第4章

第1節新たなる同胞編

第1話 味方する者達

ACH本部に匿名で接触する者達が現れた。


驚くべきことに、彼らはファンギャラ内の巨大サークル「月桂樹」だったのだ。


かつてサークルの長であるジャスティスは、弟妹共にウイルスに侵されプレーヤーを人質に取り行方知れず。


三本柱を失い、自我が芽生えつつも争いは望まず実態化を果たしたサークルメンバーの面々。


しかし、ジャスティスの副官をしていたジャスティンというアバターに支えられ、ACH本部に接触を試みたらしい。


そして、ジャスティンは自分のプレーヤーである上辺うわべ人好ひとよしと共にいたのだ。


人好はまだ幼い小学生。第一印象は利発そうな子供。受け答えもハキハキしており、自分が如何にしてジャスティンと出会ったのか経緯を事細かく説明してくれた。


「僕は、自分のアバターと出会い直接言葉を交わすなんて思いもしませんでした。でもこうして共に時間を過ごした事でわかりました。彼らも一つの命で僕らと同じなんだって」


「私も、人好と出会えたことは幸運だと思っております。でなければ、このように貴方方の下へ辿り着けるかもわからなかった」


 ジャスティンと人好。


 ジャスティンはジャスティスに似た外見をしており、口調も性格も理知的で礼儀正しい人物。この人格が人好を基に形成されたものだとしたら、この幼い子供は余程の演技ロール力を持っていることになる。


 ACHメンバーの誰もが人好という少年に感心半分、末恐ろしさ半分。二つの抱いた。


掴の場合は、彼に対し似たようなものを感じ取る。共感もしたが、心の何処かで反感めいたものと疑心を感じ取っていた。


「同族嫌悪か?」


 ナミヲの指摘に掴は苦い表情を浮かべつつ睨む。


「まあ、お前よりは擦れていないから大丈夫ではないか?」


「別に嫌ってはないさ。ただ、大丈夫なのかなって心配になったというか……」


「なんだ、案外優しいな?」


「茶化すなナミヲ!」


 正直な気持ち。喋り方と接し方からしてみても、人好は精神的に成熟しているように見えた。成績も優秀で運動も出来るようだ。

 ただ、そういった子供は周りの同世代子との会話では物足りなくなる。差が生まれてしまうのだ。

 自分もかつて同じようなことがあったので、妙に気に掛けてしまうのだ。


「でも、頼もしい仲間が増えるのは良い事だね。掴、どうせなら悩みとか聞いてあげたらどうだい?」


 デュークの提案に、掴は暫し考え込んだ後に微笑を浮かべて頷く。


人好とジャスティン率いる月桂樹の面々は、喜んで迎え入れられた。大半は争いを望んでいないので、ティンカーベルと同じく保護する形になった。

 ジャスティンと人好は、プレーヤーとアバターで協力関係を築いているというインタフェイサー装着者に適した逸材であるため、これほど強力な味方はいないが幼すぎるために一度緊急会議が開かれた。

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