第5話 【現状】
さて、どこから話そうか。
とりあえず、今この国はとても不安定な状態だ。
首都圏は無傷だが、ここから離れた港町や人が少ない田舎、国境付近の町なんかは痛手を負ってる。
中には町ごと剥奪され、奴隷のように扱われる人たちもいる。
外堀から徐々に埋めようとしているのだよ、ヤツらは。
この国は崩れ始めてからが早かった。
元々この国を我がものとする国は多国あった。
俺たち精霊は我が王ユグドラシル様のご加護がなければ生きては行けない。
ユグドラシル様のご加護を受けるにはこの国内でなければならない。
それを知っているから、精霊だけを奪うのではなく、この国ごと奪う必要がある。
この国が傾き始めたのは先代の王が亡くなり、今の王が即位した頃だった。
先代はこの国が他国に侵略されることを恐れ、軍に力を注いだ。
この国をより良くするためにお金を使うのではなく、軍資金として国のお金を回した。
そのお陰で、この国の軍はどこの国の軍より秀でていた。
しかしその反面、国は廃れ、貧困者が増えた。
もちろん、俺たち精霊も廃れていった。
なんせ、俺たち精霊は人間の気力をもらって生きているからな。
まぁ、先代が国民や精霊に好かれていたかなんてのは言うまでもないがな。
そして、間もなく先代は亡くなった。
先代が亡くなって悲しんだやつなんてそんなにいないだろうな。
先代が亡くなるとすぐに今の王が即位した。
王は先代のやり方がずっと気に食わなかった。
即位するとすぐにお金を貧困者に与え、お金の回りをよくした。
すぐに元気を取り戻した。
しかし、軍は兵器や武器、防具を作れなくなり、衰退していった。
どんな素晴らしい剣術や受身を身につけたところで、物がボロけりゃ敵に敵いっこない。
何年かはその状態で国を守ってきたが、とうとう無理になっちまったらしい。
水の大精霊ウンディーネ様は津波を、地の大精霊ノーム様は地震を、風の大精霊シルフ様はハリケーンを、火の大精霊サラマンダー様は火災を。
四大精霊様も牽制していたが、敵は力を増し、四大精霊様の力も押し切られ、進入を許してしまった。
王は先代が恐れていた事態を招いてしまった。
それから王は、お金を見直し、軍資金を増やした。
それでも、内部に入られた以上、押し返すことは困難だ。
王は押し返すのを諦め、これ以上奪われないために今、平和条約を結ぼうと必死になっている。
が、それもいい方に転ぶ保証はどこにもない。
以上がこの国の現状だ。
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