第10話 *10* 6月19日水曜日、朝
翌日、水曜日。
朝のホームルームが始まる前に、紅は席についていた。遅刻せずに学校に着いたのは久し振りで、とても気分が良い。つい鼻歌を歌いたくなる。
窓際の一番後ろの席が紅の座席だが、その表現は正確ではない。昨日、担任教師に言われて運び込んだ机と椅子が彼女の後ろにあるからだ。紅は窓の外に向けていた視線を自分の後ろの席に向ける。
――誰か来るのかしら? 六月の中旬だってのに……。
チャイムと同時に
紅は不思議に感じて教卓に目をやると、黒板の前に立つ見知った少年の顔を見て驚愕した。
「紹介するわね。今日から一緒に学ぶことになった
――な、ん、で、す、とっ!?
財辺先生の紹介を引き継いで抜折羅は自己紹介をしているが、紅の頭には入らない。クラスメートたちが拍手をして抜折羅の紹介が終わると、財辺先生は紅を見て微笑んだ。
「席は窓際の一番後ろね。――
「なんであたしがっ!?」
「中等部からここにいるんだから、案内はできるでしょ?」
文句を続けたかったが、何を言ったところでこの決定は
「……わかりました」
引き下がった紅の横を通って抜折羅は自分のために用意された座席に着くと、彼女にそっと耳打ちした。
「そばにいてくれないなら、勝手にくっついていてやる。もちろん、守ってやるからな」
「もう勝手にしなさい、ストーカーがっ」
彼を見ないように注意しながら、小声で返す。紅は窓の外に目を向けて、小さくため息をついた。
――あたしはやっぱり不幸だ。
(第一章 青いダイヤは災厄を呼ぶ 完)
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