第119話 *4* 10月18日金曜日、放課後
授業が終わり、
エキセシオルビルに到着すると、自転車ごとエレベーターに乗せて七階まで上がる。タリスマンオーダー社の入る七階に下りた紅は、自転車を非常階段脇に置いて事務所側の扉の前に向かった。
普段であればそのそばに置いてある電話機を使って中と連絡を取るところであるのだが、紅は向かう途中で違和感を覚えていた。薄暗い奥まった給湯室から息苦しそうな呼吸音が聞こえてくるのだ。
――誰か、いる?
紅は電話機の前を通過して、大きな物音を立てないようにそろりと給湯室の中に入る。思い切って電灯を点けると、二畳もないスペースの端っこに丸まっている人影が目に入った。
背丈は大人の男性ほどはありそうなのに、膝を抱えているせいか小さく見える。寝癖がついた黒い髪、薄手の青いパジャマの上下に身を包んだ彼は、紅が様子を確認しようと思っていた相手――金剛抜折羅だった。
――なんでこんなところにっ!?
近付かなくても彼の呼吸が通常とは違うことがわかる。頬や首には汗が流れ、顔は赤い。熱が高いのだろう。
――中に運ばなきゃ。起きなかったら、救急車かも……。
まずは意識の確認が先だ。紅は彼の隣に膝をつき、呼び掛けることにしたのだった。
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