第2話 桜川那子は江坂悠李に僅かな望みをかけると決めた (5)
翌日。
ゴールデンウィーク初日のどこか浮き立つ人波の中、那子はひとりバイトの面接へと向かっていた。
学校からほど近いファミレス。勿論ホールスタッフではなく、飽く迄キッチンスタッフ希望。裏方の仕事なら、学校が近くても、まず人目を気にする事なくバイトが出来る。
十五時の面接時刻より二十分も前に着いてしまった那子だったが、遅れるよりは遥かにマシだと思い、躊躇いながらも、その店の扉を開けた。ドアチャイムが鳴り響き、那子にちょっぴり緊張が走る。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
駆け寄って来た年配の女性ホールスタッフに訊ねられ、那子は急いで説明した。
「いえ、あの、バイトの面接に来た者ですが……」
「バイトの面接……ですね。少々お待ち下さい」
何も聞かされていない感丸出しで、女性スタッフはバタバタとバックヤードに消えた。
休日なのもあってか、ランチタイムを過ぎても、わりと席が埋まっている。
那子が何気なく店内を見回していると、今度はバックヤードから男性スタッフが出て来た。男性と言っても、歳は那子とさほど変わらない、見るからにバイトっぽい男の子が言う。
「すみません。今日急な会議が入って、店長まだ戻ってないんですよ。携帯に連絡したら、俺が代わりに面接する様に言われたんで、取り敢えず空いてる奥の席に座って待ってて下さい。注文のデザート出したら、俺もすぐ行くんで」
言うが早いか、男の子はまたバックヤードへと消え、那子は言われるがまま、奥のボックス席に座った。
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