参謀本部魔導コマンド試験大隊偵察小隊
第2.2話 演練、そして繰り返し演練
撃つ前に見よ。それは本当に獲物だろうか。
―猟師の訓話
鹿を撃てない者は修行が足りない。
犬を撃つ者は狙いが足りない。
仲間を撃つ者は何もかもが足りない。
―お爺ちゃん談
―――
「4137。さっきは7000飛びましたよ」
とは言っても……安定しないのよね……。
この位置で……。
「6329です。標的より417遠射。軸ズレてるっスよ」
もうちょっと手前か……。
はい。とりあえず射撃……砲撃?練習してます。
4500の遠距離射撃なんて言われたので、まずは銃器庫を見に行ったらこれ幸いと25mmを撃てる携行砲が有りました。
いや、なんでそんなのあるんだよ。って話ですが。
まぁ、うん。借りていこうとしたら言われましたよね。
「お嬢ちゃん。流石にちょっとそれは大きすぎるんじゃないか?」
知ってる。知ってるって。私もそれは思ってた。
「……まぁ、姐御が言ったんだろ。減装弾はこれしかないから……無茶すんなよ」
なんか知らないうちに送り出されました。
あれ?え?
うん……まぁ、それで良いならいいんだけど。
尚、強装弾も一緒にもらってきました。
と、まぁ。そんな感じで『どうせなら6000で練習しよう』と頑張ってます。
「風力1、風向2.213。コンディションクリア、射撃用意っス」
斜め後ろからの追い風。照準を3クリック下げて……左に……7クリックと19マスずらす、と。
もちろん19マスなんて有りません。大体これくらい、の勘です。
「左右クリア。中間、的付近クリア。射撃どーぞ」
呼吸を止めて十分……は誰が言った言葉だったっけ。どうでも良いけど。
スコープを覗いて息を止める。
目標を指向して……そのまま上にグイっと。
反動で重心が上がる分まで含めて……この辺!
「6016。目標圏に着弾。もう一発いきましょう」
よし。合ってた。
照準がここでそのまま上に……。
「6007!もっと寄ってるっス!」
機関部を折ってガシャコンっと排莢。弾すら重い。と、いうか空薬莢すらも重い……。
これ、薬莢っていうかワイン瓶だよ。こんな太さで大きさで見たことある。
あ、そうそう。なんでこんなの撃ててるかって?
そりゃもう、地面に置いたその上に私が乗っかって撃ってるからですよ。
こんなの真面目に肩打ちしたら私がすっ飛んでいきます。
さてもう一発。
「5999。誤差1mです。もうパーフェクトっス」
「ふう……。今日はこの位で」
頭だけを挙げて隣に叫ぶ。
あ、はい。観測手やって頂いていた偵察班のノイマン伍長ですが、だいぶ離れたところで見てるんですよ。
流石にこんな口径だと衝撃波も凄いし、そもそもマズルブレーキからの排気で射手本人以外は危ないし。
「おっけーっス。お疲れっスよー。ちょっと待ってねー」
パタパタと走ってくるノイマンさん。
私がこの格好のままの理由は……と、いうか動けない理由は……。
「んじゃ重りどけるっス。どっか挟まって痛かった言って下さいっス」
結局、あの撃ち方でも私が軽すぎてダメだったんで重りを載せてもらってたのです。
最初そのまま撃ったら、5mほどゴロゴロ転がって、今の撃ち方を試すようにして、
それでも撃った瞬間に30cm程浮いた(らしい)のでしょうがなく。です。
今日の所は弱装弾撃ってるんですけどねぇ。
おかげで全身痛い……。
「あー。体が軽く感じます!」
土嚢(重り)を全部どけてもらった率直な感想!
……改めて見るとなんとも凄い。何個私の上に載ってたんだろう。
ひのふのみの……。
「いやぁ。流石っスねぇ。でも……ヴェルーニちゃん魔導士なのに、なんで反動軽減しないんスか?」
「え?」
「え?」
―――
いや、その、すいませんでした。
そうです。そうですよ。
なんで私、魔導の存在すっかり忘れてたんでしょう。
「元気出すっスよ。そんな事も有るって事で」
魔導士の初歩中の初歩を忘れるなんて……私、もう立ち直れない……。
「少しチンチクリンな方が可愛いっスよ。ドジっ子なヴェルーニちゃん、みたいな」
ぐすん。。。
「……ノイマンさん!練習続行!今度はちゃんと当てる!!」
反動軽減使って立撃ちで当てるまで今日は帰らないっ!
弾持って来い弾っ!的持って来い的っ!
「うぇぇ。……分かったっス。分かったからソレを向けないで下さいよ……」
この後、めちゃくちゃ射撃練習した。
えぇ。当たるようになりましたよ。
ちょっとしたコツを使った裏技も覚えたし。
―――
勤務日報
勤務者:ノイマン伍長
勤務時間:812~2122
勤務内容:新任魔導士の射撃練習
雑記
てか射撃じゃないっしょ。これ。おやっさんも何考えて25mmなんて支給してるんだよ。って感じッス。
そもそも何、この子。着任当日ってのに何で夜まで撃ってんの。
可愛い顔してパナい。マジパねぇ。
って事で、明日は明休取るんでよろしくっス。
「いや、却下よ。もちろん」
「そうっスよねー。分かってたっス」
「技術班には話しておいたから体に合わせて調整させなさい。その後は慣熟で……そうね、500発は撃たせなさい」
「うえぇぇ。……了解、了解っス。何時になっても付き添うっス!」
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