追加話 少女グリーナ その3
――愛弟子が見習い魔法使いの試験を受けている間に、彼女は再び昔を思い出す。
あれは、心も落ち込む曇天の日。
少女は見習い魔法使いの試験に向けた、勉強に励んでいた。
少女は最初、文字も算術も社会も分からない幼い子供だったが、今ではすっかり成長している。日々の努力は欠かさずに、自ら学ぶ才女であった。
「お師匠様! 私は本当に受かることができるでしょうか」
「心配性な子ね。貴方なら大丈夫よ」
少女にとって、試験とは初めての経験のためか不安を隠せないでいた。
「万が一落ちても、再び挑戦すればいいだけですわ」
「……はい」
師匠であるセドナの励ましのせいか、少女は気を取り直して返事をする。
少女は自覚していないが彼女の能力ならば合格は確実だった。
その事をよく理解しているセドナは、まったく心配していない。
しかし、少女が安心する言葉をかける。
「大丈夫よ。だって貴方は私の弟子だもの」
「はい!」
その後、少女は試験を無事合格して正式な弟子となり、魔法の練習に励んだ。
やがて実力を付けた彼女は、セドナと共に認定魔法使い試験の受験資格に必要な、国家への貢献を行うために活動することになる。
「お師匠様! 具体的にはどの様に功績を上げるのですか」
「地道に人助けでもすればいいわ」
「……人助けですか、漠然としていますね」
「そんなものですわ。戦争でも起こり、参加すれば早道ですわね」
「軍事大国ミディランダに戦争を仕掛ける国は中々いないですよ」
「ですわね。それに、戦争で手柄を狙うと早死するわよ」
ミディランダ公国。かつてはゴードレア王国の公爵領だったが、その権力と相伝魔法の力により、独自の強力な軍事力を持つまでに至った歴史を持つ国である。
彼女達は、そのミディランダ公国にある街で暮らしていた。
ミディランダの国家試験は厳しく、ゴードレアより難易度が高いと言われている。
「とりあえず、私でも力になれる案件を探さないと……」
目に優しそうな緑の彼女は、魔法使いになるために今日も努力を惜しまない。
彼女には、ささやかな目標があった。セドナに拾われた時のように、いつか自分に助ける事ができる子供を見つけたら、その時は絶対に救おう……。
心優しい彼女はそれを目標としていた。
そして、少し夢に見ている事がある。
セドナの様に助けた子供を弟子にして、家族の様な関係になる夢だ。
彼女は家族を失っており、その影響なのか愛情に飢えている。
セドナに褒められる度に、彼女は喜色満面の笑みを見せていた。
「……いつか、弟子が欲しいなぁ」
彼女はポツリと呟いた。
彼女は愛情の深さからか、自分の弟子を夢想する。
自分に懐いてくれる可愛い弟子がいい。
優秀である必要はない。ただ、真面目で素直であればいい。
そんな子を弟子にとり、家族のように過ごしたい。
それが彼女の夢だった……。
その夢が叶うのは、彼女が16歳の時になる……。
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