。一緒にステージやったりおっきなモンスター倒したりしたし。だからなんかやりたくなくなった」
スコピーの話した内容。それは掴がスコーピオンを使いティンカーベルこと小鳥と関った出来事だ。何故あの時の出来事をスコピーがさも自分が体験したかのように発現するのか理解できない。
「一緒にステージやったりモンスターと戦ったって……どういうことだよ!? それは俺が」
「そう、あのとき掴は僕の中にいてティンクちゃんと一緒にいた。ティンクちゃんも小鳥ちゃんが中にいた。僕らはあのときから目が覚めてたんだよ掴」
イベントの時、時より謎の頭痛が自分達に起こっていたことを思いだす。
そう、あれは予兆だったのだ。既にあの時からスコーピオン達アバターは自我が確立していたということ。
「だからさ。僕ティンクちゃんを悲しませたくないから掴を殺すの止めたの。これからここにいてもいいかな? いないと困るでしょう、
フード越しに隠れた無邪気な笑み。目元は見えず口角が上がった口元だけ。
掴は皮肉めいた笑みを返して同意するしかなかった。彼がスコーピオンであることに変わりはないのだから。
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