第6話 電装!バイオヴェノムフォーム!

 ここ最近、掴の様子がおかしい事に気付くACHの面々。


 音楽を聴いていると急に踊り出したくなったり、妙に子供じみた口調になることがあるのだ。


「音楽を聞くと踊り出すなんてお前のキャラではないだろう? 口調もおかしくなる」


「う~んなんでだろうな? あと、なんか急に意識が遠のくこともあるんだよ」


『スキャンしたところ脳に異常は見られない。だがもしもということもある。ナミヲ達が憑依してみたらどうだ』


「「わかった」」


 ナミヲとデューク、そして紅蓮クレンの3人で一斉につかむの脳に憑依。だが、締め出されるように脳から弾き飛ばされた。


『3人共!? どうしたんだ!?』


「……何かがいたぞ……」


「そのようだね。一瞬だけどアバターの気配だった」


「ああ、微かに臭いを感じた。私達以外のアバターが掴の潜在意識の奥深くに潜っている」


『なんだと!? 3人以外にもアバターが憑依していたのか!?』


 突如、掴の外見に異変が起こる。頭髪が伸びて毛先はカール状に変化し、毛髪の一部と瞳が紫に変色。首元にはヘッドホン。さらにツバ付きの帽子を被っていた。明らかにアバター憑依態である。


「あ~あ~見つかっちゃったか、ハハッ!」


『出たな謎のアバター!? いったいどうやって掴の中に入り込んだんだ!?』


 詰め寄ろうとしたスウェンに対して、ナミヲ・デューク・紅蓮クレンは信じられないものでも見るような視線を掴憑依態に向ける。


「「スコーピオン……!?」」


『なに? スコーピオンだと!?』


 しかし、話を聞く暇も無くS掴は何処かへと飛び出してしまう。その動きはまるで宙を自由自在に舞う踊り手。


「……間違いない。今の感じは、掴に憑りついていたのは俺達の本体、スコーピオンだ……」


「だが彼はいつから掴の中にいたんだろうね? 今まで気付けなかったほどだ」


「わからんが、掴自身も気づいていなかったことを考えると余程の潜伏能力だ。いや、本体故だからか?」


『そんなことより奴を追いかけなければ! 本体であるスコーピオンならば危険だぞ!』


 直ぐにサポートメンバーと共に逃亡したS掴を追いかける。


――――……――――……――――……――――……――――……――――……


 S掴は街のストリートダンサーチームと一緒に仲良く踊っていた。


 ストリートダンサー達は最近めっきり暗くなったフクオカシティが少しでも元気を取り戻せばと思い踊っている集団。


 まるで子供の様なスコーピオンの性格に、ACHの面々は戸惑いを見せる。

 育継の推測を立てた。幼少期の掴がプレイしていたスコーピオンはこんな性格だったことを指摘。4人に分裂してしまったことで幼児退行したのだろうと。


 次第に見物客が増えて盛り上がり始める。しかし、そこにアバターが襲い掛かる。アバターの名はマカブル。格闘能力に秀でた能力を持っている。


「白昼堂々と襲撃してくるとは! だが、今掴にはスコーピオンが……」


 ナミヲの心配を他所に、S掴はスウェンを手に取ると身体に装着してしまう。


『おい何をする!?』


「せっかく皆で楽しく踊ってんのに邪魔したからさ、あいつ刈っちゃうよ……変身」


『な……!? 電装! バイオヴェノムフォーム! ジェノサイド・ヴェノム・命刈り取る毒の大鎌!』


 彼は掴の記憶を読み取ったのか、ナミヲ達と同じようにマルチフォーマーへと変身してしまった。紫色の生体装甲は鋭利で攻撃的な形をしている。

 身の丈以上の巨大な大鎌をマカブルに構えると、素早い動きで距離を詰めて一閃を加える。フィールド全体を縦横無尽に飛び回りながら、踊る様に攻撃を仕掛けていくスコーピオン。そのトリッキーな動きに惑わされ、有効な一撃を与えられないマカブルをあざ笑うかのように、スコーピオンは魔法攻撃を地面にぶつけて足場を破壊していく。


「はっはっはっはっはっ!! ほらほらどうしたの~? 反撃もできないかな~?」


 周りの被害などお構いなし、笑いながら攻撃を続けるスコーピオンに周りは戦々恐々するばかりだった。

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