Pickup:2
第2話 桜川那子は江坂悠李に僅かな望みをかけると決めた
シンと静まり返った保健室では、そんな校内の喧騒が遠く聞こえていた。
室内の片隅に設置されている一組の机と椅子。その主である
机の上に置かれた数学のプリントは、名前を書いただけで一問も解いていない。
この春三年に進級した那子が保健室登校になったのは、二年生の二学期からだ。それまではなんとかクラスで授業を受けていたのだが、なかなか馴染めず、そのうち出席日数も危うくなり、最終的に取られた手段がこれだった。のだが……。
学年も変わり、担任も変わり、更には校長まで変わった事で、那子の保健室登校も、このゴールデンウィークまでとなってしまった。これで出席日数が足りなくなれば、留年するか退学するかの二択しか道はない。そうなれば、快適な
瞳子というのは、那子の父の妹で、所謂、那子にとって叔母だ。堅苦しい親族だらけの中、昔からやんちゃをしていた瞳子は、現在もバツ2(子供なし)という破天荒ぶりで。そんな瞳子を小さな頃から慕っていた那子は、中学卒業を機に、家出同然で瞳子のマンションに転がり込んだ。
大会社の社長令嬢に生まれた那子は、幼稚園受験をし、大学までの一貫校に通っていたのだが、何でも言いなりにしようとする親への不満が、抑えきれずに爆発したのだ。
最初は大激怒していた那子の父も、新たに高校受験をし、無事卒業する事を条件に、瞳子との生活を渋々ではあるが認める形となっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます